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運動が、慢性の痛みの予防と軽減に効果的な理由:スポーツとの違いから考える

「運動」は、慢性の痛みの予防と軽減において、「スポーツ」よりも適していることが多い。
これは、運動が個々の身体状態や痛みのレベルに応じてカスタマイズでき、無理なく継続できるためです。
今回は、両者の違いから、運動の効果を考えてみましょう。


運動とスポーツの違い

まず、「運動」と「スポーツ」の違いについて明確にしましょう。

運動(Exercise)

  • 目的:健康維持や改善、リハビリテーションなどが主な目的。

  • 形態:ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、軽いエアロビクスなど、負荷が少なく、継続しやすい。

  • 調整可能:個々の体力や健康状態に応じて、強度や頻度を調整しやすい。

  • 安全性:比較的低リスクで、自己管理が容易。

スポーツ(Sports)

  • 目的:競技、娯楽、社交、体力向上などが主な目的。

  • 形態:サッカー、バスケットボール、テニスなど、競技性があり、瞬発力や体力を要求するものが多い。

  • 調整困難:競技のルールやペースに従うため、個々の状態に合わせた調整が難しい。

  • 安全性:負荷が高く、怪我のリスクが伴うことが多い。

運動の慢性痛予防と軽減への効果

慢性痛のメカニズム

慢性の痛みは、持続的な身体的ストレスや心理的ストレスが複雑に絡み合って発生することが多い。
たとえば、長時間のデスクワークによる姿勢の悪さや、心理的なストレスが自律神経に影響を及ぼし、痛みを引き起こすことがあります。

運動の効果

  1. 身体機能の向上

    • 柔軟性と可動域の改善:定期的なストレッチやヨガは、関節や筋肉の柔軟性を高め、痛みの原因となる筋緊張を和らげます。

    • 筋力の増強:適度な筋力トレーニングは、身体の支持力を向上させ、姿勢改善や負荷分散に寄与します。

  2. 血行促進

    • 軽い有酸素運動(ウォーキング、スイミングなど)は血行を促進し、酸素や栄養素の供給を改善します。これにより、痛みを引き起こす炎症物質の除去も促進されます。

  3. 自律神経の調整

    • 深呼吸やリラクゼーションを含む運動は、副交感神経を刺激し、ストレスホルモンのレベルを低下させ、自律神経のバランスを整えます。

  4. 心理的効果

    • 運動はエンドルフィンの分泌を促進し、気分を高め、痛みの感受性を低下させます。また、達成感や自己効力感を得ることで、慢性痛に対する心理的耐性も強化されます。

具体的な運動プログラム

ウォーキング

  • 週3~5回、30分程度のウォーキングは、全身の血行を促進し、心肺機能を向上させます。ペースはゆっくりから始め、徐々に速度を上げると良いでしょう。

ストレッチ

  • 毎日のストレッチは、筋肉の緊張をほぐし、柔軟性を向上させます。特に、首、肩、背中、腰のストレッチを重点的に行うと、慢性痛の予防に効果的です。

ヨガ

  • ヨガは、身体の柔軟性を高めるだけでなく、呼吸法を通じてリラクゼーション効果も得られます。定期的に行うことで、心身のバランスを整えます。

軽い筋力トレーニング

  • 自重を使った筋力トレーニング(スクワット、プランクなど)は、無理なく筋力を強化します。週に2~3回、各種目を10~15回行うと効果的です。

運動がもたらす長期的な健康効果

  • 生活習慣病の予防:運動は、高血圧、糖尿病、肥満などのリスクを低減し、全体的な健康状態を改善します。

  • メンタルヘルスの向上:運動はうつ病や不安症の予防と治療にも効果があり、心理的ストレスの軽減にも寄与します。

  • 免疫力の向上:適度な運動は免疫機能を高め、感染症に対する抵抗力を強化します。

スポーツの利点と注意点

スポーツも身体的健康やメンタルヘルスに対して多くの利点を提供しますが、慢性の痛みの予防と軽減においては以下の点に注意が必要です。

利点

  • 社会的交流の機会:スポーツはチーム活動や競技を通じて、社会的つながりを強化し、メンタルヘルスを向上させます。

  • 全身の体力向上:スポーツは全身の筋力や心肺機能を高め、全体的な体力向上に寄与します。

注意点

  • 怪我のリスク:競技性が高く、無理な動作や過度な負荷がかかるため、怪我のリスクが高まります。とくに、慢性痛を抱える人にとっては、無理な動作が症状を悪化させる可能性があります。

  • 継続の難しさ:競技日程やルールに縛られるため、長期的に継続することが難しい場合があります。また、怪我や体調不良が原因で中断せざるを得ないことも多いです。

まとめ

運動は、慢性の痛みの予防と軽減において、スポーツよりも効果的であることが多いです。
個々の健康状態や痛みのレベルに応じてカスタマイズでき、無理なく継続できるためです。
ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、軽い筋力トレーニングなど、日常生活に取り入れやすい運動を定期的に行うことで、慢性痛の予防と軽減を目指しましょう。
スポーツも多くの利点を提供しますが、怪我のリスクや継続の難しさを考慮し、無理のない範囲で楽しむことが重要です。

参考文献
北原雅樹(2018)慢性痛は治ります! 頭痛・肩こり・腰痛・ひざ痛が消える.さくら舎.

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