思考失禁ダイアリー Twitter▶️@hmy_231

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最近の記事

煮凝り

笑える日がなるべく多くあればいい。死ぬときに人生のリザルト画面が出てきて全てを数字で教えてくれるとして、笑えなかった日の方が多くても、それはそれでまあいい。 自分が望む死に方をしたい、死ぬってどういうことなのか、知ってみたい。死んでみたい。 天寿を全うしてみたい。息を続けた先でどんな終わり方を自分がするのか、気になる。 体調に不具合が起こると安心する。熱が出るのはいい、吐き気もあればもっといい。神経痛は堪えがたいから頭痛と歯痛は欲しくないけど。 高熱に茹だる脳みそは溶鉱炉み

    • 2022.02.22

      氷結ZEROのレモンを飲んでいる。甘くなくて美味しい。 先日届いたカラコンを開封したら、1monthのを買ったつもりが1Dayのやつだった。3箱買えば1箱分無料というよくあるセールで買ったのだけれど、3箱あったところで毎日交換していたら1ヶ月でなくなる。 なんだか気持ちよくない買い物だったけれど、まあいいかと気にしていない自分がいるのでまあよいこととする。 雪、雪、雪。 今も降っています。 交通困難なほどの積雪を前に怒りが湧くとかはないけれど、まだ日も昇らない時間に起きて

      • 【掌編】贖い

        ひたひたと水音が聞こえてくるような、夜明け前の冷たく湿る空気の中で蹲る。足元に広がる一面の砂、砂、砂に指をくぐらせ掬い上げると、それらは素っ気なく指の隙間から滑り落ちていった。反射する光もないこの時間帯では黄砂もじっと沈黙を守るばかり。 両の指では到底足りない数の星の最期を看取って来たが、そのどれもが今この場に広がる景色と空気に似通っていた。 声が聞こえる方向へ歩き続け、そうして砂の大地へ辿り着く。人っこ一人いないそこで夜を明かし、するとまた声が聞こえてくる。喧しく、一人は嫌

        • 【掌編】盲いた君へ変わらないおはようを

          窓の外に白が散らかる。ときたま、鈍色の空を裂いて射し込む夕日がそれらを淡く染め上げると、弱視の僕の曖昧な視界は季節外れの桜を捉えるのだった。腰掛けた椅子の背もたれに思う存分に体を預け、顎を反らすように天窓を見上げると、まるで自身が雪の中を天に向かって上昇しているように感じられた。 「雪だよ、サチ」 一足先にある暖炉の前に寝そべるサチに声を掛けると、彼女はゆるりと頭を持ち上げ僕に一瞥を寄越し、まもなく無関心に瞼を下した。そのあまりの愛想のなさに、お前は本当に相変わらずだね、と心

        煮凝り

          丁寧な嘘くさい暮らし

          AM05:00 一度目のアラームを止めてソシャゲのアプリを開く。自室は我が家の中で一番電波が悪く、ログインボーナスが入手できる画面まで40秒ほどかかる。ループモードにしてミッションをオートで進行させ、二度寝を決め込む。 AM05:20 二度目のアラームが鳴る。あと3時間くらい寝たいと思いながら、ううともああとも形容しがたい声で、声?声ですらないような、ひとつ唸る、起きる。 風呂場にヒーターを入れて、薪ストーブに薪を足す。その音で飼い猫が起きてくる、撫でながら温かいお茶を飲む

          丁寧な嘘くさい暮らし

          【掌編】蝉と黙祷

          夏には祈りばかりがある。 蝉の鳴き声が喧しく響く夏の日、ぼくは墓前に花を手向けていた。庭から摘み取ったスターチスとグラジオラス、そのみずみずしさを奪うような陽光が墓石をより一層厳かに見せていた。足元に落ちる自らの影は黒々としていて、女性アナウンサーの声、「今日は今年一番の暑さとなるでしょう」、頭のなかで今朝のニュースが繰り返される。 北海道の七夕は八月なんだよ、と教えてくれたあの子は蝉が鳴き始めた頃にあっさりと死に、今は暑さ寒さもない土のなかで覚めることのない眠りの底にい

          【掌編】蝉と黙祷

          カウンセリング備忘録③

          2021年4月30日 金曜日 雨 三回目のカウンセリングに行ってきました。 近況報告をした後、本題である私の生い立ちについて詳しく話をした。今回は淡々と時間が過ぎ、続きは次回、ということになったので今回は前編といったところか。 一番最初の記憶は何かと問われたとき、幼稚園の登園初日のことを答えると、臨床心理士の方は家族の記憶ではないんですね、と言った。 言われてからたしかにと気づき、家族との思い出を浚ってみたが、どれが一番古いのかわからなかった。わからないなりに思い出した記

          カウンセリング備忘録③

          【掌編】あなたに素直な祝福を。

          思わず喉でぐっと空気を固めてしまうような、具合の悪い乾いた音が短く響き、僕は思わずはっとした。書いては消し、書いては消しを繰り返した果てに破れてしまった便箋の舌打ちだったらしい。 密度の増した空気を口から溢すと、それは意図せずため息のようになった。それにまたため息が出そうになる。 焚き付けにする以外に用途がなくなってしまった紙っぺらを乱雑に丸め、手のひらで掻き分けるように机から滑り落とすと、再び舌打ちに似た乾いた音が聞こえた。 「あー」だの「うー」だの呻きながらかれこれ一時間

          【掌編】あなたに素直な祝福を。

          呪詛とカツ丼

          2021年4月25日 日曜日 雪のち曇り 帰省8日目の今日、兄は千葉に帰った。私が仕事から帰ると兄はもう居らず、テーブルの上にはコンビニ袋と母の字で置き手紙がひとつ、「お兄ちゃんから夕飯のカツ丼です」。 喧嘩をしたのは4日目のことだった。仕事から帰宅し私が着替えているところに兄は猫を抱いてやってきた。嫌悪を滲ませて「着替えてるかもとか思わないの」と問うと、「そんなところで着替えている方が悪い」と兄は言った。 奥まった場所で着替えていたし、自分の下着が干してある場所で着替え

          呪詛とカツ丼

          カウンセリング備忘録②

          2021年4月7日 水曜日 曇りのち晴れ 因果。 母のことを考えるとき、 この言葉がまず頭に浮かぶ。因果、いんが。 先月2回目のカウンセリングを受けてきた。今回もいろいろと心が楽になるようなことを言われたのだが、気力がないのでひとつだけ、母のことを。 私の母は父と離婚したのち、幼い兄と私を連れ実家に出戻りをした身なのだが、永住する気はなく、兄と私が手のかからない年齢になったらまた職を探して三人で暮らそうと考えていたらしかった。だが、運悪く祖母が事故で下半身不随になってしま

          カウンセリング備忘録②

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          散文

          散文

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          【短編】やさしいおおかみ

          深い深い森の中。陽光がか細く差し込むしっとりとした森の中。そこに一匹の狼がいた。 狼は殺生を好まない優しい心を持っていることで有名だった。喉が渇けば草露をすすり、腹が空けば悲しそうな顔で兎や狐を一口一口大事に噛み締めた。 森の動物たちは、そんな狼のことが大好きだった。お腹を空かせて目をぎらぎらさせる狼に、「みんな僕から離れて」と自らの野生の本能に逆らおうと苦しむ狼に、森の動物たちは「私を食べて」と寄り添った。 森の動物たちはみんな狼に食べられたがった。何より恐れるべきは、人間

          【短編】やさしいおおかみ

          カウンセリング備忘録①

          2021年1月14日 木曜日 雪のち晴れ 今日は先月の通院の際に主治医に紹介していただいた臨床心理士の方とお会いし、カウンセリングを受けてきた。今回が初回だったわけだが、今後も利用したいと思ったので備忘録を残しておこうと思う。様々な話をした為、既に朧ろげな部分もあるのだが。 案の定訊かれたのは11月末の自殺未遂の件について。どのような手段で、何故、行動に移したのかを問われた。覚えている限りのことを話し、やがて話題は仕事や家族の話に移った。家族のことはここでは割愛するが、仕

          カウンセリング備忘録①

          《掌編》教え子よりの書簡

          許せないと感じた怒りがありました。声も出せないほどの悲しみがありました。あんなにも忘れられそうにないと思っていたのに、これを書いている今もそう思っているのに、その全てを見捨てるように、今年という一年が終わろうとしています。毎年突きつけられるこの無情に、僕はまだ慣れることができません。飽きもせず、来年も律儀に寒々しい気持ちになることが目に見えているので、今からでも遅くはない、忘れる努力をするべきなのでしょうか。でも先生、忘却...は叶わなくとも、いつか来るであろう風化とやらは救

          《掌編》教え子よりの書簡

          死に損なった話。

          自殺未遂をした。過量服薬による自殺未遂だ。本当のところを言うと、自殺しようとしたわけではない。なんにも考えなくていい時間が欲しくて、数日意識を失いたかっただけだった。 何錠飲んだのかはわからないがスマホに624と数字を映す電卓のスクショとばら撒かれた錠剤の画像が残っていた。 自殺未遂というか救急搬送されるのは今回が初めてではなく、実は4度目になる。 しかし以前の3回は全て丸1日昏睡しただけで翌日、早ければ目覚めたその日に退院できていた。だが今回は15日の夜に救急搬送され、目

          死に損なった話。

          5年前の今日、私は生まれて初めて精神科に行った。

          2020年8月8日 土曜日 晴れのち曇り、時々雨 5年前の今日、私は生まれて初めて精神科に行った。 夏らしい太陽が照っていたこと。背中を流れる汗が気持ち悪かったこと。クーラーの効いた院内。 浅葱色の清潔な床。全部全部、覚えている。 ペたぺたと手が貼りつく素材の椅子にもたれて、大変なところに来てしまったなあと他人事のように考えながら、待合室で自分の番を待っていた。 私は自分のことを病気だとは思っていなかった。 すぐにいつも通りに戻れると思っていた、ただの一過性の不調だと思っ

          5年前の今日、私は生まれて初めて精神科に行った。