影色的アイシャドウの美学
「アイシャドウをアイホールに伸ばす」
この動作はアイメイクの基礎。
アイメイクの工程は多様を極めているけれど、多くにはまずこの“仕込みの動作”が入る。
この仕込みの動作には、トーンアップだったり質感を整えたりといろいろ目的はあるけれども、何にせよアイメイクの基軸になるのは間違いない。
アイメイクに限らず、メイクにとって仕込みはとても大切なもの。
輪郭をすっきり見せる為のシェーディング、立体感を出す為のハイライト、睫毛のカールをキープする為のアレコレ、もっと言えば素肌のコンディションを整えるスキンケアだってファンデーションを綺麗に乗せる為に必要な“仕込み”だ。
例えナチュラルメイクが流行っていても、ナチュラルに見せる為にいろんな努力があるのよ。
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今記事は、“仕込みのためのアイシャドウ“に着目。
ここでは色の明度に関わらず「影色」と呼びたい。
光で濃度の変わる影のように、色の強弱をつけやすいもの。
影色があることによって出せる深みだとか、質感だとか、コントラストだとか。
メインカラーにはなりにくいけれど、“色の表情を変える”ことができるのは「影色」の固有性だし、美学だと思う。ㅤ
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基軸になるからもっと大切にしたい、影色的アイシャドウ達。
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01.Tone Up
最初に書いた、アイシャドウをアイホールに伸ばす動作。
この目的の多くは「トーンアップ」にあると思う。
瞼全体が明るくなることでその後に乗せるカラーの発色が惹き立ち、色そのものの魅力や雰囲気が伝わりやすくなる。パレットのアイシャドウにも、このトーンアップの為の色はほぼ存在しているんじゃないかな。
「影色」と呼ぶには明度が高くて違和感があるかもしれないけれど、アイメイクの工程でも登場することが多いトーンアップの為のカラーは“必要な助力”なんだから、やっぱり「影色」として扱いたい。
M・A・C
スモールアイシャドウ/サモアシルク
朝の光を抱き込んだような、まろやかなペールオレンジ。
きめ細かいなめらかなパウダーが瞼を包み、優しくトーンアップ。可愛げのあるカラーと力みのない発色が合わさり、温かさをしたためるような、潜ませるような、“トーンアップの影色”としての美学を感じるアイテム。
シアーなパールだって、ギラギラのラメだって、モードなマットだって、このあとに重ねる質感はなんだっていい!色を重ねるワクワク感を底上げしてくれるのは「影色」として大切な役割だと思う。
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02.Depth
「影色」について考えたときにまず思い付くキーワード。
わたしの場合は「深み」だった。
真っさらなピュアさも可愛いけれど、深みがあることで生まれる奥行きや吸引力は印象に作用する。惹き込ませる印象的な目元をメイクするにはなくてはならない、いわゆる“締め色”の部分。
ただアウトローにするためじゃなく、あくまで品行方正に。
施し方次第でしなやかに表情をつくる「影色」の可能性。
SUQQU
トーンタッチアイズ
01 影色 -KAGEIRO-
今回テーマにした「影色」を冠した、ベーシックかつ特別な色。
淡く染まる温かみのあるブラウンは、匙加減でニュアンスを変える曖昧さが魅力。なめらかで上品な粉質、同居する軽やかな透け感とぼんやりした曇り、そして重ねて奥行きを出せる発色は、例えるならオーガンジー生地のよう。
まさに“締める”だけじゃなく、“バリエーション”も“吸引力”も出せるブラウン。
騙されたと思って、目頭のくぼみに淡く広げてみてほしい。本当は教えたくない、惹き込みたいときのナイショの仕込み。
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03.Texture
どのアイシャドウも、もちろんそのままで完璧。
でもメイクしてるとたまにね、この色のまま質感だけもっと変えたいなぁ…なんて思ったりもする。だって気分は変わるものだし。
そんな“揺らぎ”を満たしてくれる、色みの邪魔をせず質感に変化をもたらしてくれるアイシャドウ。「影の功労者」的アイテムは決して主張は強くないけれど、その実力は計り知れない。
表に出てこないこともまた粋だと思わせてくれる、愛おしい存在。
DAZZ SHOP
アリュールドシングルアイシャドウ
22 フェイク
ローズのニュアンスを感じるスキントーン。
繊細なパールが散りばめられた、シルクのような質感を持つパウダー。ベースとして仕込むことで、重ねるアイシャドウが淡く、優しく、磨ききられていない磨りガラスのような質感に。パールの輝度が高いので色が沈まないところが「影色」としても実力派。
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04.Tidy
トーンアップ、深み、質感の変化。
最後はこれらを総じて「整える」としたい。ただ、どこにも振り切らない。
それは「影色」として弱いとかではなく、アイテムとして魅力がないとかではなく、“絶妙”だからだ。
得てして主役にはなりにくいかもしれない。それでもカラーや質感が多様化しているコスメの中で、どのアイテムと合わせてもちゃんと自らの良さを発揮する、そしてちゃんとその後のメイクを整える。そんな、基軸について改めて考えさせてくれたアイテムに、愛と敬意を込めて。
Celvoke
ヴォランタリーアイズ
09 ローシエナ / 10 エクルベージュ
「整える」ことにおいて、Celvokeは譲れなかった。わたしの中で、いちばん“絶妙”という言葉が似合うブランド。
『ローシエナ』はゴールドとも受け取れる、明るめのブラウン。シャイニーよりメタリックよりやや“生っぽい”輝きをする、だけどグロウ感とも違う、しっとりした煌めき。
ベースとしても、重ねて陰らせても、輝度や暖色を足したいときにも使える万能さ。
『エクルベージュ』はホワイトの透明感とベージュのぬくもりを備えた、穏やかな肌馴染み色。控えめな発色の中で光るカラフルなパールが上品で綺麗。
トーンアップとしても、艶感や輝度を足したいときに。『ローシエナ』との組み合わせは文句なしの仕上がり。
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折々で色に表情を与える影色たち
上から
Celvoke / ヴォランタリーアイズ 09 ローシエナ
Celvoke / ヴォランタリーアイズ 10 エクルベージュ
SUQQU / トーンタッチアイズ 01 影色
dazzshop / アリュールドシングルアイシャドウ 22 フェイク
M.A.C / スモールアイシャドウ サモアシルク
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日々の、影の、努力や研究で成り立っている今日の顔。
物理的には光と本体あっての「影」だけれど。
影があるからこそ、見える部分はより鮮明に映えるのかもしれない。
もっと惹きつけるため。
もっと自分で自分を好きになるため。
理由はどうであれ、わたしは今日も影色に支えてもらって色と遊んでいる。
『 影色的アイシャドウの美学 』
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