キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002)
「鬼さんこちら! できるもんなら、捕まえてみろ!」
豪華トリオが生み出した、華麗にして孤独な天才詐欺師の逃走劇
原作は'60年代のアメリカに実在した天才詐欺師フランク・アバグネイルの自伝。彼は16歳で偽造小切手詐欺に手を染め、世界26か国で約400万ドルを騙し取りました。
天才と呼ばれる所以は、彼がティーンエイジャーながら、パイロットや医師になりますという大胆な手口に加え、FBIに追われながらも5年もの間犯行を重ね続けたからです。
この冗談のような本当の物語をスティーブン・スピルバーグが監督し、レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスが初共演を果たしました。
この豪華な顔触れならばどんなハリウッド的な大作ができるのかと思われましたが、強烈な個性派トリオはそれぞれの役割に徹し、一見、小粋なクライムコメディ、その実ほろりとさせるヒューマンドラマを完成させました。
幸せな家庭のひとり息子であるフランクが詐欺行為に及んだ過程が切ないです。彼が大金を手に入れようと思ったのは尊敬する父のため、愛する家族を取り戻すためだったのです。
フランクの痛快さと孤独を巧みに表現したディカプリオが絶品。フランクに翻弄されるFBI捜査官を演じたハンクスは控えめながらも味があります。
フランクの犯罪が軽妙で小気味いいのは、〈偉い人のコスプレ〉という子どものような発想で、ティーンエイジャーの若者が世界中の大人たちを騙してしまったこと。
生活が豊かになり始めた'60年代以降、意気揚々と上流をめざしていた大人たちが作り出した〈権力至上社会〉の盲点を突いた犯罪は痛快で、微笑ましくも映ります。
フランクの詐欺での成功は、誰でも理想の未来を夢見ることができた古き良き時代だから成しえた、ある意味、アメリカンドリームだったのかもしれません。
スピルバーグは洒落たジャズをバックミュージックに、活気に満ちた、'70年代初頭のアメリカを生き生きと描き出し、まるで“鬼ごっこ”のような観るも楽しいドラマチックな犯罪劇を演出しました。
3人の洗練されたハーモニーが心地いいです!
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