00's 私的Best Album 50 (Rock & Pops)

個人的に2000年代の洋楽はリアルタイムではほぼ聴いていなくて、当時の自分は邦ロックを聴き始め、それらのバンドの影響から90年代の洋楽にのめり込み、そのままそれ以前の洋楽やノイズ/アヴァンギャルドの作品にはまっていた。『Rockin' On』や『Crossbeat』などの雑誌は読んでいたが、どうもその頃出ていたバンドたちの音楽に当時の耳は反応できなかった。それから20年ほど経ち、『Rockin' On』が今年の6月号で「00's Rock Album Best 100」という特集を組んできた。表紙にBeyoncéやEminemなどがあることから推察できるだろうが、これはロックに限定したセレクトではなかった。ただ、80年代後半以降ブラック・ミュージックやダンス・ミュージックなどのロック/ポップ・ミュージック・シーンへの流入はどうしても無視できない。そこで今回自分でも個人的重要作であった50作品をピックアップしようと思い、この記事を執筆した(同作家からは1作品のみセレクト/ここではアヴァンギャルドなどの作品は意図的に排除している)。なお、さらっと読めるように各作品のコメントは短くしているので、さらっと読んでいただけると嬉しいです。

(当記事では順位付けせず、バンド名等をアルファベット順としています)


The Angels Of Light [How I Loved You] (2001)

1997年に活動休止したSwansの首謀であるMichael Giraが、アコースティック/フォークの路線で組んだグループによる2001年作。Swansでの激しい調子はここにはなく、優しく歌い上げている。長尺のなかで少しずつ展開していくスタイルはSwansだけでなく本作でも健在で、どの楽曲もやや長めにはなっているが、繰り返しのなかで徐々に変化するミニマルなスタイルで聴きごたえがある。

Audioslave [S/T] (2002)

Rage Against The Machine(以下RATM)が活動を中止し、そのヴォーカルのZack de la Rochaを除く3名がSoundgardenのヴォーカルであるChris Cornellとともに組んだのがこのバンド。RATM的なファンクな感じは薄れ、代わりにハード・ロック影響下のようなロックな楽曲が並ぶ名盤。個人的には割と好きなバンドだったので、2006年の[Revelations]発表後に解散してしまったのが惜しい。

Beck [Guero] (2003)

2006年発表の[The Information]と本作とどちらにしようか悩んだ結果、こちらを選んだ。シンプルかつ歪んだギターをフィーチャーした、適度な緩さをもったストレートなロック・アルバム。ここではBeckの変な実験的思考があまり見られないので特筆すべき個性が炸裂しているという作品ではないのだが、'Qué Onda Güero'や'Black Tambourine'など耳に残る楽曲が並ぶスルメ盤。

Björk [Selmasongs] (2000)

本人主演のミュージカル(?)映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のサウンドトラック(とても絶望的で救われない映画なので個人的に観るのは推奨しない……)。工場の稼働音や電車の音が違和感なく徐々に音楽の形になっていく様子はBjörkならではの手腕と思える。彼女は2004年に'声'に着目した作品[Medúlla]を発表しており(Mike Pattonなどが参加してる!)、そちらもおすすめしたい。

(Jon Spencer) Blues Explosion [Damage] (2004)

Jon Spencer Blues Explosionの作品だが、今回は"Blues Explosion"名義となっている。Jon Spencer主役ではなく、メンバー全員の立ち位置を同じにしようとしてなのだろうか。確かに今回はギターの存在感よりもドラムのほうが目立っていて、グルーヴ感を堪能できる作品となっている。Pussy GaloreからJon Spencerを追いかけている人には少しパンチが弱いかもしれないが、良作だと思う。

Brassy [Gettin Wise] (2003)

Jon Spencerの妹Muffin Spencerがヴォーカルを務めるバンド、Brassyによる作品。バンドの形式をとっていながらもメンバーにはDJもおり、ビートを強調した極めてダンサブルなスタイルの作品となっている。90年代から流行していたビッグ・ビートの流れを汲んでいるように感じられ、あまりバンドらしさは感じられない。面白いグループなのにリリース/活動歴が短いのが惜しいところ。

Cake [Comfort Eagle] (2001)

とにかく緩い!脱力感すら感じさせるヴォーカルと、気の抜けたようなバンドサウンド。どこまでシリアスに制作活動をしているのかは本人らにしか分からないが、その脱力感こそが彼らの魅力だろう。現に本作収録の'Love You Madly'はスマッシュ・ヒットとなった。余談だが、一回だけ行ったFuji Rock Festivalで彼らが出演していたらしい。その頃はまだ彼らを知らなかったのが残念。

Charlotte Gainsburg [IRM] (2009)

女優としてのほうが有名なCharlotte Gainsburgは、長らく歌手活動もしている。本作はBeckによるプロデュース作品で、特筆すべき大ヒット曲などはないと思われるが(3年前に発表したアルバム、[5:55]は大ヒットだったもよう)、ポップスの要素をもった肩肘張らないアルバムとなっているのが魅力。個人的にはタイトル曲で聴けるポコポコしただるいドラミングが好み。

Cut Chemist [The Audience's Listening] (2006)

ターンテーブリストのCut Chemistによる1stアルバム。リズム面ではDJ Shadowにも通じるところがあるが、本作ではポップなダンス・ミュージックのトラックがノンストップで並んでおり、MCやスクラッチの組み合わせも楽しい。DJツールのような作品ではなくポップスのリスナーも楽しめる内容となっていて、リスニング用として聴いても、自然と身体が踊りだしてしまうことだろう。

Daft Punk [Alive 2007] (2007)

フランスのダンス・ミュージック・デュオ、Daft Punkによるライブ・アルバム。これまでに発表したスタジオ・アルバムの楽曲を素材ごとに分割してマッシュ・アップしていくスタイルで、すなわちヒット曲のオンパレードなので盛り上がること必至。ただし、同年に彼らのライブを観た知人いわく「これの完コピでつまらなかった」とのこと。うーん、それは残念。

Einstürzende Neubauten [Perpetuum Mobile] (2004)

初期のダダイズムあふれる純粋なインダストリアル路線から離れてしまって久しい彼ら(最新作[Rampen]は原点回帰したような感じなのでおすすめです!)。本作は鉄っぽいサウンドで奏でられる音楽(あくまでも音楽である)の調子が絶妙にプリミティヴで格好いい。東欧の奇妙な幻想文学を読んでいるかのような調子で、聴き手を物語のなかに連れて行ってくれること間違いなし。

Eminem [The Eminem Show] (2002)

個人的にはじめて聴いたEminemのアルバムが本作だったため、強く印象に残っている。ヒップホップの部類にカテゴライズされながらも独特な彼の節回しやさまざまな音楽的バックグラウンドが彼の音楽性に影響を与えており、そしてほかのアルバムと同じようにこのアルバムにもストーリーもあり、とおして聴いて飽きの来ない仕組みに(というかとおして聴くべきなのだろう)。

Godspeed You! Black Emperor [Yanqui U.X.O.] (2002)

爆撃機から爆弾を落下させる写真とともに届けられた本作は、徐々に楽器や音数が増え盛り上がっていく本作以前にみられた典型的な集団即興的な様子とは異なり、反復を多用した極めてミニマルに展開していくスタイル。そのなかには悲しみや怒りが満ち溢れており、その雰囲気やフレーズにはブッシュ政権下でおこなわれたイラク戦争が関与しているのだろう。痛みをもって聴け!

Herbert [Bodily Functions] (2001)

毎度コンセプチュアルな作品を発表するHerbertことMatthew Herbertは、作品によっては頭でっかちで音が二の次になっていることが多い。本作は人間の体から鳴らされる音を(中心に?)使用して作ったという作品で、リスニングに耐えうる見事なクラブ・ジャズのテイストに落とし込まれている。シンセなど使用せず完全に身体の音だけでの作品であれば素晴らしかったが、まあ難しいか。

Isis [Panopticon] (2004)

スラッジ系メタル・バンドの最高傑作だと個人的に感じている。ヴォーカルの音をかき消すほどの轟音ギターと、時折見せる落ち着いたメロディー・ラインが絶妙のバランスで、2年前に発表された前作[Oceanic]からの急成長を感じさせる。なかでも'In Fiction'の緩やかな盛り上がりは、はじめて聴いたときには衝撃だった。1曲目冒頭から始まるノイズ・ギターも聴いていて盛り上がる。

Jello Biafra & The Melvins [Never Breathe What You Can't See] (2004)

Dead KennedysのJello BiafraとThe Melvinsによるコラボ・アルバム。Jello Biafraのコラボでは90年代におこなっていたMinistryとのコラボレーション・プロジェクトLardがストレートなオルタナ・ロックといった感じで好みだったが、本作もその路線で作られた作品が並ぶ。Biafraの声は好き嫌いが極端に分かれそうだが、好みであればきっとハマるはず。Lardとあわせて是非。

Juliette & The Licks [Four On The Floor] (2006)

女優として活動するJuliette Lewisによるバンド・プロジェクト。映画「ナチュラル・ボーン・キラーズ」などへの出演から個人的には危険というか怖そうな印象をもってしまっている方なのだが、本作はポップな印象のものからかなりストレートで力強いロックまでさまざまなが曲が並ぶ。なお本作のドラムはDave Grohlが担当しており、彼特有の強いドラミングをバシバシと感じられる。

Kasabian [Kasabian] (2004)

当時「オアシス・チルドレン」と呼ばれたバンドのひとつだった彼らのデビュー作。イギリス訛りのキツいヴォーカルとダンサブルなフレーズの組み合わせは本作ですでに完成していた。次作以降はコンセプトに縛られたりと紆余曲折してきた印象だが、本作でのストレートさは素晴らしい。17年の[For Crying Out Loud]もよかったので、彼らはストレートな曲を作ったほうがいいと思う。

Killing Joke [Killing Joke (2003)] (2003)

名盤と語られる1stアルバムがセルフ・タイトル作品であるのだが、本作もセルフ・タイトルというややこしさ。本作ではドラムでDave Grohlが参加し、ベースはPaul Ravenが担当。ボトムの効いたベース・ラインと強度のあるドラムの絡み合いが格好良く、そこにJaz Colemanのまがまがしいデス・ヴォーカルが冴える。2年後リリースのライヴ盤[XXV Gathering: Let Us Prey]も格好いい。

The Kills [Keep On Your Mean Side] (2003)

Jamie HinceとAlison Mosshartによるロック・ユニットによるデビュー作。ブルースを基調としながら、歪んだギターによるストレートなロック・サウンド、そしてMosshartのヴォーカルが純粋に格好いい。Hinceはビザール・ギターを愛用しているので、ギターが普通とちょっと違う歪み方をしている。このテイストが気に入った方には、是非2ndアルバムの[No Now]も薦めておきたい。

Kim Gordon, DJ Olive, Ikue Mori [S/T (SYR5)] (2000)

Sonic Youthによる自主レーベルSYRの5番は、Kim Gordon、DJ Olive、Ikue Moriによるトリオでの作品。これほど特異な個性をもつ3人が集まるとここまで特異な作品ができるのか!そしてこのなんともいえない脱力感!実験的ながらもしっかり短い曲として成立していて、地に足がついているのかも微妙なゾーン。そこらへんの人には到底真似できない地点に達しているように思う。

The La's [BBC In Session] (2006)

The La'sというと1990年に発表されたセルフ・タイトル盤の一発屋というイメージが個人的には強いが、そんな彼らが英BBCにてセッションを録音したのが本作。87年から90年にかけてのセッション録音の編集盤であり、どの曲にも適度な粗さがあり、スタジオ・アルバムよりも注目すべきかもしれない。ブリット・ポップは変に整いすぎているので、これくらい粗いほうが個人的には好み。

Marilyn Manson [Holy Wood] (2000)

[Antichrist Superstar][Mechanical Animals]から続く3部作の最終章。暗黒世界を表現したというコンセプトどおり、過去作と比較にならないヘヴィーでダークな楽曲が並ぶ。コロンバイン高校での銃乱射事件でのスケープゴートになったりと本人的には大変な時期の作品だが、現代社会や妄信的な宗教信仰を理知的に非難する歌詞の曲も多く、パーソナルな面での意外性を感じた一枚。

Madlib [Shades Of Blue: Madlib Invades Blue Note] (2003)

ヒップ・ホップのMadlibがジャズ名門のBlue Noteから発表された作品群をサンプリングして作り上げた作品。あまりBlue Noteの作品を好んで聴いていないので元ネタについてはほとんど分かっていないのだが、よくあるクラブ・ジャズには陥らず、ヒップホップのサンプリング的な使用をしたクールなトラックが並ぶ。彼のディグ/楽曲の再構築の才能にはとにかく脱帽しかない。

The Mars Volta [Amputecture] (2006)

一般には2005年発表の[Frances The Mute]のほうがプログレッシヴで急な展開も多く人気な作品かもしれない。翌年発表の本作でも複雑かつ長尺な楽曲が続くが、どの曲も地続きだと感じられるような一貫性のある展開で、プログレの難解さに苦手意識を感じる人にも取っつきやすい印象。なかでも'Viscera Eyes'はラテン音楽的要素と電子音、ギターがうまく絡み合っており、耳に残る1曲。

Melvins [Nude With Boots] (2008)

アルバムごとにスタイルや楽器編成を変えて、バンドとしてもコラボレーションも精力的に行っているバンド、(The)Melvinsの新作。今回はツイン・ドラムによる編成となっており、1曲目の'The Kicking Machine'からグイッと聴き手を引き詰めてやまない。あまり変なことはせずロックな感じで演奏しているので、色々な人に受け入れられる作品だと思う。最新作[Tarantula Heart]も是非。

Múm [Summer Make Good] (2004)

アイスランド出身のミュージシャン/バンドのなかで、BjörkとSigur Rosだけでなく彼らの存在も忘れてはならない。エレクトロニカに分類されることが多いであろう彼らによる本作は、シンセサイザーなどの電子音と生楽器の組み合わせによるサウンドとギーザ&クリスティン・アンナの双子による儚いウィスパー・ヴォイスの絡み合いが絶妙で、否応なしにアルバムの世界に引き込まれる。

Muse [Absolution] (2003)

デビューしたては声質や楽曲の複雑さなどから「ポスト・レディオヘッド」と評されることも多かったが、本作で彼らの才能が満開になった。'Time Is Running Out'や'Hysteria'などでのうねるベースの低音と高域の多いヴォーカルの組み合わせ、タイトなドラムやピアノが絶妙なバランス。2006年発表の[Black Holes and Revelations]も素晴らしいので、あわせて聴いていただきたい。

Nine Inch Nails [Still] (2001)

ライブ・アルバム[All That Could Have Been]のディスク2として収録されている本作。のちに単体でもリリースされているため、今回の記事に載せることにした。アコースティックなスタイルで過去作や新曲を演奏している。新曲'All That Could Have Been'と'Leaving Hope'は隠れ名曲。同じ00年代では[With Teeth]も格好よく、今後活動をともにするAtticus Rossとの邂逅の作品でもあった。

Oasis [Dig Out Your Soul] (2008)

2000年発表の[Standing On The Shoulder Of Giants]以降、(両方の意味で)肩の力の抜けた作品を発表するようになったOasis。ベスト盤[Stop The Clocks]を発表して色々と振り返ったのか、本作では肩の力は抜けながらも原点回帰したようなタイトなドラムでまとめ上げられたクールなロックン・ロールを提示している。そのぶん、この翌年に解散してしまったのが惜しいところ。

PJ Harvey [Stories From The City, Stories From The Sea] (2000)

[Dry][Rid Of Me]などを聴いていた人からするとかなり肩透かしを食らってしまった作品かもしれない。それまでに発表された作品群にはなんとなく「自分のなかにあるマグマの放出」のようなものを感じていて、本作ではそれが突き抜けた印象(そのマグマが存在しないわけではないです、悪しからず)。ストレートで魅力的なアルバムに仕上がった。Thom Yorkeとのコラボも素敵。

Primal Scream [Riot City Blues] (2006)

アルバムごとにスタイルを変容させていっている印象のあるPrimal Screamは、今回カントリーやブルーグラス的な要素に手を出した。彼らはイギリス出身なのもあってか、カントリーといってもどこかあの質感になっておらず、格好良いロックの要素もある。'Dolls'ではAlison Mosshartもゲスト参加している。ちなみに彼らの00年代のアルバムとしては[XTRMNTR]も推しておきたい。

The Prodigy [Invaders Must Die] (2009)

のちに大人気なダンス・ミュージックのジャンルとなったEDMの原型となったのは本作ではないかと勝手に考えている(おそらく本人たちはEDMを毛嫌いしていそうだが、Skrillexの作風には本作との近似性が感じられる)。アシッド気味な電子音とヘヴィー・ロックからの影響を強く受けたサウンドは、近い路線を進むThe Chemical Brothersとも異なる魅力があってストレートに格好いい。

Queens Of The Stone Age [Songs for the Deaf] (2002)

LAからヨシュア・ツリーに向かってラジオを聴きながらドライヴをしているというコンセプトのもとに作り上げられたアルバム。ヴォーカルがストーナー・ロックの代表格Kyussの元メンバーだが、このグループでは割と取っつきやすいストレートなロックをやっている。本作もそうで、実際にドライヴするときに聴くと(特に高速道路のように速度の出せる場所で)、大いに楽しめそう。

Radiohead [Kid A] (2000)

21世紀の始まりとともに発表された本作は、近未来のディストピアを予感させるような歌詞、冷たいシンセの音色を中心としたサウンドで構成されている。'Kid A'での無感覚さ、'Idioteque'での未来への警鐘、'Motion Picture Soundtrack'での人生への絶望...…これら人間の温かみを感じさせない独特の質感は、聴く者を必ずや作品のなかに没入させる体験を与えてくれることだろう。

Rage Against The Machine [Renegades] (2000)

自身らの音楽を政治批判の材料として使っていると明言し続けていたRATMだが、スタジオ・アルバムの発表は90年代で終わってしまった。そんな彼らが2000年に発表した本作は、さまざまな楽曲のカヴァー・アルバムとなっている。どれも面白い選曲ではあるが、個人的に特に興味深かったのがBob Dylan作の'Maggie's Farm'のカヴァー。このようなスタイルに昇華させるのはすごい。

Rammstein [Reise, Reise] (2004)

前作[Mutter]からさらに楽曲の奥行きを広げたRammsteinによる傑作。本作からTill Lindemannがヘヴィーロックのなかで朗々と歌うスタイルができたように思う、なお、国内版には未収録だが、1曲目の冒頭を巻き戻すと国内での某飛行機事故のフライト・レコーダーの録音が聴けるようになっている(オレンジと白によるアルバム・ジャケットは典型的なフライト・レコーダーの箱の外観)。

Red Hot Chili Peppers [By The Way] (2002)

本作以前の過剰に激しいファンキーな要素は影を潜め、聴きやすい楽曲が多数収録された本作。それはおそらくギタリストJohn Fruscianteの功績が大きいのだろうと勝手に思っている。しかし全体が落ち着いているということもなく、激しいパートが強調され、楽曲に展開を与えている。また、収録の'By The Way'や'Can't Stop'などは以降のライヴでも定番のラインナップになっている。

Rollins Band [Nice] (2001)

2000年発表の[Get Some Go Again]からメンバーを新体制にして疾走感が増したRollins Bandの本作は、ハードなロック・スタイルにファンキーさも乗っている(2曲目の'Up For It'はその典型で驚かされる)。[Get Some-]以降音の重心が軽くなったのは[Weight]などの作品が好きな自分としては少し残念だが、本作でもHenry Rollins節はちゃんと効いていて聴いているので楽しめるはず。

Sigur Rós [( )] (2002)

[Von][Ágætis Byrjun]に続く3作目のスタジオ・アルバム。1曲目の優しいオルガンの調子から始まり、徐々に壮大になっていく構造。アルバム名が[( )]であるのは、無題(音楽的解釈は聴き手にゆだねる)ということだそう。ポップでなく長尺だったりすることもあり、聴いていて難解さをおぼえる人もいるだろうが、音にゆだねてその波にのまれるように聴いてみると没入感をおぼえる。

Solex & M.A.E. [In The Fishtank 13] (2005)

「アーティストをスタジオにカンヅメにしたらどんな作品を作るのか?」というオランダのレーベルKonkurrentによるマッドな企画"In The Fishtank"、その13番目はインディー・ロック界の異端児Solexとジャズ・アンサンブルM.A.E.のコラボ。アンサンブルの器楽音に独特のフレーズやサンプリングが重なり、さらにSolexの気の抜けたヴォーカルなど、掴みどころのない魅力に満ちている。

Sonic Youth [The Eternal] (2009)

00年代に入る頃からノイジーなスタイルを封印してきたSonic Youthが歪んだギターを携えてカム・バックした!本作以前に発表された[Murray Street][Sonic Nurse]にはピンとこなかったが、インディーズ期のスタイルに回帰してエネルギーを発散させている。自身らのレーベルSYRから実験的な作品を出していたのもあってか、過去のスタイルに回帰するのとまた一味違って面白い。

Sunn O))) [OO Void] (2000)

ドゥーム・メタル最深部から届けられた本作は、ロック的なギターやベースの質感をちゃんと残しながらも奈落のようなヘヴィーなサウンドに満ちている。しかし、ただ低音が渦巻くというだけではなく、あくまでバンド的なサウンドにこだわっているところが本作の魅力。のちにNurse With Woundが本作をリミックスしたことにも着目したい(国内盤にはリミックス曲が収録されている)。

System Of A Down [Mesmerize] (2005)

アルバム[Hypnotize]と対をなす形でリリースされた本作。メンバーが全員アルメニア系であることもあって、歌詞は英語ながら節回しに独特なセンスがあり、英語ネイティヴでない自分からすると何語で歌っているのか分かりづらいときが多くある。怒りに満ちた激しくヘヴィーなメタル曲もあれば悲しいバラード調の曲もあり、彼らの音楽的ヴァリエーションの豊かさを感じられる。

Tom Waits [Real Gone] (2004)

激しく歪んだローファイ・サウンドに満ちた快作。Tom Waitsの声や歌い方も相まって、プリミティヴな力強さを感じさせる。Jim Jarmusch監督の映画「Down By Law」に出演しテーマ曲を書いたことから'Jockey Full Of Bourbon'(とそれが収録されている[Rain Dog])はよく知られていそうだが、激しく(いい意味での)野蛮さに満ちた本作を聴き逃すのはもったいない。通して聴きましょう。

Tool [Lateralus] (2001)

前作[Ænima]から音が洗練された印象の本作。'Parabol'と'Parabola'など、連続する2曲で1つのように組み合わせられた曲もあるが、全体的にはどの曲も短くまとめられている印象がある。その点まだ彼らの作品を聴いていない人には薦めやすいが、当時のファンの反応はどうだったのだろう。いずれにせよ、当時のヘヴィー・ロックのシーンにおける重要な作品になったのは間違いない。

Unkle [War Stories] (2007)

レーベルMo' Waxを主宰するJames Lavelleを中心としたプロジェクト、Unkleの2007年作。自身のみで制作した楽曲もあれば、ヴォーカルなどでゲスト参加してもらった楽曲もある。98年にリリースされた[Psyence Fiction]はヒップホップ的だったが、本作では90年代に流行ったブリストル・サウンドからヒップホップの要素を減らし、スカッとするようなロック的なアプローチが目立つ。

The White Stripes [Icky Thump] (2007)

'Seven Nation Army'で大ブレイクしたので2003年発表のアルバム[Elephant]のほうが一般的には評価は高いだろうが、個人的には本作のほうが好み。カントリーを独自解釈でハードなロックに落とし込んだのは彼らならではの妙技。バグパイプやトランペットなどの演奏もあり、これまでの彼らのアルバムのなかでも着目すべき点が多くある。本作を最後に解散してしまったのが惜しい。

Yeah Yeah Yeahs [It's Blitz!] (2009)

2003年のデビュー作[Fever To Tell]で大ブレイクした彼らによる2009年作。1曲目'Zero'の冒頭から鳴るビリビリした電子音から心揺さぶられるが、そこからディスコ・パンク的な楽曲やKaren Oのヴォーカルをフィーチャーしたメロウな曲など盛りだくさん。Karen Oの真価が発揮されたように思い、彼女のソロ・ワークスやヴォーカルでフィーチャーされるきっかけとなったのでは?

Yo La Tengo [Popular Songs] (2009)

サイケデリックな音で幕を開ける本作は、そのタイトルだけあって非常にキャッチ―で聴きやすい作品に仕上がっている。さまざまなジャンルの映画のサウンドトラックのような曲も多い。しかしその一方でノイジーであったり実験的な側面もしっかりとあって、最初から最後まで飽きずに聴けるという魅力もあわせてもち合わせている。これらを共存させられるのはキャリアの長さゆえか。

以上が個人的に好みな00年代のロック&ポップスでした。ここまで読んでくださってありがとうございました。読者の皆さん的にはいかがだったでしょうか。「この作品は知らなかった!」と手に取ってもらえたら嬉しいですし、もし「それが好きならこれも聴け!」的なのがあれば教えてもらえたら嬉しいです。

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