<漢方薬>五苓散に含まれる生薬の‟沢瀉”をもう少し詳しく見てみていきます!
昨日は、五苓散が飲酒時の頭痛に効果的だということを、その根拠も交え詳しくお話ししました。
今日は、五苓散を組成しているそれぞれの生薬について、どちらかと言うと中医学(東洋医学)の視点から見ていこうと思います。
5つの生薬のおさらいをすると、君薬として沢瀉、臣薬として茯苓と猪苓、そして佐薬として、桂枝と白朮で組成されていました。
この中の主となる、沢瀉、茯苓、猪苓は、利水滲湿の効能を持つ3大利水剤が使われていることは、前々回のコラムで紹介しました。
まずは、沢瀉なのですが、成分については前回までのコラムでお話ししていますが、そもそも沢瀉とはどのような植物なのかです。沢瀉はオモダカ科のサジオモダカの塊茎で、通常はその固皮を除いたものになります。(画像はオモダカの花です)
沢瀉という名は、「水を去る(瀉する)」を意味し、水生植物として水の中に生き、足元の多量な水分を処理する能力が高いため、人の体内でも熱を持った余分な水分を利水し、余剰なものは熱とともに利尿する効果を持ちます。
ここで熱を持った水分ということですが、沢瀉は中医学で言う、五性の中の寒性の性質を持つ生薬で、冷やす性質を持ち熱を下げる(清熱する)方向に働きます。
飲酒において、アルコールを含み熱を帯びた血液を、上手くさましながら利水していくイメージです。同じ利水作用のある茯苓と猪苓が平性(温めることもなく冷やすこともない性質)であることから、熱を冷ます役割は沢瀉が担っていると考えるのが良いと思います。
また、佐薬として桂枝が使われていますが、これは反対の温性の性質を持っていて、いかにも辻褄が合わないようですが、桂枝は温めることで発汗作用を持たせて別のアプローチで利水作用に貢献しているのです。
このように5つの生薬の役割が絶妙に効いているのが漢方薬ですので、その組成や分量、加工方法などが少しでも違えば効果は期待できないということになります。
五苓散も約2000年近く前に張仲景により書かれた「傷寒論」に基づいているものですから、これまでに数えきれない人が服用してきて効果を確かめてきた漢方薬と言えます。
では明日は、茯苓と猪苓について探求したいと思います。どうやら腸内細菌にも通ずるものが隠されているようなのです!?(笑)