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防衛省語学通訳専門官からアーティストに転身

現在、IDEAS FOR GOODというウェブメディアをメインに編集者と記者活動をしている水野渚さん。

国家公務員からアーティストという驚きのキャリアチェンジをした彼女。
2021年4月からは東京藝術大学大学院に進学し、ますます自分のやりたいことに向かって変身をとげようとしている彼女へ、活動の原動力をインタビューしました。

プロフィール
お名前:水野渚(みずのなぎさ)
活動内容:IDEAS FOR GOOD及びZenbirdにて記者としてwebライティング、編集に携わる。日本のサステナビリティやソーシャルグッドなアイデアを世界へ発信している。また、アーティスト活動としてもサステナビリティや異文化交流、多様性をテーマに企画展示や発表を行なっている。
ポートフォリオ:https://mizunagi.com/

1.facebookで彼女の変身を目撃した私

私のイギリス留学時代の友人、水野渚さんは津田塾大学出身。大学生時代は、国際関係学を学んでいました。異文化交流や国際関係学を学びたいという同じ志をもって、私たちはイギリスで出会いました。当時から、途上国支援や持続可能な社会の発展などの国際協力の分野に携わりたいという話をお互いにしていた私たち。

留学から帰国後、彼女は防衛省の語学専門官となりキャリアを歩みだしました。日米防衛協力、諸外国との防衛協力・交流、国際平和協力活動や高官通訳に従事する専門職の国家公務員の仕事です。

奇遇にも私も独立行政法人という政府系の仕事に就き、公務員としての働き方について意見交換をしあう仲になっていました。しかし、2016年の年末、彼女が安定した国家公務員のキャリアを辞めてデンマークに留学するという投稿をfacebookで目にしました。

なぎちゃんfb

なぜデンマーク?なんだかおもしろそうだなと思っていた私は、彼女が変身していく様子を目撃することになります。まずは、彼女はwordpressでブログを開設しデンマークでの留学生活を綴っていくようになりました。さらにはIDEAS FOR GOODというウェブメディアでライターをはじめたとのこと。素敵なタイトルのメディアだなと思いました。

一番衝撃を受けたのは、彼女が撮影した1枚の写真の投稿でした。海辺で水遊びをする裸婦の背中の写真。とても美しい写真でした。その時私は、彼女が自由を手にしたのだなという印象を受けました。

らふ

デンマークから帰国後、彼女は日本で外国人が住むシェアハウスのコミュニティマネージャーとして交流イベントの企画運営に携わりつつ、IDEAS FOR GOODの記者兼編集者を本業とするようになったと聞きました。SNSで彼女の変身ぶりを眺めていた私でしたが、今回のインタビューを機に彼女の活動について詳しく聞くことができました。

2.現在の活動について

ーー現在どのような活動をしているのですか。

今はIDEAS FOR GOODとZenbirdというウェブメディアの編集者と記者をしています。IDEAS FOR GOODは、世界にある社会課題をユニークなアイデアで解決している事例を発信しているメディアです。また、Zenbirdは、日本中のソーシャルグッドなアイデアや取り組みを英語で配信しているウェブマガジンです。

関心のあるテーマは、広くサステナビリティにつながることなので、貧困や難民、多様性なども関連しています。記者としては、日本国内での取材活動の他、2019年に4ヶ月にわたり東南アジアを周遊しながらソーシャルグッドな活動に対する取材記事制作に取り組みました。

記者以外にもクリエイティブディレクターとして活動しています。昨年8月には東京・阿佐ヶ谷で企画展を開催しました。

そこでは、これまでIDEAS FOR GOODで紹介してきた事例や世界のサステナブルなプロダクトを展示し、来場者の方に「人とのつながり」「自然とのつながり」そして「自分自身とのつながり」を再考してもらいました。

本企画展が発展し、今年3月からは、クライアント企業に対しても、社員の方へのサステナビリティ浸透を目的に、オフィスをミュージアムにする企画もスタートしました。

アート活動としては、参加型コミュニティアートを企画しています。
まずは、NagiChaプロジェクトです。「10年後の自分」や「自分にとって大切なもの」などのテーマを参加者の方に色とりどりの白玉を使って表現してもらうワークショップを開いています。

なぎちゃプロジェクト

地方のコミュニティ活動や企業研修にも活用してもらっています。

また、最近ではバーチャルシェアハウスという作品を発表しました。ウクライナ、インドネシア、香港、日本で暮らすシェアハウスメイト7名の家をオンラインでつなぎ、2ヶ月間擬似的に共同生活を行いました。

バーチャル空間における共同生活の様子をリアル空間に持ち込み、そこに暮らした人々の温もりを五感で感じてもらうことで、私たちの「家(Home)」を「家たらしめるもの」とは何なのかを考えてもらい、ポストコロナの時代における人と人との新しい暮らし方やつながり方を模索しました。


ーーサステナビリティについて記事を発信したい理由はなんですか。

サステナビリティというテーマは学生の時から興味がありました。アクティビストのような形で社会を変革したいというよりは、言葉や写真、動画やアートで表現したいという気持ちがあります。

というのも、私の人生でお金は関係なく本当にやりたいことは、世界中の多くの場所に行き、さまざまな人やもの、考え方、価値観に出会うことです。

異文化コミュニケーションが大好きなのです。「異文化」とはカルチャーだけではなくて自然環境も入ります。自然環境は日本とフィンランドでは違いますし、自分にとっては異文化だと思っています。同じ日本人であっても経験していることが違うので、日本人と対話することも異文化交流になります。

異文化交流で何かを感じた時、その体験を自分の中だけで完結してしまうのはもったいない。後世に残したい。だから自分が表現したものをどんどん外に出していきたいです。

そうするとインプットする時ももっとよく見ようとか、外に出せるように感じようとする気概が増えます。私の表現を見た人が新しい発見をしたり、行動変容してくれたりしたらとても嬉しいです。

その表現したいトピックや自分が良いと感じるできごとが、サステナビリティでした。表現する1つのツールとして書くことを選び、コンテンツの1つとしてサステナビリティを選んでいます。はじめからライターになりたいというわけではありませんでした。

3.防衛省語学通訳専門官からアーティストに転身した背景

ーーどうして現在の活動をするようになったのですか。

学生の頃からアイデアを出すことや文章を書くこと、絵を描くことが苦手で、もっとクリエイティブな人間になりたいと思っていました。役所仕事をしていたので文章はまだ書けたのですが、デザインや写真など言語以外のビジュアルなものをやりたいという想いが頭の片隅にありました。

また、海外の大学院へ留学したいという想いもありました。最初はイギリスの異文化コミュニケーションを学べる大学院に行こうかと考えていましたが、座学ではなくリアルな場で学びたいと思い、学校を探したところ、デンマークのフォルケホイスコーレを見つけました。

フォルケホイスコーレとは北欧独自の教育機関です。民主主義的な思考を育み、知の欲求を満たすための成人教育の場です。哲学や政治、環境、語学、音楽、アート、デザイン、スポーツなどさまざまな学科がありますが、私はメインコースでサステナビリティや国際関係を学び、サブコースで写真や絵画、動画を学びました。

フォルケホイスコーレ


その留学中にデンマークで見つけたおもしろいことをブログに書くことにしたのです。例えば、サステナブルな素材を使ったプロダクトを展示していたデザインミュージアムを紹介しました。

その時にIDEAS FOR GOODのメディアをたまたま見つけて、自分と同じ想いだと思いライターに応募しました。自分のブログでライティングするだけだと、届く人が限られますし、しっかりと文章力を磨きたかったので応募したのです。そこから現在の活動に繋がっています。

デンマークでは、やりたい気持ちに素直に従い、ライティングだけではなく、デザイン、写真、動画にもとりくみました。日本で専門学校に行くほど自分がのめりこめるかわからなかったので、試験や成績評価のないフォルケホイスコーレでこれらの科目を履修できたことはとても良かったです。

実は、日本に帰国したあとすぐ、webデザインの学校に通ったのですが自分にはあまり向いていないと気づき、ライターの活動を続けました。


ーー安定した公務員を辞めることに迷いはなかったのですか。

迷いはゼロではないですが、ほとんどありませんでした。入省する時から、ずっと防衛省で働き続けるとは考えていなかったのが1つです。お金や待遇という点では恩恵もありますが、辞めるなら早い方が良いと思いました。

また、防衛省の語学専門官には主に2つのキャリアコースが考えられます。語学力を活かし、通訳の専門家として高官通訳を務めるか、多国間国際協力や国際平和活動(PKO)、日米間協力などの安全保障に関するトピックの専門家になる道です。

どちらのコースも自分のキャリアプランとして描けなかったことがもう1つの理由です。辞める前は、自分の周りで理想的な働き方をしている人に相談をして背中を押してもらいました。

4.ライターの仕事について

ーー未経験からライターになることに対してアドバイスはありますか。

ライティングは誰でもチャレンジできると思います。IDEAS FOR GOODのライターはみんな記者経験があるわけではありません。誰でも最初は未経験なので、チャレンジして学ぶしか道はないと思います。

参加型のアート活動に関しては、最初は友人や知り合いに対してワークショップを開催し、それを実績に次を展開し、ポートフォリオにまとめました。小さくはじめて、少しずつ実績を作れば良いと思います。

私は書くことが好きですが、「大好きか」と聞かれると返答に迷います(笑)。ライティングに固執しているわけではなく、最初は取り組みやすかったことがライターを始めたきっかけです。書くことが好きな人もいるので、それを理由に活動することもいいと思います。


ーー書くことに苦労した点はありますか。

最初は、ライターなのに、日本語の使い方が変で、編集の際によく指導してもらいました(笑)。執筆スピードが遅いことも課題です。

また、根本的にスランプに陥ったのは、4ヶ月1人で東南アジアへ取材しに行っていた時です。取材は相手に対する興味がないとできないのに、途中で取材相手に対する興味やリスペクトが一瞬なくなってしまった時がありました。

相手の発言に対して、自分がうまく反応できませんでした。私は何が聞きたかったのだろうと。その時は偶然アシスタントがいたのでなんとか取材を終えられましたが、1人で活動しているとつまづくこともあります。取材は人への興味がないと、質問も出ないし熱量も入らず、それが相手に対して失礼だと感じました。

タイ・チェンマイでの取材中

(タイ・チェンマイでの取材記事

ーーインタビュー記事を書く上での心得はありますか。

事前に相手のことを調べるなど、相手へのリスペクトが大事です。また、相手が話したいことと自分が聞きたいことが違う時があります。そういう時は相手が話したいことを深ぼるようにしています。興味があるということを取材相手に示しながら聞くことが大事です。

5.今後目指すありたい姿について

ーー今夢中になっていること、今後の活動について教えてください。

4月から東京藝術大学大学院のグローバルアートプラクティス学科に進学します。授業は英語で行われ、学生の半分ほどは留学生です。グローバルな文脈からアートを捉え直すこと、アートの社会実装について学ぶ学科です。アートをさまざまな文脈から見直し、実践していくにはどうすれば良いのかを研究します。

アートは新しい見方を提示するものです。今当たり前だと思っていることにも、別の見方があるということを作品を通して展開したいです。誰かに価値観を押し付けるわけではなく、ソフトに展開したいです。

現代社会で希薄になっている人と人との関係性や、今は切り離されている人と自然のつながりをもう一度再構築していく、考え直してもらう機会を提供したいです。日本だけではなく、世界中でアートを展開していきます。


ーー最後にキャリアチェンジをしようとしている読者にメッセージをください。

人生は一度きりなのでやりたいことはやらないと!私もはじめは、世界中どこでも働けるようにと、webデザインなどを勉強しましたが、模索しながら自分はこっちの方が向いているかもと現在の形を見つけていきました。私もまだ模索中ですが、自分の興味のあることに対して行動することが、自分の道を切り開いていくのに大事だと思います。

6.編集後記

現在、私も未経験分野でキャリアを再構築していこうと模索中です。「自分でタネをまき、小さいことからはじめて大きくしていった」という彼女の行動力に脱帽するとともに、私も同じように変わっていきたいなという前向きな気持ちになりました。まずは行動することで、人や出来事に遭遇し、ふとしたチャンスをつかんでいくことの積み重ねで人は少しずつ変わっていくのだなと思います。

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