「生き写しを求める愛」『源氏物語』の愛を読む—前世の記憶で繋がるふたりの往復書簡
愛する毬紗さんへ
新緑の季節の高野山は、生命の気が溢れる別天地だったのではないかと察します。あの加持祈祷の凄まじいほどの熱量は、六条御息所の怨念を体感するのに打ってつけですね。少し恐くはありますが、一度は経験してみたいです。ぜひ次の機会はご一緒に。タルトタタンの恨みの方が恐かったりして(笑)。
桐壺帝の孤独は、紫式部自身、夫と結婚後三年もせずに先立たれ、娘を一人で育て上げなければならなかった孤独と重なります。道長の手引きによる宮仕えで見たのは、藤原氏の権力のもとで自主性が