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<修了後のプロボノ活動>MINT修了生×サステナブルな食と農業企画始動!

Project MINTの「自己革新コース」の修了生が集うコミュニティ、MINT Town Community では、”Moonlighting”(MINT修了生がパーパスに沿った社会課題など新たな領域に踏み出す行動)についてスラック上で日々、修了生メンバーたちが関心のある様々な社会課題のテーマについての複業・プロボノ案件情報や勉強会、イベントなどの情報交換がされています。

Project MINT「自己革新コース」のプログラム全体像と”Moonlighting”の位置付け

“Moonlighting” とは、「自己革新コース」で自分のパーパスを掘り起こし、その過程で自分にとって大切な社会課題を見出していった後に、そのテーマに関する学びをさらに深めたり、その道の最前線の方と繋がっていったり、プロジェクトを企画したり新たな領域に踏み出す活動になります。

コミュニティ内でやりとりをしているうちに、修了生の中で、「食・農業のサステイナビリティ」のテーマに関心のあるメンバーが多かったことを知りました。

とはいっても、ほとんどの修了生は会社勤務のサラリーマンです。これまでこの社会課題の領域で活動を本格的にしたことがないので、どこから踏み出したら良いか?と考えているうちに、まずは有識者の方と対話をしてみよう、ということから始まりました。

そこで、「食・農業サステイナビリティ」の領域のフロントランナーとして活動をされている一般社団法人 日本スローフード協会(通称:Slow Food Nippon)さんにコンタクトをとり、代表の渡邉めぐみさんがMINTのコミュニティに関心を持っていただいたこともあり、修了生たちと今後何かコラボができるかどうか、まずはメンバー間で座談会をしてみて、模索してみないか、ということで今回の合同座談会の場が企画されました!

今回、スローフード協会さんとの座談会について、当日の様子と学びを、3期生の川井美奈子さんと1期生の小島寛之さんがレポートとしてまとめてくださいました。

スローフードとは何か?

スローフードとは私たちの食とそれを取り巻くシステムをより良いものにするための世界的な草の根運動です。(Slow Food NipponさんWebsiteより抜粋)
郷土に根付いた農産物や文化を失うことを始め、ファストライフ・ファストフードの台頭、食への関心の薄れを憂い、1989 年にイタリアで始まり、現在160カ国以上に広まっており、国際組織でもあります。​
「おいしい、きれい、ただしい(Good, Clean, Fair)食べ物をすべての人が享受できるように」をスローガンに、食を真ん中に置いた様々なプロジェクトを数々持っています​。
​Slow Food Nipponは、スローフード国際本部から正式な承認を受けた国内運営機関として2016年3月に発足しました。日本各地に草の根活動をする支部を持ち、団体の国際化・活性化を、産官学民連携しながら行っています。

座談会当日の流れ
当日は、Project MINTの代表植山から、座談会企画の主旨説明に続いて、スローフード日本代表の渡邉さんの自己紹介、参加者の自分の興味の紹介、話題提起としてフードロスや食品の「モノ」化についてのシステム図の紹介がありました。それを受けて渡邉さんや参加者のコメントがあり、続いて、スローフードの日本の活動にMINTの有志メンバーがどのように関わり組んでいけるかを探る様々なやりとりをしました。以下にまとめて紹介します。

スローフード代表渡邉さんを囲んで。合同座談会の様子。

渡邉さんの自己紹介
震災後の2012年ごろ、学生時代にスローフードに関わり始め、大学卒業後、イタリアのスローフード協会本部近くにスローフード協会が設けた食科学大学に進学、卒業の後スローフード日本の活動に関わって2019年から代表理事
を務めている。2018年に結婚し、1300年以上農業を続けているといわれる農家の嫁となり子供を2人育てている。

 日本のフードロスについてのシステム図
 食べ物が「モノ」として扱われてしまうことの仕組みを考察したもの

(MINT3期川井美奈子さんインパクトデーの発表資料より)

川井さん作成の「生産、販売効率重視によるひずみ」の因果関係ループ図

この図の紹介を受けてのコメント:
渡邊さん:生産の場と消費者を結ぶ流通にはいろいろなミドルマン(間の業者)がいて分断が生まれてしまっています。
漁業では漁協卸、仲卸と仲介業者、海外産のものでは更に間の業者の種類が増えていきます。仲介があることで青森で獲れた魚が翌早朝に東京の豊洲に届くという、素晴らしい恩恵がある一方、生活者から生産者の顔が見えづらくなってしまいます。
農業では農薬、化成肥料、種などアグリビジネス系の会社が利害関係を持ちそのビジネスが成立するための保身という面が、このサイクルに影響を及ぼしているように思います。遺伝子を組み換えるような、倫理的な問題も含んでいますね。

「生産、販売効率つまりお金になることが重視される構造になっている、と言うことでしょうか?」

はい。生産者がより金銭的な稼ぎを求めると、大量生産、販売が必要という話になりますよね。自分自身の暮らしも、お金は必要であると言う現実はありますが、実は農家では食べ物自体はお金を使わなくても手に入ったりということもあります。ある程度多くの人が(お金への執着を)「手放して」もう少し自給できる生活をできるようになったら、この構造が変わるのではと思います。

―日本スローフード協会はどのような方がいるのでしょうか?
渡:多岐にわたります。個々の人が参画し、横の連携を作りたい人が作り、30年以上にわたり積み重ねられた「人」の財産と知見があります。地域により構成員が違っておりまして、都市部では生産者より一般の生活者が多くなっています。地元小学校で地道に食育をやっている方、それを見て学びたいという方、地方では水産現場の方、飲食店、また学者もいらっしゃったり、それぞれ地域をまたがる連携があります。学生のグループ、30代の女性が多い地域、年齢層の高い方が多いグループなど特性はそれぞれですね。 

―日本スローフード協会の活動の一つ「味の箱船」が興味深く感じられました!
渡:登録された食材は日本で74、世界で約5600ほどですが、登録されたときは地元メディアに取り上げられるなど一時的に注目はされますが、リストに載るだけでは具体的な支援には繋がりません。シンプルに販売すればよいというものでもないんです。

最近、絵本を、クラウドファンディングを起こして作ることをスタートしています。ハタハタのしょっつるの絵本を作る過程では、ハタハタが地域の中でどんな存在か詳しく聞き取ることができ、一つの広がりの形となりました。ハタハタは秋田の男鹿半島に回遊してくる魚ですが、獲れなくなってきたという現状があります。その理由は、回遊途上で捕獲さられてしまう、卵のベッドとなる海藻が何かの理由で生えないなど、簡単には分からないが、絵本で提供することによって、しょっつるやハタハタの情報のみでなく自分の周りのことに置き換えて想像する機会も渡しています。 

―個々の土地について、その土地の食べ物を文化として知ることができそうですね。きらきらしている訳でないがとても大切なことですね。出汁をとった鰹節や昆布も利用する日本の無駄なものがない食文化を、海外生活を経験する日本人の間では意識し会話することが多いようです。
 
―スローフード協会でやっていきたい活動は?
渡:コロナ禍で草の根のグループどうしが会うことができていないのですが、外からは協会の中の様子が見えなくなっているのではないかと思っています。リアルな場で、どんな人がいてどんな活動が行われているのか見知ることのできるドアを開けていくことをしたいです。味の箱舟の食品を販売する場もリクエストを受けることがあります。生産者のもとを訪ねるスロートラベルもやっていきたいですが、大手の旅行会社と組むとそちらの採算ベースありきになるので、やり方には工夫が必要だと感じています。
 
―「ロハス」や「スローフード」というのは一時の流行と捉えられることもありそうですが、スローフードは一過性のものでなくいつでも新しくもあり古くもあり、ニュートラルだ、と言いたいのではないでしょうか?
渡:はい。沢山の人の心のよりどころになりたいと思っています。スローフードの提唱するようなことを自分でもやっている生産者、消費者が、地元で孤立していることがあればスローフードが癒しや支えになればいいと考えています。今回、コロナを機に、リアルな交流によるところが非常に大きいと気付く機会になっています。生産者の多くは携帯やslackを活用しないのでコロナの間にスローフードのパワーが落ちているという現実も見えてきまして。
 
―MINTが何の役に立てるかブレストしましょう。MINTは内側から自分らしく、周囲のためになるように生きる大人が増えたら嬉しい、というコミュニティとしての願いがあります。つながりを感じる生き方をキャリアや日常生活に体現することを大人なりにやって若い人にも示せたらと考えています!
 
―農作業を手伝ったり関わる機会はありますか?
渡:千葉の自分の家の農園「みやもと山」では大豆トラスト運動を行っており一般人の参加は歓迎しています。大豆トラスト運動は大豆の国産比率を上げるべく全国の農家が行っているもので、賛同するトラスト会員が種まきから味噌づくりまで年に6回訪れて作業をし、その日はお昼を一緒に食べたり酒盛りをします。会員の来ない期間は農家が世話をします。お米でも似たプログラムがあります。初めての方はトラストの日に来るのがお薦めです。
お子さん連れや農作業に初めて親しむ方のあるトラストとは別に、農作業で臨時で助けが要る際には別途、駆けつけてくれる援農の精鋭メンバーもいます。ロート製薬やパタゴニアなどは有志の社員さんが複数で手伝いに来てくれることもありまして、繰り返し援農に来てくれる方がいるのがありがたいです。農作業に慣れている方はぜひ援農の精鋭になってほしいと思います。

―みやもと山への参加はMINTでも希望者を募って心地よい関係を築きたいと思います!

イベントに参加して/MINT3期生 川井美奈子
MINTプログラムに参加中に描いたシステム図が対話のツールになり、大事な問題意識が渡邊さんから出されて、心に残りました。
生産の場と消費者の場をつないでいる中間の仕組みは、その恩恵と裏腹に、お金への依存度を上げる、組み込まれた肥料、農薬、種などのビジネス存続の仕組みになっているという厄介な問題をもう一度認識しました。
そして、皆が「お金への執着を手放してもう少し自給できる生活をしてみるか?」という投げかけをしっかり受け止め、自分たち一人一人が感じていきたいと思います。
MNTメンバーが何をできるか、というところでは、味の箱舟の充実のお手伝いがあるかと思いました。まずは新たな食材の追加を挙げたいと思いましたが、日本スローフード協会の組織は地域や主題ごとの支部で構成されているので、自分の居住地以外の産物の提案は相談が要りそうです。またスロートラベルも、稼ぎ至上主義でないが続けて行けるトラベルを皆さんで考えていきたいと思います。

MINT1期生 小島寛之
日本スローフード協会の渡邉さんとMINTメンバーの話を聞いているうちに、気が付いたことがありました。それは、私自身がスローフードと呼ばれる食をとっていたとしても、食べ方がファーストフード的であれば(食べるのが速かったり、美味しいと思う意識がなかったりなど)、本質的には意味が成していないのではないかということです。
 以前、イギリスにあるシューマッハカレッジのサティシュ・クマールさんが来日されたイベントの企画運営をしたことがあります。その時、サティシュさんは「我々自身に愛情と思いやりとケア(Tender Loving Care)を持つこと、自分自身の面倒をみることが大事です。そうしたあかつきに、人間の身の丈の経済、産業、素晴らしい社会を創ることができます。Tender Loving Careの経済は、廃棄物のない、汚染のない経済になります」。と言います。このTender Loving Careを持ち得ることがスローライフやスローフードのライフスタイルの根底を成すのでないかと振りかえることができました。
 コロナ渦やウクライナ侵攻など、困難で複雑なシステムが生じるたびに、情報の複雑性が増していますが、だからこそ自分の軸を見直して、自分なりに合う心身穏やかなスローなライフスタイルを目指したいと思いますし、そのための活動家でありたいと思います。

MINT修了生とスローフードさんのコラボレーションはこれから始まっていきます!また今後の進捗をご報告します!

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