少年よ、中二病たれ【イキる力の大切さ】
財津チャンネル
お笑い芸人の「チョコレートプラネット」のYouTubeチャンネルが好きでよく見ている。
何のいわくもないスポットをまるで心霊スポットであるかのように練り歩く「いわくなしスポットを巡る」や、Zoom会議中にバレずに自力でフリーズする「zoomフリーズ選手権」など、最高にくだらない企画が多く、抱腹絶倒を禁じ得ない。
そんな彼らの企画のうちの一つに「財津チャンネル」というものがある。
“ビジネスコンディショナー”という謎の肩書を持つ「財津啓司(という名のチョコプラ長田)」が、これまた架空の氏名・職業のゲスト(チョコプラ松尾)を招き、聞いたことがあるだけの、場合によっては聞いたこともないような横文字を適当に並べ、それっぽく会話してイキり散らかすという動画である。
「ソリューションファイナンスがエンターカレッジしている」
「チューニングエッセンスのマッドハック化」
など、基本的に全く何を言っているかわからず(本人たちもわかっていないので笑いをこらえるのに必死になっている笑)、横文字をあえて多用してマウントを取るような手合いへの皮肉が効いていて痛快である。
衒学精神の欠如
この動画を見たときに私は塾生たちを思い出しながらこう考えた。
「学を衒う感覚が今の子供たちには少し足りないのではないか」と。
中二病という言葉がある。
説明するまでもないが「思春期の子供に見られる、自分をよくみせるための背伸びした言動」のことを指す。
私も思春期はご多分に漏れず中二病で、小学校の休み時間などは好きな漫画のかっこいい技名などを声に出していた。
特に久保帯人先生の「BLEACH」は大好きであった。
というのも、BLEACHは「グリムジョー・ジャガージャック」「火火十万億死大葬陣」など、声に出して読みたくなるような中二心をくすぐる固有名詞のオンパレードなのである(男子だけだろうか笑)。
「黒棺」という技を発動する際に唱える詠唱は、中二病クリシェとしてあまりにも有名である。
しかし、最近は漫画を読む子すら減少しているようだ。
聞きなれない固有名詞が休み時間に飛び交うというようなことはあまりないし、最新の漫画やアニメなどのコンテンツについてよっぽど私の方が詳しいということもままある。
あまり強い言葉を多用して弱く見えても難しい言葉を多用して鼻についてしまっても困るのだが、「かっこよく感じる言葉を使いたい」「少しでも難しそうな言葉を使ってみせたい」という感覚には語彙力を育てる滋養があるように思う。
たしかに漢字練習や読書など、語彙を習得する“手段”として大切なことはたくさんある。
しかし、使いたいという気持ちが前提としてなければ、いくらインプットしても身になることはない。
テストのためだけに言葉を勉強しても、その言葉を使えるようになることは難しい。
語彙習得が精緻な思考を可能にする
あらゆる感想を「ヤバい」で代替してしまうような言語感覚では語彙の強化は望めない。
語彙が大雑把だとあらゆる思考も大雑把になってしまう。
鉈や斧のような大仰な刃物しか持たぬ者に、細かな紙細工のように世界をとらえる感覚は身につかない。
そういう意味では学を衒うぐらいの中二心を持つぐらいが、語彙習得においてはプラスに作用するのではあるまいか。
先日、塾長と中学生とのやりとりで、お盆休みの予定を聞かれた子が生徒が「惰眠を貪ります」と答えていた。
「『惰眠を貪る』って言いたいだけでしょ笑」なんて突っ込まれていたが、大いに結構である。
むしろ「ヒュプノスに誘われて褥に臥します」ぐらい言ってほしいものだ。
中二病の謗りを受けて周囲から奇異の眼差しを注がれたとしても責任は負わないが。
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