見出し画像

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑩

 初任者研修当日、僕を含め受講者は7名だった。介護士として現場に居る人は3名で他は介護士ではなく。福祉に携わる人だったり、介護を経営したい人など一人一人目的が違っていた。

 初日は自己紹介が始まり、授業にはいった。
僕は自己紹介では「訪問介護をやっています」くらいしか覚えていない。他にも何かを話していたのは確かだが。
 隣の僕より少し歳上の人では、
「介護施設を経営したい」
 と自己紹介をしていた。年齢的には28歳と言っていた。
 現在は、不動産をやっているらしいが、辞めて介護の経営をしていきたいらしい。
 僕が30近くなっても経営したいとか、誰かを雇って仕事を出来るなんて絶対無理だと思ったので、ポカーンと話を聴いていた。


 色々な志の高い人も居る中で、一日は講義と言う形で教科書を読み、まるで高校の時の授業みたいな形で終わった。
 初任者研修の先生は色々な人が居て面白かった。
 現在の介護に忠実に沿った、教科書通りに教えてくれる人。
 実際とは介護は違う事を教えてくれる介護の先生など様々だった。


 どちらが正解とかは無く、価値観の問題なのだろう。
 1番心に残っている言葉は「現場ではこんな事は実際無理な事が多いですね。あくまで、基本であって現場では想定外だらけです」と、僕も介護に入って何も知らないが多かったが、その事はなんとなく理解できた。


 とりあえず、自分の中ではスピードもつけなければいけなかったし、基本もまだまだ分からなかったので、ここで習った事を研修にいかさなければいけなかったので、どの授業も集中して聴いた。
 

僕の隣にいた女の人は、
「介護って大変だね?なんで介護やってるの?」
と聴かれて…、
「うーん。仕事をして、お金を貰うためですかね?」
「お金を貰うためなら、もっとお金貰える事いっぱいあるじゃん。紹介してあげようか?」
「いや、僕は能力もないので大丈夫です」
「そか、若いんだからお金儲け出来る仕事沢山あるのに…。」
 と言っていたが、僕とは住んでる世界が違うなーと感じた。
 それぞれ違う気持ちで受けているが、ただ僕自身はお金持ちになりたいとか夢という物が無かった。
 この初任者研修を受けたのも、仕事で人に迷惑をかけてはいけないと思い受けたもので、給料アップや資格を取る為ではなかった。
 
 授業の終わりのレポートがあったが、その日に終わらすようにしていた。学校の勉強はすぐに役に立つ事はないが、介護の授業はすぐに役に立つので、取り組む事が出来た。

 学校の授業では先生に怒られないようにとか、親に迷惑かけないようにしか受けていなかった授業は、頭に入らないで当然だったのかもしれない。
 初めて授業のレポートを考えて取り組んだ気がした。
 最初が不安だった授業も優しい生徒の人と、先生のおかげで授業を学ぶのが少し楽しくなっていた。 

介護を本気で変えたいので、色々な人や施設にインタビューをしていきたいので宜しくお願いします。