介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑦
井上さんが、
「どうしたの。Hさ〜ん今日は体調が悪いの?」
だが、Hさんは何も答えなかった。
僕は先ほどの人が、初めての老女だったので、びっくりというよりも唖然とした。
Hさんの言葉にもびっくりしたが、部屋は散乱していて、トイレ、お風呂場は使われた形跡がなく汚れていた。
そして、机の上にはコンビニ弁当が置かれていた。
菓子パン、牛丼が置かれていたが、半分も食べられていなかった。
飲料もコンビニで買った野菜ジュースをコップに移しただけだ。
介護という仕事が初日だったが、一日目で何か寂しい気持ちが込み上げてきた。
Hさんはご飯を作り、オムツの取り替え方、身体の洗い方など1時間半教えていただき。その日を終えた。
1ヶ月後には一人でやっていると思うと不安がこみ上げてきた。
井上さんに挨拶をした後に、僕は家に帰っていった。
『僕には介護はやっぱり無理なのかな…、』最後の利用者さんの世話なんて、できるはずがないと思いながら帰宅した。
次の日は会社に一度行ってから高齢者の家に行く事になった。
井上さんも一緒について行ってくれて、介護をする事になった。
前日のように、食事を作ったりして生活面を支える人もいれば、ほぼ全ての生活をサポートしなければいけない高齢者もいた。
サポートというと、入浴、食事、排泄だ。
この中で1番難しいのが、入浴介助だった。入浴に関しては着脱行為があるので、それを嫌がる人が多く、なかなかやっていただけなかった。
数日が経ち、1人で訪問に行くようになった。
ヘルパーは基本、自転車で移動する。移動できない距離だと、電車を使う事があるが基本は自転車。
雨の日はカッパを来て移動しなければいけなかった。
僕が担当したのは介護度が極端に重いか、軽い人に当てられた。介護度が重い人はやる事を全てできない事があった。
訪問介護という仕事は身体介護と生活介護に分かれていて、訪問する時間いわゆるサービスする時間が決まっていた。
極端に時間をオーバーする事は出来ない。
介護度が低い人は、調理をして掃除をし、入浴を見守る、買い物をする事が多かった。
中には調理をして下さり、僕に御馳走をして下さる利用者さんもいた。
30分は掃除などに当て、後30分はお話といった所だ。
勿論、記録は書かなくてはいけない。
1日に新人の僕には5件くらいだった。ベテランのヘルパーだと7件という人もいた。
介護を本気で変えたいので、色々な人や施設にインタビューをしていきたいので宜しくお願いします。