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#在宅介護

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑥

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑥

 年齢は大正14年生まれで、90になるかならないかだった。
 高級住宅なので、内装はとても綺麗だったが、使われていない部屋は散乱していて、昔描いたような絵画が沢山あった。

 こんなに大きな家に一人暮らしなのかと、僕は印象を受けた感じだった。 
 逆に大きな部屋が孤独なのかなと感じる程であった。
 朝の食事を社長が作り、女性に提供した。
 「ありがとう」
 と、言って黙々と女性は食事をしていた。

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑤

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑤

 その日夜に、電話がかかって来た。
 着信を見ると、昼に面接にいった介護の所だった。
「どう、働いてみない?」
「いえ、僕には向いてないと思うんですよね?」
「最初から、向いている人はいないわよ」
「でも…」
「ベテランの人と一緒に最初は行くから大丈夫よ」
「そうですか…」

 半分、僕は上の空で聞いている感じだった。
 やっぱり、僕にはコンビニ店員がいいのだと思った。今から新しい事をするのは、実

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