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経済

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2023年11月の記事一覧

その他サービス収支の赤字拡大

なかなか面白い動画👇の16:20~で「その他サービス収支」の赤字拡大について言及されている(なお、正しいのは門間&早川。)。 「観光立国」で黒字化した旅行収支とは対照的な推移で、直近では年間6兆円超に。 その内訳👇だが、知的財産権等使用料は黒字が増加基調にあるものの、クラウド使用料などの通信・コンピュータ・情報サービスやその他業務サービスの赤字が2012年から大幅に増加している。 旅行収支の黒字拡大とその他サービス収支の赤字拡大は、共に日本の経済力の低下を反映している。

女の賃金が少ないのは「男らしさ」から降りているから

日本では(おそらく意図的に)不正確に報道されているが、スウェーデン王国銀行経済学賞を受賞したゴールディンの(アメリカにおける)男女の賃金格差についての発見とは、その根本的な原因は性差別ではなくextremeな働き方の性差だったというものである。 男女が同一労働同一賃金であっても、その二人が結婚して子供が生まれると、「男はextremeな働き方を継続・女は子育てのために仕事をセーブ」という分業となり、賃金格差が生まれるわけである。 格差を問題視する人々は「女が不幸な立場を強

ユニクロと日本経済

企業と一国経済を同じように考えてはならないという好例。 ファーストリテイリングの驚異的な成長は、まず「海外で(低コストで)作って国内で(低価格で)売る」、続いて「海外で作って海外で売る」を徹底したことによるものだが、国内での生産活動は小さいので、日本経済の成長への寄与も小さくなる。 程度の差はあれ、多くの大企業が同じ方向に向かっているので、企業利益が増えて株価が上がっても、日本経済の成長には繋がらないどころか、場合によっては縮小の効果をもたらしているわけである。 FR社

『ジェンダー格差』の著者の思い込み

これ👇の著者がYouTubeに登場しているが、エビデンスと因果推論を強調する当の本人が思い込みで喋っている。 信心の強さと出生率(TFR)が明確な正の相関を示すイスラエルのユダヤ人を見れば分かるように、出生率は文化的要因の影響を強く受けるので、上のグラフの国際比較だけから「女の社会進出で出生率は下がらない(むしろ上がる)」とは言えない。因果推論ではなく思い込みである。 同じ国で女の労働参加率と出生率の推移を見れば、負の相関にあることは明らかである。また、これに因果関係があ

スーパー円安とさえない内需

7-9月期のGDPの1次速報が公表されたが、 これ👇でも「デフレ脱却を宣言できる環境とするには依然として距離がありそう」というのは凄い。 物価上昇のために、名目では成長しているように見えるが実質では成長していない(かマイナス成長)という状況に陥っている。日本銀行を乗っ取ったリフレ派の想定では、インフレ率の上昇は実質ベースでの成長率を高めるはずだったが、現状はそうなってない。 名目と実質の動向が対照的👇。 民間企業は家計に比べると元気だが、設備投資がキャッシュフローを下

円安の誤解?

「円安の誤解」と言うことだが、解説がおかしい。 👆の灰色線の「物価要因」とは実質÷名目で、この値の低下は貿易相手国と比べた相対的低インフレを意味する。1993年9月~2023年9月の30年間では日本は年率-1.9%、スイスは-1.4%となっている。 「実質実効為替レートの低下の主因はインフレ率格差」は数式上は間違いではないが、これでは説明にはなっていない。というのは、通常、外国為替市場にはインフレ率格差を名目為替レートの変化で相殺する調整力が働いているためである(相対的に