見出し画像

円安の誤解?

「円安の誤解」と言うことだが、解説がおかしい。

👆の灰色線の「物価要因」とは実質÷名目で、この値の低下は貿易相手国と比べた相対的低インフレを意味する。1993年9月~2023年9月の30年間では日本は年率-1.9%、スイスは-1.4%となっている。

BISより作成

「実質実効為替レートの低下の主因はインフレ率格差」は数式上は間違いではないが、これでは説明にはなっていない。というのは、通常、外国為替市場にはインフレ率格差を名目為替レートの変化で相殺する調整力が働いているためである(相対的に低インフレの通貨は増価する)。インフレ率を高めてインフレ率格差を落とさなくても、名目為替レートが円高になればよい。実際、日本は1970年代末から相対的低インフレが続いているが、名目為替レートの円高のために1995年までは実質為替レートも円高傾向を続けていた。

(動画のコメントにもあるが)スイスも日本と同様に相対的低インフレを長期間続けているが、名目為替レートが増価を続けているために、日本とは対照的に実質為替レートは過去最高に近い水準で推移している。

BISより作成
BISより作成

相対的低インフレが名目円為替レートの増価によって相殺されないことが歴史的円安の本質ということである。

永濱氏は円安によって「国内のモノづくりの競争力が強まって、出て行っちゃった生産拠点が元に戻ってきて、国内からバンバン輸出が増えて、貿易黒字になれば」円安が修正されると言っているが、そうはならない経済構造になっていることが、実質円為替レートが歴史的低水準にまで減価したことの根本原因と言える。

財務省「貿易統計」より作成

生産拠点の海外移転の理由が円の過大評価であるなら永濱シナリオの実現性は十分にあるが、近年では「為替レート変動に左右されないグローバル経営体制」「サプライチェーンの地産地消化」「日本の労働力減少(←永続的な人口減少)」などが理由になっているので、実現性は乏しいと言わざるを得ない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?