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経済

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2022年5月の記事一覧

「狂信と平和ボケ」は財務省というより政治家と国民

中野剛志が怒り狂っているが、矛先を向ける相手を間違えているように思われる(意図的かもしれないが)。 本題に入る前にファクトチェックだが、日本は「過去二十年以上にわたってインフレどころかデフレ」ではなかった。また、実物面の制約に達すれば必ずインフレ率が高騰するとは限らないので、実物面の制約もなかった→余剰供給力が存在し続けていた→財政支出は長期にわたって少なすぎたとは断定できない。労働需給で見れば、2019年10月の消費税率引き上げ~新型コロナウイルス感染症の前には需給ギャッ

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政府の赤字に対応するもの(あるいはその構造的原因)

これをもう少し詳しく言うと、 企業が資金不足(赤字)から資金余剰(黒字)に転換 企業のプラス方向の変化が政府の赤字拡大と家計の黒字縮小のマイナス方向の変化によって相殺 になる。赤字/黒字は純借入/純貸出の意味で損/益ではないことに注意。 企業の資金余剰について詳しく見ると、1990年代後半~2000年代前半は負債の縮小(デレバレッジ、バランスシート調整)に充てられ、 2000年代後半以降は金融資産の現預金と対外直接投資の積み上げに充てられている。 現預金と対外直接

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ファクトチェック「日本の名目GDP伸び率は内戦の国並み」

著名人がこの👇グラフをツイートしているのを見掛けた。 出所はこれ👇らしいが、 データのソースが不明 数値がおかしい 伸び率ではなく比率では? など問題だらけである。ついでに言うと、ガンビアの「1982年~2014年紛争」も事実ではない。 世界銀行のDataBankから2000年と2017年の自国通貨建て名目GDPの比(と年平均成長率)を示すと、 リビア:2.7倍(+6.0%) ソマリア:不詳 シリア:9.2倍(+13.9%) 日本:1.03倍(+0.2%)

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「経済より命」「賃金よりフェミ優遇」

これ👇は日本社会の老化の反映だと思われる。 一般的に、人間は老化するとリスクテイクや変化に消極的になる。50歳以上が人口の半分近くを占める社会から活力と成長志向が失われるのは自然なことである。 日本経済はコロナ禍で成長しなくなったのではなく、その前から「1人当たり」ではほとんど成長しなくなっていた。就業者の増加には限界があるので、このままではマイナス成長が新常態になることが確実である。 岸田首相は世界経済フォーラムの僕、フェミ騎士となった感がある。

消費者物価指数

政府と日本銀行(とリフレ派)が目標にしていた消費者物価指数の+2%インフレが実現した。 グラフは2014年4月と2019年10月の消費税率引き上げ、2021年4月の携帯電話通信料大幅引き下げで区切っている。 グラフから見て取れるように、物価の持続的な下落は2010年後半には収まっていたので、反緊縮派の「日本はデフレが四半世紀以上続いている」は事実ではない。失業率は低く、労働参加率は高いので、財政赤字拡大の余地も大きくない。日本経済の問題はどちらかというと需要側ではなく供給

円安と輸出数量

この記事👇のグラフは期間が短いのでより長期のものを示す。 その前に、実質実効為替レートは変動相場制移行後の最低水準まで円安が進んでいる。 2000年以降の輸出数量は以下の通り。リーマンショック(世界金融危機)で急減→リバウンド→東日本大震災で終了→その後は横ばいが続いている。 2002~2007年は円安で輸出数量が増えていたように見えるが、そうではなく、中国経済の急成長に伴う中国向けの急増によるものだった。米欧向けは世界金融危機で急減した後もほとんど回復していない。

企業業績と経済のデカップリング

マクロ経済は絶好調から程遠いのに企業は大儲けしていることが、構造改革によって失調した日本経済の特徴と言える。 実質GDP成長率と企業の総資本経常利益率(=経常利益÷資産合計)の相関関係が2002年度以降、途切れている。 これは、企業がグローバルスタンダードの資本利益率を(無理やり)上げていることを示している。その無理のツケを回されているのが労働で、利益と株主還元が大幅増の一方で人件費の増加は止まっている。 日本の「改革」はこれ👇と似ている。 《本文は以上です。有料設定

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「令和版所得倍増」が「資産所得倍増」に

「小泉改革以降の新自由主義的政策の転換」を唱えて自由民主党総裁選挙に勝利した岸田首相だが、ロンドン・シティでの講演の内容は2013年に安倍首相(当時)がニューヨーク証券取引所が行ったスピーチと酷似しており、リベラル構造改革路線そのものになっている。 そして、もう一つ重要なストック面での人への投資が、「貯蓄から投資」です。我が国個人の金融資産は2000兆円と言われていますが、その半分以上が預金・現金で保有されています。この結果、この10年間で米国では家計金融資産が3倍、英国で

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