マガジンのカバー画像

マネー・MMT

235
MMTのルーツは新左翼思想
運営しているクリエイター

2019年7月の記事一覧

「MMTが正しいことの説明」が正しくないことの説明/日本を破壊する「現代の金本位制」

また中野剛志が暴走した文章を書き、それを「京都学派」の自由民主党の国会議員二人が拡散しているので、誤りを指摘する。 中野の論法は主流派経済学とModern Monetary Theoryを対置して、前者の誤りが後者の正しさを補強しているとするものだが、どちらも誤っている可能性があるので説得的ではない。 銀行は預金を元手に貸出しを行うのではなく、その反対に、銀行による貸出しが預金を生む。したがって、原理的には、銀行は手元資金の制約を受けずに、借り手さえいれば、いくらでも貸出

MMTの教祖ケルトンの講演資料を検証

Modern Monetary Theoryの教祖ステファニー・ケルトンの講演資料の内容を検証する。資料は下の動画にリンクがある。 1) The Business Card Model 「名刺モデル」とは、たとえば親が子に「1か月後に10枚の(親の)名刺を提出せよ」と義務を課したとすると、親は1か月以内に10枚以上の名刺を誰かに配らなければならないことを指す。名刺をマネー、提出を納税としたものが現実の通貨システムだというのである。親は子に提出させる前に自分が名刺を配らなけれ

MMTは「現実」ではなく「願望」だ

Modern Monetary Theory(現代貨幣理論)の教祖の一人、ステファニー・ケルトンが来日して国内のMMTerも盛り上がっていたようだが、伝えられた内容からは、MMTが根本的に誤った理論であることが改めて確認できる。 #COMEMO #NIKKEI 安藤議員が「国債残高とは、国が過去に国民に対して支出した貨幣のうち、税で回収しなかったものの履歴」との主張を「特筆すべき」と紹介しているが、これがMMTの根本的な誤りである。 その主張の背景には、現代国家における

MMTは民間軽視の前近代的理論

Modern Monetary Theory(現代貨幣理論)を誰でもわかるように簡単に解説する。結論から言えば、MMTは現代ではなく前近代の通貨システムに当てはまる理論であり、21世紀の日本経済には適していない。 MMTの基本的な主張要点は以下の通り。 中央政府は通貨の独占的供給者である。 財政支出は通貨発行によって賄う(≒軍票による物資調達)。 税は財政支出の財源として徴収するものではない。 徴税の主目的は通貨供給量の調整と経済格差の是正(再分配)。 財政支出は通貨の発

MMTに学力秀才がハマる理由

「反常識」で釣る現代貨幣理論(MMT)にハマる学力秀才が少なくない理由の一つに、MMTとカルトの類似性があるように思われる。 カルト信者の「自分たちは世の中の人々が知らない真理を知っている」という心理は、「選民意識や過剰な使命感」を持ちがちな学力秀才にも共通する。リフレ派もそうだったが、当初は異端とされる教義を「これこそ真理」と教宣したがるのがこのタイプの特徴である。 2元論的思考や陰謀論の多用、選民意識や過剰な使命感、過度な被害者意識などのカルト性(と思っていたもの)は

MMTは「マネーの民主主義」を否定する理論

MMTの基本的な主張現代貨幣理論(MMT)の主な主張は、 政府は通貨発行して財政支出を自己調達できるので、資金面での制約は存在しない。 政府が調達しようとする財・サービスの供給は有限なので、実物面での制約は存在する。 通貨発行が実物面での限界に達したことはインフレ率の上昇によって示される。 通貨供給量は財政政策によって管理する。インフレ率の高騰には増税and/or歳出削減の緊縮財政で対処する。 などである。 政府はいくらでも貨幣を創ることができるので、Affordabi

現代の通貨システムにおける銀行とマネーの基本ルール

様々な試行錯誤を経て進化してきた現代の通貨システムは一般人の直感では理解しにくいようなので、要所を整理する。 最大のポイントは、民間銀行が顧客に貸し出すマネーは自家製だが、外部との受け払いには中央銀行のマネーを用いることである。同じ「円」でも、銀行のバランスシートの負債側のマネーと資産側のマネーは別物である。 マネーの形式マネーは物理的実体の有無によって、現金(銀行券と硬貨)と銀行の帳簿上に記録された情報の預金の二つに大別できる。マネーを音楽に例えると、現金はCD、預金は