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【短編小説】私とゼンマイ時計(2)

第1話はこちら

1つ前のお話はこちら。

ゼンマイ時計を携えて、
直してもらえるか定かではない小さな旅に出た。

電車を乗り継いで、微かな希望と、
もし直らなかったら、
という一抹の不安をお供に。

乗り継いだ。

次の駅だ。

家を出る前に確認したのに、
時計があるかわざわざもう一度確認した。

あった。

駅を降りた。

知らない駅ではないけれど、
歩いたこともある道だけれど、

まさかこんなところにあったとは。


知っている道でも、半ば知らない道のような気がしながらどきどきしつつ進む。
まだまだ夏らしさが残る日射しにじりじりと焼かれる。

期待に足早になりそうになりつつも、
直らないと言われるかもしれない、
直ったらラッキーなくらいの気持ちで行こう、
と、ゆっくり自分に言い聞かせて、
少し足が重くなる。


ネット上で見た店構えから、前を通れば直ぐに分かるはず…

歩いたことがある道から少し先の方に、
本当にちょっと進んだところにあったとは。


見えてきた。

あそこだ。


丁度前を歩いていた二人組がお店の前で覗き込む。

特段用事はなかったのか、そのまま進行方向を前へ戻した。


お店の前に着いた。

店内の電気が点いている。

ドアに手を掛けた。

そして手前に引いた。

が、開かない。

引き戸ではなさそうだし、奥へ押すも開く様子はない。
とりあえず開かない。

異世界への扉が開かない。
選ばれた者しか入れないかのような気がする。


どれくらいの時間が経過したか分からないが、
はたと気が付いて開店時間を確認する。

"14時~"

今は、

12時。


へにゃへにゃと緊張が解けて、
私はドアから手を引っ込め足早にお店を後にした。


~つづく~


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