パタゴニアに学ぶ、マーケッターがクルマ(プロダクト)を通して提供すべきこと。

クルマのように、販売台数という明確なKPIがあり、それによって社内外で評価されるような社会にいると、どうしても戦略の思考がセールス中心になっていく。いや、もっと明確に課題を言うなら、企業のマーケッターは、ブランドターゲットとセールスターゲットを混同してしまいがちな生き物である、ということだと思う。

ブランドターゲット or セールスターゲット。
高級商材であるクルマでは特に、この考え方の切り分けをしないといけない。販売のCPA(Cost per Acquisition=獲得効率)だけで見て、値引きキャンペーンをやったり、新規獲得施策(e.g.Lead generation campaign)をやったりし、ブランド広告等を比較して、直接売りにつながるほうが偉い、とにかく「最終的に売れればよい」といった考え方は危険である。

よく若い人や他部署の人から「マーケティング部は何が目的なんでしょうか(もっと売ることにフォーカスすべきでは?)」と聞かれることがあるが、
私は、「今日の販売台数を作るのが営業、明日の販売台数を作るのがマーケ」と答えている。そのために、ブランドや市場環境、販売含めたプロモーション活動全体の仕組みを構築していくことが、特にデジタルを主としたマーケティング部に求められていることだと思う。
(もっと言うと、「結果売れさえすればよい」という考え方では、売ることすら怪しいケースが多い。つまり、「売れた」というOutputと「中間指標」を押し上げるInputの打ち手との接続を見いだせていないからだ。)

私は、販売促進やターゲット、ペルソナについての考え方については、Pいつもatagonia(パタゴニア)を参考にしている。

以下は、パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードの、私が大好きなコトバ。

まず、顧客について:

顧客についてはいくつか想定していることがある。まずは知的であること。さらに、買い物そのものを楽しむ人々ではない、「人生を金で買う」ことをしない、がらくた満載の人生ではなくシンプルで深い人生を楽しみたいと思っている、刺激的な宣伝広告の標的とされることにうんざりしている、あるいはそういう広告に無関心である、などだ。


続いて、販売促進の3つのガイドラインについて:

①販売の促進より世間に示唆や教育を与えることを旨とする。
②信用は買うものではなく、勝ち取るものである。口コミで薦めてもらったり、好意的な評価を刊行物にもらったりできれば最高である。
③広告は最後の手段である。なお、出稿する場合はスポーツ専門誌を基本とする。


詳しくは、「社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて」をお勧めしたい。www.amazon.co.jp/dp/4478069727


私は、マーケッターとして、お客様の望むものを最適なタイミングで届けたい、と思っている。でもそれだけでは不十分で、示唆や教育を与えることに力を注ぐべきだと思う。これは個人でできることではなく、プレミアムなブランド、「クルマ」だからこそできることだと思う。

クルマのすばらしさは、単にかっこいい乗り物であることやモビリティ性能、ということだけではなく、クルマという媒体をつかって、世の中に新しい価値「示唆や教育を与える」ことができることだと思う。

2020年は、クルマという素晴らしい媒体をつかって世の中に何を提供できたかが問われる年だと思うので、微力ながら努力したいと思う。

とにかく、クルマを売る、ということだけにとらわれない2020年に。

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