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独特な展開と「骨」と「ビーズ」

「骨を彩る②」

前回、書いた「ただの短編集ではない」とは、
つまり2章の主人公は、1章の主人公(津村)の
現在の恋人(光恵)であるとわかったということ。

全く別のシチュエーションではあるものの、
敢えて割愛した1章での津村の心情が、伏線
となっていることや、なぜ津村がそう感じた
のかという、1章では描写されなかった光恵
の人生の背景が、同級生である玲子や真紀子
を中心とした物語が進むにつれて、明らかに
なっていく。

形式としてはミステリーに該当するであろう
内容に、心が少しずつ飲み込まれていくのを
自覚した。

それは、そこには完全にミステリーやサスペンス
とは言えない日常(おそらく、多くの人が生きる
上で多かれ少なかれシンクロする、フィクション
でありながらノンフィクションのような)要素も
詰まっているからかもしれない。

そして次は誰を中心とした物語が展開するん
だろうという期待が膨らんでゆく。

3章もやはり主人公が変わり、しかしそれが
誰なのかは知っていた。2章での光恵の友人
の1人である玲子だ。

サクラコという女子大生との出会いに始まり、
ここでもやはり2章では描写がなかった、いや
厳密には少しの伏線は有ったが、後に焦点を
当てて描かれるとは予想していなかった、玲子
の人生の背景が描かれている。

ここでは「骨」というキーワードが出てくる。

玲子が、感情を素直に表現できないというより
したくないことを「骨が足りない」と表現する。

例えば肋骨とか背骨とか1本程度足りなくても
さほど問題はないはずのものが「足りない」
そのことを、ずっと内側に残す感覚を持ち続け
ているという煩雑な心境の吐露。

そしてその「足りない」せいで、いつも力を
入れておかないといけない人生だった。

だから、そこを埋めて骨格を明確にしたい。

という描写と、もう一つのキーポイントは、
玲子の歩んできた人生を踏まえ価値観として
ビーズに例えている。

紐で結ばれて隣合ったビーズも、ハサミで紐を
切ってしまえば弾けてバラバラになる。
一粒一粒が、どこに行ったのかさえ、分から
なくなる。

そのようなものだという人生観。

そこにサクラコが絡んでくる面白さ。

1つのビーズに過ぎなかったはずのサクラコ
との再会を経て、バラバラになったと思って
いたはずのビーズが、玲子の内側でかちっと
音を立てる表現は、なかなか女性著者の
特有のものかもしれないと、心地よく思う。

今日はここまで!
なんか引用箇所の色を変えたいんですけど
やり方がわからなくて、読みにくかったら
すいません!

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