LGBTsならではのキャリア形成とは？　専門家に聞いてみました！

前回（こちら）に引き続き、ながいキャリア社労士事務所所長でオープンリーゲイである永井均さん（こちら）に、LGBTsならではのキャリア形成について伺います。

ーーLGBTsの資産形成は、一般的な資産形成と同じように考えることができると伺いました。永井さんの表現では「同じ土俵」ということですが。

永井：資産形成というのは、主に働いて得た給料の中でやりくりするものです。しかしLGBTsは非正規雇用率が高いことや頻繁な転職によって、資産形成がしにくくなります。だからこそ、まずはやりたい仕事、やれる仕事に、頑張って踏ん張って取り組むこと。そこでやっと資産形成に着手できるんです。

ーー仕事に一生懸命取り組むには、どんなことがポイントになると思いますか？

永井：ライフイベントを作り、ライフプランニングすることが役立つと思います。〇歳でパートナーと家を買いたいな、〇歳で起業したいな、〇歳で世界一周旅行に行きたいな、とかね。そのためにどうやってお金を貯めようか、つまり資産形成しようか、というふうに考えることができますから。だから自分がライフプランの中でやりたいことが決まったときが、LGBTsフレンドリーやALLY（アライ）を表明している専門家に相談する良い機会になるかも知れませんね。

ーーファイナンシャルプランナーの考え方は保守的と言うか、相談に行くと自動的に「男女カップルに子ども二人」で試算を出してくれます。永井さんはどのように対応されていますか？

永井：僕は「ケースバイケース」を大切にしています。前例のない生き方であっても、相談者に寄り添って考えるのが僕のスタンスです。僕はオフィスのデスクの上には、LGBTsフレンドリーを示す6色の虹の旗を置いています。相談者に少しでも安心感を持ってもらいたいからです。相談する側も「ああ、結局相談できなかったな」と思わないように、自己開示してもらえたら嬉しいですね。

もちろん、相談に乗る側として、目の前の相談者の大きな転換点にセクシュアリティが関わっていることに気付けるかどうか、相談者が本当に困っていることに応えられるか、というスキルが問われています。また「どうして転職を考えていらっしゃるんですか？」と聞いても、相談者が安心して答えられるような雰囲気づくりも必要ですね。

ーーLGBTsのシニアになってからの課題も可視化されるようになってきました。

永井：実はLGBTsも、おひとりさま問題を意識するのはシニアになってからなんです。でもセクシュアリティを問わず、おひとりさまが今後増加することは間違いないので、それを不安には思わないでほしいです。それも含めたライフプランを一緒に考えて行きましょう。

ーーLGBTsの働きづらさが資産形成前の課題というお話もありましたが、働くことについて永井さんのご意見を伺えますか？

永井：今働けていないLGBTs当事者は、今すぐ働けなくてもいいと思っています。だってこれまでめっちゃ苦労してきたんやからね。休憩も必要ですよ。そして今からキャリアを積み上げようと思う人には「やりたいことをやりましょう」と伝えたいです。LGBTsだからあれをする、これをしない、ではなくて、やりたいことをやっていってほしいです。やりたいことだったら苦労があっても乗り越えられるからです。
これまでの苦労も現在の苦労も、心に秘めてパワーに変えて、その火を絶やさないでいること。そうしてキャリアを積んでいけばお金につながり、その後の資産形成にもつながります。まずは土俵に乗ること。これを頭の片隅に置いておいていただきたいですね。

ーー最後に読者の方にメッセージをお願いします。

LGBTsのリアルな老後は、孤独死や貧困など、明るい話題が少ないです。しかし働きづらさや生きづらさに耐えるだけではなく、積極的に情報を得て社会に参加していくことが必要です。
僕がファイナンシャルプランナーだけではなく、キャリアコンサルタントの資格を取ったのも、相談者の金融に関するサポートだけではなく、人生の設計そのものを支援したいと考えたからでした。今は「ゲイの社労士」「ゲイのキャリアコンサルタント」として、主にLGBTs当事者からの相談をお受けしています。
「キャリア」とは職歴のことだけではなく、自分のやりがい・仕事への思いという意味もあります。どんな人生をどんな仕事と共に歩むか、歩まないか、個々人に寄り添った支援を行っていきます。ぜひご相談ください。「ほっとキャリアトーク（こちら）」も実施中です。

ーー永井さん、ありがとうございました！

永井均　ながいキャリア社労士事務所→こちら
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