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#高安動脈炎闘病記 19

19.リタイア


8月。
ある決心を持って北へ向かった。

あまり具体的に書くことはできないが、休職に区切りをつけ、退職し治療に専念することとした。

思い入れがないわけではない。
前職を辞めた後、辿り着いた地域おこし協力隊という仕事を通じ、地域と関わってやってきた。卒業後もそのご縁から、色んな手段で地域活性化の仕事を続けてきた。
この仕事自体はとても大好きで、これという正解があるわけでもなく、それぞれの正解・成果の形があるだけに達成感もあった。
自慢ではないが、普通では経験できないこともさせてもらったし、高い目標としていたことにも到達することができた。

ここで頑張っていくことがライフワークのようになっていたので、志半ばではある。
だが、今回の病気を含めめちゃくちゃ迷惑もかけた上に、ズルズルとこのままいくのもよくない。
もちろん合わせる顔がないというより、職場の人にはそもそも会ってもらえないのではないかとすら思えていた。

ましてや、自分の身体はまだ思うようには動かないし、これからどうなるかがみえない。


綺麗事と建前はそうだが、
正直解放されたかった。


色々悩んで、病気にもなって、色々考えて。色々諦めて。

もう、何も考えたくなかった。
ただ、生きようとだけは思った。
生きることだけを考えたかった。


途中で、ハマっていた薬膳カレーのお店に行く。気は重い中だったが、久々だった店主さんも覚えてくださっていて、痩せた姿をチヤホヤしてもらい少し元気が出た。
いつもここのカレーにはメッセージが付く。

「人は人、自分は自分」
やさしくスパイシーなカレーに心地よい刺激を貰いつつ、さらに車を走らせた。


上司と喫茶店で面会をし、これまでのお詫びと深い謝意、そして退職の意思を伝えた。最後まで優しかった。
気持ちばかりのお礼を込めて菓子折りを持って行ったが、それは自分でみんなに持って行っておいでと言ってくれた。

改めて感謝を伝え、職場に向かった。

職場の皆も、いつもと変わらずあたたかく迎え入れてくれた。
たくさん迷惑をかけたはずなのに、申し訳ない。そう思いつつも、見慣れた人たちの顔は落ち着く。



とりあえず、治療に集中する環境はつくった。

諸々の手続きもあるので、入院日を9月の2週目に決めた。

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