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高尾歳時記 2024年4月7日

先日4月7日木曜日は、二十四節気の清明。二十四節気のなかでは、「啓蟄」と同じぐらい難しいことばです。なにせ、聞いてもピンとこないからです。

この「清明」ですが、季節感の説明においては、天明7年(1787)に出版された太玄斎(松平頼救)著「こよみ便覧」からの引用が多いようです。

国立国会図書館収蔵の「こよみ便覧」から引きます。原文縦書き。踊り字はかなに置き換え(注1)。


国立国会図書館 デジタルコレクションより
太玄斎(松平頼救)著「こよみ便覧」
(注1)

万物ばんぶつはつして清浄しやうじやう明潔めいけつなれバ此は何の草としれる也

そのうえで、「清浄明潔」を略したのが、清明という語の由来である、ということなのだそうです。

そもそも二十四節気は古代中国の暦法ですので、「清明」も「清浄明潔」もあちらから渡来したことばだと思います。なので、「こよみ便覧」も言葉を借りているだけで語義の説明はありません。ですが、調べるにしても漢語はわかりませんので、日本語の文献が調査の限界です。もとい、色々な方々がおっしゃるとおり、「清らかで生き生きしているさま」ぐらいにとっておけばいいのだと思いますけど。

なお、我々は「清明」を「せいめい」と読むので、「清浄明潔」も「せいじょうめいけつ」と読んでしまいそうですが、「しょうじょうめいけつ」が正しいようです。「こよみ便覧」にも「しょうじょうめいけつ」とありますし。漢字辞典を引くと、「清」は漢音「せい」、呉音「しょう(しゃう)」。「浄」を「じょう(じゃう)」と読むのは呉音とのことなので、「しょうじょう」は首尾一貫しています。ならば、漢音で統一しようとすると…と考えたのですが、「浄」は「じょう」以外の音を知りませんし、辞書によればこれは呉音ということですので、だったら漢音はなんなのか。調べたら「せい」とのこと。こんなの聞いたことありませんし、仮に漢音で統一するならば「清浄」は「せいせい」になってしまいます。これじゃ聞いても何のことかさっぱりわかりませんよね。「しょうじょう」とすることに致します。そもそも「しょうじょうめいけつ」という読み自体が「呉呉漢漢」というちゃんぽんなので、呉音で貫くなら「しょうじょうみょうけち」(「潔」の呉音が「けち」なのも今回辞書を引いて初めて知りました)になるはずなのですが、「みょうけち」なんぞいわれてもケッタイなだけだし、慣用化している発音にあらがうのは文字どおり無駄な抵抗ですよね。

東京は昨日4月7日に桜の満開宣言が出されました。高尾山のふもとの桜は若干花の進みが遅いのですが、六七分咲きほどで、満開は間近です。ただし、山の上のほうのソメイヨシノは開花が始まったばかりで、満開になるのは一週間ほど先でしょう。一方、山中のヤマザクラは場所にもよりますが、概ね五分咲きで、一部は満開近くまで開花が進んでいます。

足元を見ると、催花雨に刺激された春の花々が次々に開花し、「清浄明潔」の趣きです。特にスミレの花々はピークを迎えつつあります。

今回もお花の多いところを巡ってきました。

高尾山口駅前の、案内川の河原広場の改修工事が完了し、一部を除き開放されました。
2019年に日本列島を襲った台風19号は各地で甚大な被害をもたらし、死者行方不明者94名、重軽症者376名ならびに数万軒の住宅被害を数える大惨事となりました(*1)。この台風で、観測史上最大の雨量を計測した箱根では大規模な土砂崩れが各所で発生し、箱根登山鉄道は軌道が数ヶ所で崩壊し、全線再開まで9ヶ月間を要したことは記憶に新しい。
あまり知られていませんが、台風19号は高尾山口駅周辺にも甚大な被害を及ぼしました。記録的な大雨により河川が増水。案内川は写真に写る高尾山口駅前で氾濫。周辺家屋は浸水し、土砂を含んだ泥水は高尾山口駅構内にも流れ込みました。台風一過の高尾山口駅周辺は見るも無惨な姿に。
これを踏まえて、駅前広場付近は護岸を強化し、川幅を広げるなどの河川改修を実施し、あれから約4年半の歳月をかけ、工事が完了しました。
高尾はスミレの花のピークを迎えつつあります。こちらは高尾では最も一般的に見られる、タチツボスミレ。
こちらもタチツボスミレですが、通常全体が緑色になる葉の葉脈が深い赤色に染まる品種。アカフタチツボスミレと呼ばれます。
こちらもタチツボスミレですが、淡い紫色の品種。ほぼ純白に近い品種もあり、シロバナタチツボスミレと呼ばれます。
こちらは高尾ではほんとうに一部でしか観察できない、ヒゴスミレ。全国的には希少種というほどではありませんが、高尾の個体数は極めて少ない。
エイザンスミレのような深い切れ込みの入った葉が特徴ですが、エイザンスミレよりも切れ込みは深く、針のようになります。
こちらはエイザンスミレ。深く切れ込みの入った葉と淡い桃色の大きな花が特徴です。高尾における個体数は比較的多い。
ナガバノスミレサイシン。花の色や形にバリエーションが多い。
こちらもナガバノスミレサイシン。薄い紫色の個体。
こちらもナガバノスミレサイシンですが、ほぼ純白の個体。
こちらはオカスミレ。花の側弁の根元に毛がびっしりとはえるのが見分けるポイント。この側弁毛以外にも、全身に微毛をつけるのがアカネスミレ。側弁毛以外ほぼ無毛なのが、アカネスミレの変種に分類されるこのオカスミレです。
こちらはノジスミレ。見た目はスミレの本家本元である、「スミレ」という名のスミレ(混同しないように「ホンスミレ」と呼ばれることもあります)そっくりですが、側弁毛がないことと、葉の裏が有毛であることがホンスミレとの大きな違い。
某所ではミズバショウが見頃を迎えています。高尾にミズバショウが自生しているという情報に接したことはないので、こちらは人為により定着しているものでしょう。
こちらは花が完全に開いて背丈を伸ばしているフキノトウ。
ミミガタテンナンショウの花があちこちで咲いています。
ムラサキケマンが咲き始めていました。
沢沿いの湿った環境でこの時期よく見かける、ヨゴレネコノメ。
山中のヤマザクラは大体六七分咲きほど。ヤマザクラの最大の特徴は、開花とともに飴色の葉が開くことです。古来より日本人が歌に詠んできた桜です。
クサボケの花が開花し始めています。こちらはかなり早咲きの個体。
あっ!これも早咲きですね。ホタルカズラの花が半分開いています。
なんと、こちらもかなりの早咲きです。オカタツナミソウが開花しています。通常は梅雨入りぐらいに咲く花です。
ジュウニヒトエ。高尾ではこの時期からあちこちで見られるようになります。
一丁平の桜は開花したばかり。淡くピンク色に染まっています。見頃はもうちょっと先です。
一丁平のコブシが満開です。
コブシに非常によく似た植物で、タムシバというのがあります。両者は交雑できるほどの親戚関係にあるらしいのですが、種としては別々に分類されています。
南関東では圧倒的にコブシが多く、事実タムシバということばを聞いたことがなかったので、谷川岳など上越の山や、磐梯山や飯豊連峰など東北の山でタムシバを見た時、コブシと信じて疑いませんでした。
そしたら、あるかたからこれらはタムシバではないかとご指摘をいただき調べたところ、間違いなくタムシバでした。
しかし!ある決定的な特徴が確認できなければ同定は極めて困難です。それは、コブシは写真のように、開花時、花の付け根に一枚だけ葉っぱがでるのですが、タムシバはでないことです。これがなければ、私には同定は極めて難しい。冬の枯れ木の状態だったら不可能です。
高尾山山頂に到着。富士山方面の眺望。空はうっすらと雲がかかり、富士山はお預けです。
同じく高尾山山頂から、丹沢主脈方面。こちらも眺望は限定的。丹沢主脈の稜線も見えませんでした。
シュンラン。この季節高尾山でよく見かけます。
西山峠のニリンソウの群生の見頃はもうちょっと先。
あと一週間程度ということろでしょうか。
高尾山ケーブルカーの山麓駅(清滝駅)前の桜は満開です。
春は、モミジ(カエデ)の花の季節でもあります。赤くぶらさがっているのがモミジの花。
京王線高尾駅の高架下の桜並木は見頃を迎えています。
都心は満開宣言が出ましたが、高尾駅周辺の桜は満開一歩手前。今週いっぱい楽しめそうです。

*1
参照資料
内閣府 防災情報のページ
2019 年(令和元年) 令和元年度台風第 19 号

https://www.bousai.go.jp/kaigirep/houkokusho/hukkousesaku/saigaitaiou/output_html_1/pdf/201902_01.pdf

(注1)
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