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高尾山ノスタルジア No.4:琵琶滝(1/2)

『八王子名勝志』における高尾山ガイドの序盤に、現在の高尾山ケーブルカー山麓駅(清滝駅)周辺の見所の解説のあと、琵琶滝とその道のりの説明があります(資料①)。以下抜粋します(表示できない字は現代文字に置き換え)。

資料① 『八王子名勝志』から、清滝より琵琶滝への道のりの説明箇所。(注1)

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琵琶瀧びわのたき

一ノ鳥居のかたわら票示へうじありて琵琶瀧道びわのたきみちとしるす左に十四五丁の坂路さかみちあり次第しだいにのぼる瀑布たき二丁程ちかくに民家みんか二軒ありゆゑあさなして二軒茶にけんぢゃやよぶ至極に綺麗きれいなる家なり瀑布垢離たきごりするもの一七日または三七日の勤行こんぎゃうみつるうち其間同行の供など滞留とふりゃうする泊舎とまりやなり其内半助といへるよりハ不動尊の御影みえいおよび瀑布たきなど出しあたふ其所そのところ二軒茶やより西ノ方へ少しくのぼりなれば高き所に四阿舎あづまやあり休息所きうそくじょなりこれより瀑布たきのもとまで一町余といふ。その水のながれハ高尾山領さんりゃう案内あんない村よりして小名字こなじ村にいで長房村のうちを流れ八王子の北裏きたうらて浅川といひそれより東流とうりゃうして石田村より多麻たま川にくわいすゑハ羽根田よりして海に入」
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勝手に現代語に訳してメートル法に直すと、こんな感じでしょうか。

「一ノ鳥居のかたわらに琵琶滝道と書かれた道しるべがあり、左の方に1.5kmほどの坂道がある。坂道を徐々に登っていくと、滝の200mほど手前に民家が二軒あり、それゆえに二軒茶屋と呼ばれている。大変綺麗な家で、滝にて一七日ひとなのか三七日みなのかのおつとめをするあいだ、同行者とともに宿泊する宿である。ここでは半助と名乗る者が、不動明王や滝の絵を売っている。二軒茶屋を出て西の方角に少し登っていくと、高いところに休憩所である東屋がある。そこから滝までは100m余り。その水は、案内村から小名字村へ出たあと長房村へと流れ、八王子の北で浅川と名を変え、さらに東へと流れ石田村にて多摩川に合流し、最後は羽田から海に注ぐ。」

絵葉書に残る、高尾山ケーブルカー敷設後間もない頃、昭和2年(1927)から昭和7年(1932)の間に撮影(手彩色)されたと推定される、二軒茶屋の全景。(注2)

旅行ガイドブックらしく、「綺麗なお宿があるよ」とか「お土産売ってるよ」とか、「あの水が大河となり、海へとつながっているんだよ」など、読者をウキウキさせるようなお話しぶりです。なかなか商売上手ですね。

現在琵琶滝に向かうには、高尾山ケーブルカーに沿って高尾保養院東京高尾病院へと続く舗装道路を歩き、病院の手前で左に折れ、6号路を経由するのが一般的です。ですがこの当時6号路はなかったため、人々は坂道を登り切って、現在東京高尾病院の敷地の一番高い場所にあった二軒茶屋に至り、そこから、現在は「病院道」と呼ばれる登山道を登っていったものと思われます。病院道にとりつくためには病院の私有地である駐車場を通って建物の裏側にまわらないといけないのですが、病院のご厚意で登山者の通過は黙認頂いているようです。あくまでもご厚意なので、迷惑をかけないよう寄り道せず静かに通りましょう。

現在琵琶滝へと向かうには、まず高尾山ケーブルカー清滝駅の左側を抜け舗装道路を進む。
そして、右にケーブルカーの軌道を見ながら坂道を登っていく。
ここが6号路との分岐。いまはここで左に折れて6号路を琵琶滝へと進むのが一般的。しかし、『八王子名勝志』のころは坂道をさらにまっすぐあがって、かつて二軒茶屋があった、高尾保養院東京高尾病院の脇をすり抜けて現在は病院道と呼ばれる山道を登って行ったものと思われる。

病院道にとりつくと、『八王子名勝志』の記述通り、すぐに急な登りになります。これを登り切ると、通称「石仏広場」と呼ばれる、平らに開けた広場があります。ここが恐らく、『八王子名勝志』に記述のある東屋があった場所なのでしょう。小さな建物であれば建てるのに十分な広さです。石仏広場は三叉路になっていて、それぞれ病院、琵琶滝そして霞台へと通じています。琵琶滝はここから約100m余りくだったところにあり、これも、『八王子名勝志』の記述と一致します(続く)。

石仏広場。周辺は険しい山道だが、霞台からの支尾根の突端にあたるここだけ平らに整備されている。
石仏広場を背にして、三叉路を撮影。
『八王子名勝志』のころから山道のつけかえがなければ、写真向かって右の病院道をのぼり、写真向かって左の琵琶滝道をくだって琵琶滝へと至ったものと思われる。
琵琶滝はここから100mほどくだったところにあり、『八王子名勝志』の記述と一致する。
ケーブルカー敷設から間もない頃に撮影されたと推定される、二軒茶屋を俯瞰した写真。高尾山ケーブルカーが完成していて、位置関係がわかりやすい。右下のほうに、現在6号路分岐に至る舗装路となっている道が見える。(注2)
すぐ上の写真を撮影した場所を探索。病院道の、高尾病院から三叉路に至る途中のこの場所が位置的に符合するが、現在は木々が大きく育ち視界が遮られている。

(注1)
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参考資料:文化庁 著作物等の保護期間の延長に関するQ&A


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