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介護DXもいいけど、一般的なITリテラシーを向上させるのも重要

近年、介護業界ではデジタル技術の導入が進んでいます。いわゆる「介護DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、業務の効率化やサービスの向上に寄与し、介護従事者の負担軽減を目指しています。介護記録のデジタル化、リモートモニタリングシステム、AIを活用したケアプランの最適化など、さまざまな技術が活用されています。しかし、これらの技術を最大限に活用するためには、一般的なITリテラシーの向上が不可欠です。

ITリテラシーの現状と課題

介護現場で働く人々の中には、テクノロジーに不慣れな方も多くいます。これにより、新しい技術の導入が遅れるケースも少なくありません。たとえば、パソコンの基本的な構成要素であるCPUやHDD、SSD、メモリの役割を理解している人は少ないかもしれません。

例えば、私の職場では毎月第二水曜日になると「パソコンが重い」「●●ができなくなった」「PCがつかない!」と大騒ぎになります。これはWindows Updateによる影響ですが、毎月説明しても理解が難しいようです。
基本的な知識や情報を知っていれば、Windows Updateを停止(リスクはあるが・・)する方法や、ダウンロードが影響しているならば宿直明けの職員にあらかじめPCをつけてもらう、事前にインストール日を設定する等の対策が考えられるかもしれません。
やり方はわからなくても、こういった原理であるからこういった方法があるかも・・と思いつくこともあり得ます。

経営者層の課題と改善

経営者層がよくやりがちなのは、「介護DX」をしようとして、形から入っていくことです。お金をかけて体制ばかりを整えますが、結果的に形骸化することもあります。以下は、具体的な実例や根拠を示して説明します。

実例1: 高価なシステムの導入とその失敗

ある介護施設では、最新の介護記録システムを導入しました。システムには多くの機能があり、業務の効率化が期待されました。しかし、実際に導入してみると、多くの職員がシステムの使い方に慣れず、手書きの記録を併用することが多かったため、二重記録の手間がかかり、逆に業務が煩雑になりました。これは、システムの操作方法や基本的なITスキルが職員に不足していたためです。

実例2: リモートモニタリングシステムの導入と形骸化

居宅介護支援事業所ではリモートモニタリングシステムを導入しましたが、職員がシステムの設定やトラブルシューティングに不慣れで、システムが十分に活用されませんでした。
結果として、高価な機器が無用の長物となり、最終的にはシステムを使わない方が効率的だという結論に至りました。

根拠: リテラシー不足の影響

ITリテラシーが低い状態では、便利な機能が「めんどくさい」や「余計大変」に変わってしまうことがあります。例えば、情報処理推進機構(IPA)の調査によると、多くの企業でITシステム導入後の操作方法やトラブル対応に関する研修が不足していることが、システムの効果を低減させる要因となっていることが分かっています。このような状況を避けるためには、経営者層がITリテラシーの重要性を理解し、従業員に対する継続的な教育とサポートを提供する必要があります。

ITリテラシー向上のための取り組み

  1. 教育・研修プログラムの充実: 介護従事者向けに、基本的なITスキルを学ぶための研修プログラムを提供することが重要です。パソコンの基本操作から始まり、専門的なソフトウェアの使用方法、セキュリティの基本知識までをカバーする内容が求められます。

  2. 継続的なサポート: 一度の研修だけではなく、継続的にサポートを提供することで、習得した知識を実際の業務に活かしやすくします。例えば、定期的な勉強会やサポートデスクの設置などが効果的です。

  3. ユーザーフレンドリーなシステムの導入: 介護現場の特性に合った、使いやすいシステムを導入することも重要です。直感的に操作できるインターフェースや、音声入力機能など、高齢者やテクノロジーに不慣れな方でも使いやすい設計が求められます。

一般的なITリテラシーの向上がもたらす効果

ITリテラシーの向上は、介護DXの推進だけでなく、日常業務の効率化やコミュニケーションの円滑化にもつながります。例えば、電子メールやチャットツールを活用することで、情報共有が迅速かつ正確に行えるようになります。また、デジタルツールを使いこなすことで、事務作業の時間が削減され、より多くの時間を利用者への直接的なケアに充てることが可能となります。

結論

介護DXの推進は重要ですが、それを支える一般的なITリテラシーの向上も同様に重要です。介護現場で働くすべての人がデジタル技術を効果的に活用できるようになることで、業務の効率化やサービスの質の向上が実現します。教育・研修の充実、継続的なサポート、ユーザーフレンドリーなシステムの導入を通じて、ITリテラシーの向上を目指していくことが求められます。

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