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「フルーツ牛乳」the 3rd spoon_クララ

文芸ユニット「るるるるん」によるツイッター400字小説『3spoons』第三回テーマ ”フルーツ牛乳“

初めてカレの下宿に招かれたときだった。
「コーヒー牛乳とフルーツ牛乳、どっちがいい?」
“ババ抜き”で“ババ”をひかせる手口でわかりやすく誘導するから、「フルーツ牛乳がいいな」と期待通り“ババ”をひいてあげるアタシ。
ドヤ顔をこらえて頬を痙攣らせながら爪で紙蓋を器用にをめくり、瓶をよこすカレ。
「フルーツ牛乳飲むの、実は初めてかも」と言ったらカレは有頂天になり、一口飲むたびに「おいしい?」だの「気に入った?」だの「なんのフルーツの味がした?」だのしつこく尋ねてくるのに対し、一方では「意外と甘酸っぱいね」とか「牛乳じゃないみたい」とか「なんか味が可愛い」など、いかにも“フルーツ牛乳好きのする女の子”が言いそうな台詞をクッと引き上げた口角からスルスルと吐露したことに驚き、もう一方では処女性を重んじるタイプが取ると予想される次の行動に食傷し、早くもお別れのヴァイブス感じる。
コーヒー牛乳feat.フルーツ牛乳の唾液が交じる。
リサイクル瓶みたいにザラついた唇。

夏の失恋に、フルーツ牛乳の粘り気は強すぎる。

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