3月クララ

文芸ユニット『るるるるん』の中のひと

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マガジン

  • クラムチャウダー ファンクラブ

    文芸ユニットるるるるんの3月クララが名古屋の『施設図書館もん』さんでひと棚店主『クラムチャウダー ファンクラブ』を開業しました。このマガジンで『るのクラファン』に集まった本たちを紹介していきます。 <小説はオワコンなのか? 文芸ユニットるるるるんは問う。『クラムチャウダー ファンクラブ』は小説に心をつかまれたるるるるんのインターステラー本棚である。るるるるんは5次元から小説が持つエネルギーをビーーーと伝える。本棚の前でチューニングを合わせてください。ビーーー>

  • ぬるっと朗読

    朗読で読む小説。気ままに。

  • 雑談

    雑多なめも。

  • 3spoons

    UNI、かとうひろみ、3月クララによる文芸ユニット『るるるるん』がお届けするツイッター400字小説 "3spoons" “UNIと かとうひろみは3月クララと走り出す”

  • Cinema

最近の記事

6月29日(水)の本棚

「わたしの全てのわたしたち」 サラ・クロッサン/金原瑞人・最果タヒ訳UNI くっついている”わたしたち”は一人一人生きている。この本だけをずっと読んでいたい。 3月クララ 最果タヒが日本語の散文詩に再構築している。ネオンカラーの装丁が美しい本。原題は「ONE」。バイヤスを全部とっぱらったら、わたしたちはどんな「ONE」なんだろう。しばらく本を枕元に置いて孤独を共有した。 「中央駅」 キム・ヘジン/生田美保訳かとうひろみ 全身全霊でおすすめしたい本。韓国の小説を読むの

    • 6月17日(金)の本棚

      名古屋市の『私設図書館もん』さんでひと棚店主を始めました。このマガジンで棚を飾る本たちを紹介していきます。佐々木未来 ○ほんとのはなし てのひらサイズのイラストブック。自分のアバターが『本と暮らす』を文字通りに楽しんでいるようで、書物を愛する方のお守りに! ○ポストカード 2種類 特に気に入ったイラストを1枚づつお分けします!むちゃかわなので争奪戦です。追加はありません! <売り切れ御免> 亀石みゆき 文フリで一目惚れしてしまった映画レビューノート。イラストが素敵なの

      • 『カムフラージュ』〜貝楼諸島より〜

        犬と街灯さまによる島アンソロジー #貝楼諸島より 参加作品—貝楼諸島には島々を繋ぐ共通言語がない。人々は生まれた島から出ず、ことばは島を離れない。島人たちは風を食み、ことばを刻む。そうしてまとまった『ことばの棉』を飛ばし、島々にことづけを送る。届いたことばの棉を詠むことができるのは、まだことばを知らない赤子だけだ。  人魚の肉を食べたヒトは『人魚の島』に集められた。人魚の島ではヒトが三人以上に増えないよう制御されている。ある晩、双子のナチュアとダーは、老女のセルマとともに人魚

        • 朗読で読む、かとうひろみ『タソガレ』

          朗読で読む、かとうひろみ初の短篇集「小さい本屋の小さい小説」 第一回目『タソガレ』

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        記事

          夢・備忘録

           めずらしく夢を憶えていたので、書き留めておく。  いっちゃんが突然家に住まわせてと押しかけてきた。  いっちゃんは、若いときに活動していたノイズバンドで、一時ドラムを叩いていた同い年の女性だ。(わたしはノイズG &Voだった) 恋愛、仕事、体調不良、遊び、人生がいちばん忙しい時期を一緒に過ごした友人でもある。  強引に我が家に住み着いたいっちゃん。ある日、仕事から帰ったら台所のコンロ6口すべてを使って、彼女が凝った料理を作っていた。イギリスの郊外の家のような、カントリ

          夢・備忘録

          3spoons vol.12ー自由、港ーthe 3rd spoon_3月クララ

          文芸ユニットるるるるんツイッター400字小説3spoons 不可逆なわたしとわたし ビルの一階に迫り出す青いオーニングテント。それが目当ての本屋の入り口だ。部活のない日は寄り道をして、「最近のトピックス」を店主に喋り続ける。長居を決め込むためだ。もちろん7割方作り話。 「おかあさんに狐が憑いた」と言えば油揚げを、「虫食い穴がセーターとお腹を貫通した」と言えばビーズのアップリケを、「朝、炊飯器のタイマーをセットし忘れた」と言ったときは、「これは僕のおごり」とハーブキャンディ

          3spoons vol.12ー自由、港ーthe 3rd spoon_3月クララ

          3spoons vol.12ー自由、港ーthe 2nd spoon_UNI

          文芸ユニットるるるるんツイッター400字小説3spoons ある人の五月のこと 「私は自由」  転びそうになりながら、私は綿の靴のまま浅瀬へ入る。 「ベビーカーはあなたの自由を奪うものじゃないよ」  母は言う。 「この温かさと冷たさは、自由」 「ざぶんとしたいなら夏にまた」 「ベビーカーが気に入らないんです」 「でもずっとあなたを抱っこはできない」  港は、と私は尋ねる。 「港まであなたの足では二時間はかかる」  私から発せられたふええという泣き声がことのほか大きくて、私

          3spoons vol.12ー自由、港ーthe 2nd spoon_UNI

          3spoons vol.12ー自由、港ーthe 1st spoon_かとうひろみ

          文芸ユニットるるるるんツイッター400字小説3spoons  港 雨が降ったのか海に落ちたのか記憶はないけれど スカートの裾から水をぼたぼた垂らしたまま コンクリの地面に据え付けられたベンチに私は座る 遠くで77階建てのビルが777の窓を光らせている その光はここまでは届かず 持っていた本を開いても文字は読めないが そこにあるのは名作に違いないと思う さっき背筋をヤモリが這っていき、海に落ちた 私はそれを追いかけて海に沈むこともできるし ヤモリを見捨てて町の明かりを目指す

          3spoons vol.12ー自由、港ーthe 1st spoon_かとうひろみ

          3spoons vol.11 ー鍵盤ハーモニカーthe 3rd spoon_UNI

          文芸ユニットるるるるんツイッター400字小説3spoons 312番 あのカラオケ店ではだめなんです隣の部屋の音が入る、田中さんは一気にそう放った。言葉は私の耳管を往復し、ようやく脳へ達する。森さんにしか頼めないんです絶対変なことしないんでと彼はまた詰めこむ。絶対変なことをしないと言う男は、絶対変なことをする。なのに断り切れず彼の軽自動車に乗りこむ私は、鞄からマイクやらチューブやらを取り出す彼の細い首に目をやった。なにかあってもこの首を狙えば大丈夫。田中さんが鍵盤ハーモニ

          3spoons vol.11 ー鍵盤ハーモニカーthe 3rd spoon_UNI

          3spoons vol.11ー鍵盤ハーモニカーthe 2nd spoon_3月クララ

          文芸ユニットるるるるんツイッター400字小説3spoons  F#、あるいはG♭  開きっぱなしのくちびるから覗くすきっ歯。「フィ」が欠けた鍵盤ハーモニカのようだ。歯の隙間から(スュー、スュー)と空気も漏れる。男はたまらず女の「フィ」を黒鍵で塞いでみる。 「フランスではね、“幸運の歯“って言うんだよ。この隙間からツキが入ってくるの。ヴァネッサ・パラディとかレア・セドゥなんか、チャーミングだしいかにもツイてるって感じでしょ?」  女の「フィ」を、男は解放してやる。スュー、ス

          3spoons vol.11ー鍵盤ハーモニカーthe 2nd spoon_3月クララ

          3spoons vol.11ー鍵盤ハーモニカーthe 1st spoon_かとうひろみ

          文芸ユニットるるるるんによるツイッター400字小説 3spoons アメリへの道 『アメリ』に憧れたお姉ちゃんが、前髪ぱっつんのボブにして、窓ガラスに逆さ文字を猛スピードで書く練習をして、鍵盤ハーモニカを買ってきた。でもお姉ちゃんは楽器が弾けなかったし、逆さ文字を書く練習で忙しかったので、鍵盤ハーモニカの BGM は私の役目になった。毎日二人でアメリの世界を作ることに血道を上げたが、お姉ちゃんが逆さ文字を書いているのはカフェの窓ガラスじゃなくて町の片隅に放置された廃病院の

          3spoons vol.11ー鍵盤ハーモニカーthe 1st spoon_かとうひろみ

          3spoons vol.10ー吹くーthe 3rd spoon_かとうひろみ

          文芸ユニットるるるるんによるツイッター400字小説 3spoons 米粒 私はブスを生きている。それもかなりのブスだ。ブス。それは呪いだ。メイクでは修正しきれないブスを抱えて、今日も私は生きる。お金がないから整形は無理だ。ブスで貧乏だ。  世間の態度はもちろん冷ややかだが、みんな善人ぶりたいので正面切って私のブスを糾弾する人はいない。私の顔を見た人はみんな、こらえきれず笑ってしまったり、目を逸らしてため息をついてみたり、そんな程度だ。  でもたまに、ファンファーレのように「

          3spoons vol.10ー吹くーthe 3rd spoon_かとうひろみ

          3spoons vol.10ー吹くーthe 2nd spoon_3月クララ

          文芸ユニットるるるるんによるツイッター400字小説 3spoons Sincerely yours, 引越しを明日に控えあらかた食器を梱包してしまったので、夕食はデリバリーのピザで済ませることにし た。ところが夫が買ってきたワインのために、ダンボールを一つ解くハメになった。 (紙コップで飲むワインなら、スクリューキャップで十分なのに)  ワインオープナーを包んだ新聞紙を盛大に破り取る。  テレビをつけ、動画サイトが自動再生するレディオヘッドを見るともなしに見た。会話のない夫

          3spoons vol.10ー吹くーthe 2nd spoon_3月クララ

          3spoons vol.10 ー吹くーthe 1st spoon_UNI

          文芸ユニットるるるるんによるツイッター400字小説 3spoons いつものミントさん いつものカフェのカウンターにいつものミントさんがだらしなく座っている。気づかないふりをして、すこし離れた席に着く。鰈を美女にしたらきっと彼女の姿容だ。色素の薄い顔にそばかすを散らし、ふわ、とまつ毛に彩られた目元。ココアを、とマスターに頼むと、ほほえみながらミントさんがこちらに伸びてくる。泡のたつ透明のグラスを右手に握りしめていて、いつものことだ、なにを飲んでいるかはわからないが酒だろう。

          3spoons vol.10 ー吹くーthe 1st spoon_UNI

          3spoons vol.9 『入れ違い』the 3rd spoon_3月クララ

          文芸ユニットるるるるんによるツイッター400字小説 3spoons Passengers–入れ違い-Aが出たあとすぐにBが入ること。AとBは同時に存在しない。 ひゅわん、すたん、ずざ。ひゅわん、すたん、ずざ。クラスメイトが次々としなう長縄を跳ぶ。8の軌道を描く連続写真ができあがる。 わたしはもう、何回跳んでいるのだろう。底の薄いピンクのズックは砂を浴びてすっかり白茶けてしまった。 黒田くんが「ゴゴゴ」と鼻を啜りながら走り抜ける。黒田君はちょっとだけ力むとき「ゴゴゴ」と鼻

          3spoons vol.9 『入れ違い』the 3rd spoon_3月クララ

          3spoons vol.9 『入れ違い』the 2nd spoon_UNI

          文芸ユニットるるるるんによるツイッター400字小説 3spoons 百年床しっとりとしたこの世界が私のすべてだ。海のものと田畑のものを用いて作られたことを、バァさまのバァさまから聞いている。この世界に時々、あたたかで柔らかなテェがさしこまれる。それは私のすべてをひっくり返し、かきまぜ、足したり引いたりする。 私がぬか床であるということを認識するためには他者が必要であり、それは初期のバァさまだった。バァさまからのちのバァさまへ話しかける声が、手に手をとり世界につっこむその行

          3spoons vol.9 『入れ違い』the 2nd spoon_UNI