今日はどっちのラーメン行く?

会社からようやく脱出できたのは、いつも通り深夜近くの時間帯だった。いつものように自転車で並んで、部屋までの道のりを漕いでいた。早くご飯も食べたいし、お風呂にだって入りたい。何なら今すぐベッドで寝たいんだけれど、ずっとこのまま自転車を漕ぎ続けていたいような。毎回そんな感じの帰り道だった。

GWも終わって、日常生活が戻ってきて。そんな毎日の繰り返しだった。梅雨になる前のこの時期は、自転車乗りにとってはベストシーズンというか。漕いでいても、とっても清々しい。会社から住んでいるアパートまでの20分くらいの距離なら、まだ汗をかいたりはしないような季節だった。夜風が気持ちいい。仕事の繁忙期には、あと少しだけ猶予がある。ちょうどそんな時期だった。

お決まりの冒頭の質問が出たのは、半分くらいの道のりをすぎた頃だった。コンビニですませてしまうのは、なんだかもったいない。明日も仕事で、おしゃれなお店に立ち寄るほどの元気は残っていなかった。連休明けの日常疲れを労いたい、そんな時には深夜のラーメンがいちばんだった。どちらのラーメン屋に行くかによっては、そろそろ角を曲がる必要がある。

どちらも細麺で、ラーメンがくるまでの間は瓶に入ったモヤシのナムルを食べられる。帰りにちょっとしたデザートが買いたかったので、コンビニが近い方のラーメン屋を希望した。早くラーメンが食べたい気持ちと、夏が待ち遠しくなるような夜風にあたりながらこのままずっと並んで自転車を漕いでいたい気持ちが混ざっていく。

お店の灯りが見えてきて、自転車を止める頃には何を食べようかメニューのことで頭はいっぱいになっていた。ラーメン2つと餃子1つ、食券を買うとカウンターで横並びの席に案内された。化粧がくずれていたのが気になっていたので、少しほっとする。店内は、8割男性客でうまっていた。モヤシのナムルをつまんでいると、食欲が少し落ち着いてきた。

テレビでは夜のニュース番組も終わり、バラエティ番組が流れている。こんな日常が、ずっと続いてほしいと漠然と思った。店員さんがラーメンの湯切りで後ろを向いたその時、カウンターの下でそっと隣の手をつないだ。

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