月の見え方、世界の感じ方。

帰り道、駅のスーパーに寄って3本入りの団子を3パック買った。

毎日、仕事が終われば「今から帰るよ」と妻に電話する。今日は中秋の名月で、電話越しに団子のようにまん丸の顔をした妻と娘に「団子、団子♪」と催促されて、スーパーに寄った。

エコバッグを持っていなかったので、魚用のビニール袋にパックを詰めて、手で持ってかえる。駅前の交差点で道路を渡ると、目の前の花屋さんから女性が出てきた。手には花ではなくて、見覚えのある何かを持っている。

「あ、すすきだ。」

女性の手にはすすき、私の手には団子。
すすきのことなんて、我が家の誰の頭にもなかったのだ。

家に帰って、団子が歓迎されつつ、その話を妻に話すと

「すすきを花屋さんで買うなんて、なかったよね」

私たちはお互い地方暮らしで、すすきは買うものではなく取ってくるものではあったが、つっこむところはそこなのかとおかしくなって笑った。

夕食後、月見団子を食べる前に外に出た。

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月の見え方

月を見つけるのは簡単だ。約30日に1度の新月の日と雨や曇りの日を除いて、日が沈み辺りが暗くなった頃に空を見上げると、そこにある。

意識的に月を探すことなんてしないくらいに、それは当たり前にあるものだと思う。だからこそ、妻の顔色を伺うことはあっても毎日の月の表情を見ることはない。

もし、私だけでなく多くの人が同じように月を特別に意識したことがないのであれば、ほとんどの人は" いつどの時の月が一番印象に残っているか " なんて覚えてなんかいないと思う。

けれど、私には月に魅せられた瞬間があった。その日から毎日、月を見上げるようになったわけではないけれど、今でもはっきり思い出せる忘れられない月がある。



2016年9月16日、私はアメリカのフロリダ州にいた。2週間程アメリカの各地を転々としてスポーツ観戦や、テーマパークを満喫していて、とうとう明日が帰国する日だった。

初めての海外で、ボストンバッグが膨れるほどにショッピングモールでお土産を買い漁りバス停に向かう。まだ空は明るかったが、時計の針は17時頃をさしていた。

何の躊躇もなく交通機関を利用して、買い物をして、異国の雰囲気に少し馴染みつつあったが、重たい荷物を地面に置き、ふと一息に空を見上げると、異質なものが目に映った。

フロリダの広大な地に浮かぶ大きな満月だった。

いや、異質なものでもなく、月は世界中のどこからでも見ることができるのはもちろん知ってはいたのだけれど、中秋の名月と呼ぶように日本から見える満月が一番綺麗なものなんだと勝手に思っていて、アメリカではハーベストムーンと呼ぶそれが、異質なもののように映った。

「世界は繋がっているんだなあ」と感じさせる月だった。

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世界の感じ方

「うさぎさんが作った団子落ちてくるかな」と団子で頭いっぱいの娘を真ん中にして、家族3人で手を繋ぎながら、月を見た。

私は、日本から月を見上げながら、世界中の人たちに思いを馳せる。今、この同じ月をどこの誰が見ているのだろう。この月を見て、なにを感じるのだろうと考えてみる。

この先も出会うことがない人が地球の反対側にはいる。私が今こうして文章を書いている時も同じ地球で生きている人がいる。

同じように椅子に座っている人もいれば、紛争や飢餓に苦しむ人もたくさんいるはずだ。

言葉や文化は違うけれど、同じ地球に住み一員として、
私にはなにができるのだろう。

地球の問題は大きなものばかりで、SDGsの言葉が社会を駆け回っているけれど、少額の寄付やマイボトルのように私にできることはちっぽけで世界を動かしているようには思えない。

だから、世界を動かすことではなくて、世界を感じることから始めてみる。

私は月を見て、世界を感じる。
世界と向き合うために、月を見る。


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