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原則5:他者のためにお金を使えば、もっと幸せに🌈

原則5:他人に投資する Invest in Others

 恩送り。先輩におごられたから、後輩におごる。自分がしてもらって嬉しかったことを他者にするのは自然なこと。「他者のために」と思ってしたことはない…と語ったのは、Zoom「幸せになるお金の使い方」講座のMC あっきーこと和田氏だ。「だから、他人にお金を使う動機が分からない。なぜ、他人のためにお金を使うのか、その動機を知りたい」と首をかしげ、「他人にお金を使うのは、自分の優位さを感じたいから?」と疑問を投げた。

 優越感を得るためにお金を使う人もいるかもしれないし、そうでない人もいるだろう。いずれにしても、この疑問は本質をついている。というのも、「純粋な利他は在り得るのか?」という議論は仏教でも展開されているし、学術界でも多々、研究されている。そうした議論や知見については、noteマガジン『他者ファーストな生き方』で紹介しているので読んで欲しい。

 かいつまめば、経済学や哲学では純粋な利他は「在り得ない」と考えていて、心理学や神経科学では場合によっては「在り得る」と考えている。ダーウィンを源流とする生物学では、利他は種を保存するための「本能」であり、サスティナビリティつまり継続的な繁栄のための「智恵」と説く。

 ともあれ、利他より利己に傾く現代社会。特に、厳しいビジネスの世界では、利己的でないとやっていけないときもある。自分がまいってしまうこともある。が、コロナを超えるには、利己ではなく利他、ときには自己を犠牲にしても、他人に奉仕する生き方が求められている気がする。だから、「他者ファースト」という利他の実践について、動機や条件や学習法などをまとめたいと思うようになり、noteにマガジンを書き始めた。

 本題に戻れば、人は本能も含めいろいろな動機で、他人のためにお金を使う。大切なことは、動機がなんであれ、他人のためにお金を使えば幸せになれることだ。サイエンス・オブ・ハピネス(幸せについての科学)の様々な実験が、少額でも他人にお金をあげた人は幸福感があがると証明している。『幸せをお金で買う 5つの授業』の著者リズさんとマイクさんの教え子が、カナダのバンクーバーで行った「謎の封筒」のという実験は明快だ。

 道行く人に実験への協力を依頼し、現在の幸福度と電話番号を訊ね、「謎の封筒」を渡す。謎の封筒には5ドル紙幣とメモが入っていて、メモは2種類。ひとつには「明日の17時までに、自分への贈り物か自分のための支出のために5ドルを使ってください」、もうひとつには「明日の17時までに、誰かへの贈り物かチャリティや寄付のために5ドルを使ってください」と書いてある。翌日の夜、電話でインタヴューすると、他者のためにお金を使った人は、自分のために使った人より幸福感が高まっていた。

 また、リズさんとマイクさんは600人の米国人を対象に、「私的支出」対「向社会的支出」の比率と幸福度との関連を調べた。私的支出とは「家賃を含む生活費、謝金の返済、自分への贈り物」で、向社会的支出とは「他人への贈り物」「チャリティへの寄付」だ。大多数の向社会的支出の比率は10%に満たなかったが、その比率が高い人ほど、幸福度も高いことが分かった。この傾向は低所得でも高所得でも同じで、生計をたてるだけで精一杯な国においても同じだと、カナダとウガンダの比較研究によって証明された。

 なお、他者のためにお金を使うことで、より幸せになるにはコツがあると、マイクさんとリズさんは述べる。下記が、その3つだ。

・自ら選ぶ
・つながりを作る
・インパクトを与える

 ひとつ目の「自ら選ぶ」とは、プレゼントを誰にあげるのか、どのチャリティに協力するのかしないのかを自分で決められることだ。主体的に向社会的支出をしたときのほうが幸福感が増すというのは、なんとなく分かる。

 ふたつ目の「つながりを作る」とは、大好きな人や親しい人のためにお金を使って、つながりを作ること。幸福感が高まるのは言わずもがなである。

 最後の「インパクトを与える」とは、自分の支出が相手にインパクトを与えることだ。相手への貢献がより大きいとより幸せを感じられるという。なるほどと感じるところもある一方で、テラルネッサンスの鬼丸昌也さんの「私たちは非力だけど、無力じゃない」という言葉が思いだされる。

 ハチドリの小さな一滴では山火事は消せない。でも、みんなで注ぎ続ければ、山火事も消せる。ひとりではインパクトがなくても、みんなで心をひとつにすればインパクトも生まれよう。ひとりひとりが誰かのためにちょっぴりお金を使って誰かを幸せにし、自らも幸せになれば、社会も平和になりそうだ。利他か利己かではなく、利他も利己ものWIN-WINが、ポストコロナのサスティナブルな社会の在り方になれば、と願っている。

引用:「幸せをお金で買う」5つの授業
   エリザベス・ダン マイケル・ノートン(2014 中経出版)

     「ハーバード流 幸せになる技術」
   悠木そのま (PHPビジネス新書)

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