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玉ねぎ人間

寒い。寒すぎる。

語彙なるものを放棄した書き出しでたいへん恐縮だが、体裁を取り繕っている場合ではない。
大寒波襲来の今このとき、自宅のエアコンがご臨終したのだ。
寒すぎて歯の根も合わぬ。

まあしかし、猛暑と比べれば対処のしようもあろう。
脱ぐのに限界はあるが、着込むことはできる。

「本当にそうかな?」

またぞろ、癖の悪い妄想妖精が脳内で暴れだす。
でも固定観念を捨て去るためには、妄想も悪くない。
本当に、人間は脱ぐのに限界があるのか?


ひょっとすると、人間も猛暑に合わせて進化しているのではないか。
ぼくたち人間は既に玉ねぎのような構造になっているのかもしれない。
「嗚呼、暑いなあ」
そう思うと、いちばん表の殻が、ぺろんと剥がれていく。
着込んだ殻が、一枚、一枚と剥がれ落ちる。
ボクサーがサウナで汗をかいて体重を落とすのも、浮腫を取るためではなく進化した玉ねぎ人間だったからかもしれない。

つまり、暑い中にいれば外殻がどんどん剥がれていって体重も落ちる。
YES、猛暑の玉ねぎダイエット。
一枚、一枚、玉ねぎのように殻が剥がれ落ち、体が薄くなっていく。
ピアスがころんと、床に音を立てて落ちた。

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