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パーソルP&Tで「最もイカした仕事」はこうして生まれた〜名古屋チーム「図書館ARナビゲーションシステム」開発秘話〜

2019年10月、パーソルプロセス&テクノロジー(以下:パーソルP&T)のシステムソリューション事業部 西日本システムソリューション部 名古屋チームは「図書館ARナビゲーションシステム」を開発しました。このシステムは名古屋市のオープンイノベーションプログラム「Hatch Technology NAGOYA」に採択されたもの。様々なメディアでも取り上げられて大きな反響を呼び、パーソルP&Tが年間で最も「イカした仕事」を表彰する「IKATAI(イカした仕事大賞)」を受賞しました。

拡張現実(AR)の技術を使ったこのシステムが生まれた背景には、名古屋チームの熱い思いと、4年間にわたる紆余曲折の歴史があったそう。チームを率いてきた原田哲一さんに、これまでの歩みを聞きました!

<プロフィール>

原田哲一さん
システムソリューション事業部 西日本システムソリューション部 ITサービス開発グループ。入社以来ものづくりに軸足を置いてキャリアを形成。趣味はビリヤードの中でもさらにマイナー競技である、穴のないテーブルで行うスリークッションという種目に没頭。試合で勝てるようになるため、週末は(平日も?)日々練習中。
#ものづくり   #スリークッション   #マイナーじゃなくてコアww

サービス開発を目指して自主的に活動

ーー「IKATAI」受賞おめでとうございます。改めて、「図書館ARナビゲーションシステム」とはどんなシステムなのでしょうか?

「図書館中に張られたARマーカーにスマホをかざすと、現実空間に矢印が浮かんで探している本の場所までナビゲーションする」というシステムです。

道案内の一種なので、Googleマップなどで簡単にできるのでは?と思われるかもしれません。ところが屋根があると衛星の電波が届かず、GPSを使って自分の位置を特定することができないため、屋内にこうしたシステムを入れることはまだ難しい技術なんです。

そこで『ポケモンGO』のゲームでも使われている拡張現実(AR)という技術を使い、下の写真のバーコードのような「ARマーカー」を図書館内に設置して、これをスマートフォンのカメラに写すことでナビゲーションを可能にするシステムを作りました。

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ーーまるで近未来のようなシステムですね。どのような経緯で生まれたのですか?

名古屋チームはもともと技術への探求心が強く、ものづくりに対する情熱を心に秘めたメンバーばかりだったので、2016年から「何か新しいことはできないか」と自主的に集まるようになりました。

そこから、「新しいサービスを作ること」をゴールに、業務外の時間に隔週1回集まって、各自の得意分野や業務で身につけた新しい技術を紹介し合うようになったんです。

ーーサービスを作ることを目的とした自律的な情報交換の場を設けていたのですね。

はい。そんな活動を続けて3年が経った頃、メンバーの1人が「Hatch Technology NAGOYA」というオープンイノベーションプログラムを見つけてきました。名古屋市が行政課題の解決に向けて先進技術を活用した提案を募集するという内容で、これは新技術が扱えて面白そうだと思い、提案してみることにしました。

「図書館ARナビゲーション」のアイデアは、ブレストをする中で生まれたものです。『ポケモンGO』で遊んだことのあるメンバーが、「拡張現実の技術を使えるのでは?」と気づいたことからアイデアが広がりました。

提案してから2ヶ月後、名古屋市から私たちの提案が選ばれたと連絡がありました。そのときは本当にびっくりしましたね。そこから会社にも許可を取り、業務時間内で本開発を進めていきました。

困難を乗り越え、実証実験へ。「図書館に未来がきた!」の声に胸熱く

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ーー先進的なシステムですし、開発途中でさまざまな課題があったのではないでしょうか?

もう本当にいろいろありましたね(笑)。一番最初に困ったのは、僕らが初めに試したARマーカーが50cm以内の距離からでないと認識できないとわかったときです。スマホをARマーカーにものすごく近づけないと矢印が表示されないので、それではナビゲーションができないんです。

そこからいろんなARマーカーを試したり、技術的にも工夫をしたりして、最終的には数m先からでも認識できるようになりましたが、最初にそれがわかったときはさすがに青ざめましたね(笑)。

ーー開発が決まったあとですから、それは冷や汗ものでしたね……。

ハプニングはそれだけではありません。本と配置場所が紐付いたデータベースを図書館からいただこうと思っていたのですが、職員の方と話すうちにそんなデータベースは存在しないことがわかりました。どこにどの本があるのかは、職員の方の頭の中にだけある状態だったんです。

実証実験する範囲の本は7万冊。そのデータベースを自分たちで作らなくてはなりませんでした……。

ーーまさか、7万冊のデータベースを作ったのですか?

はい。ただ、書籍の正確な場所はわからなくても、「この棚のここからここまでにある」ということは、背表紙のラベルに記載されている日本十進分類法(NDC)の分類によって識別できることがわかったので、開発と並行して、その情報をデータベース化しました。

1冊1冊をデータベース化するよりは楽でしたが、アナログな作業をみんなで頑張りましたね(笑)。紆余曲折を経て2019年12月には一通り完成し、名古屋市の鶴舞中央図書館で実証実験を行いました。

ーー周囲の感想はいかがでしたか?

提案した段階では、先方の反応は「ふーん?」という感じで、あまりイメージが湧いていない様子で(笑)。でも実際にできたものをご覧いただくと、現実空間に矢印が浮かんでいるのはかなりインパクトがあるようで、市のご担当者や図書館職員の方は「おおー!!未来がきた!」と驚いていらっしゃいましたね。その反応を見たときは本当に嬉しかったです。

まさかの「IKATAI」受賞! 4年間の活動が報われた瞬間

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ーー今回、「IKATAI」を受賞する自信はありましたか?

実は……全くありませんでした。全部で4回ある審査のうち、自分は3次審査のプレゼンテーションを担当しましたが、他チームはプレゼンテーションのクオリティがすごい中、自分はほぼ棒読みで……(笑)。

「確実に落ちたな……」とチームで話していたのですが、翌週にファイナル進出の5チームに選ばれたと連絡が来たときには腰を抜かすかと思いました。

ーーその5チームの中で最優秀の大賞に選ばれたときはどんな気持ちでしたか?

もう信じられないという気持ちです。ファイナルも3次審査同様、他チームのプレゼンテーションに圧倒されていましたからね。

でも今回はプロジェクト自体が良いものでしたし、内容で勝負して勝つことができたので、とても晴れやかな気持ちでした。

ーー今までの活動が報われたのではないですか?

本当にそう思います。名古屋チームの取り組みは2016年からずっと続けてきていて、実はその過程では結構くだらないもの……というか「ビジネス的な勝算がない」ものも、色々作ってきました。

郵便が届いたことをビルの高層階のオフィスに通知するシステムを作ったときは、会社の人に「そんなサービスにお金出す人はいないのでは」と言われましたし、地方の農家のために猪を撃退するシステムを作ったときは、市役所に持っていってもほぼ門前払いでしたし……(笑)。

落ち込むことは何度もあったのですが、その積み重ねがあったからこそ、今回「Hatch Technology NAGOYA」に選ばれ、「IKATAI」も受賞できたんだと感じています。コツコツやれば実を結ぶんだということがわかり、自信がつきましたね。

目指すは2つ目の実績。「一発屋じゃないことを証明したい」

ーー「図書館ARナビゲーションシステム」は今後どのように展開される予定ですか?

名古屋市での実証実験は一旦終了したので、今後は他の図書館でも使ってもらえるように、サービス化に向けて開発を進めていく予定です。そもそも名古屋チームの立ち上げ時からの目標が「サービスを作ること」だったので、今回出た芽をきちんと育て実らせたいですね。

また、今回のシステムは、「屋内ナビゲーション」の文脈でさまざまな場所で応用できると思っています。例えば空港に設置すれば、日本語がわからない外国人の方も土産物店まで簡単にたどり着けますよね。倉庫での商品管理にも活用できるかもしれません。幅広く展開していきたいです。

ーーこれから大きく成長していきそうなシステムですね。最後に、原田さんご自身の今後の目標を教えてください。

名古屋チームの取り組みを継続して、2つ目の実績を作ることです。今ヒットを1本打ったところだと思っているので、もう1本ヒットを打ち、一発屋ではないことを証明したいですね。

強気なことを言いましたが、実は私がゼロから新しいサービスを生み出すフェーズに携わるのは、今回が初めてなんです。新たに勉強しないといけないことも多いですが、それも楽しみつつ、エンジニアとして成長していければと思っています。


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