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立花隆 「思考の技術 エコロジー的発想のすすめ」

ほぼ半世紀前に書かれた初版がほぼそのままに再版された、エコロジー的な視点で自然と人間の関係を捉えようとする本だ。

目からウロコが落ちる、腑に落ちる。頭がスッキリする。どんどんわかって、わかるということは気分がいいことだと教えてくれる。

知的な本とは、何か大事なことが本当に読者に伝わる本で、難しいことが学者仲間だけに伝わる本は閉じられた輪の中の学術書でしかない。

ここに、油の乗った若き立花隆氏一流の、読みやすい文章で的確な例を散りばめて書かれている生態学的な考えは、今でも通用するし、今こそ重要になっている。

この本の言いたいことを一読者の私の中で消化して言葉にしてみると、

「自然とは人間にはわからない畏怖すべきものだ。

科学はそのわからないものの複雑な事象の一つの側面を掘り下げて理解していく分野で、近視眼的だ。近視眼的な形態を取らないと、ある事象を深く理解することは不可能だからであり、科学の学問的なアプローチ自体は正しいし、そのおかげで私たちの文明は飛躍的な進化を遂げた。

けれども、自然の全体は科学によって把握できるものではない。把握はできないということを念頭において、それを賢く利用して人類が生き残るためには、それぞれの科学の専門分野を俯瞰し、統合して「生態学的(エコロジー的)」に自然や事象をとらえることが重要だ。

自然は生きていて有機的で、常に進化しており、その進化の方法は研究によって解明されるかもしれないが、それが将来どのように変わっていくかというその様は、人間には大きすぎて測り知れない。人間はその自然のほんの一部であり、その中で生かされている存在でしかない。

そのことを踏まえたうえで、自然と人間文明とのバランスをとっていかないと、人類という種は自滅する。人類が地球環境を破壊したとしたら、それは人類(とそれに破壊された多くの種)の滅亡を意味する。しかし、人類がある時期の恐竜のように消滅しても自然は困らない。その後、地球上には然るべき生命体が入れ替わり立ち替わり生き、繁栄していく、そういう連綿とした生命の営み、それが自然だからだ」

ざっと要約するとこんな感じだが、さまざまなデータや比喩やディテールが、すごくおもしろい。

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