MITIコーディング研修2022
MITC(Motivational Interviewing Training and Consulting)によるMITIコーディング研修(デニス先生)に参加しました。以下参加メモです。聞き間違いもあるかもしれませんが、ご容赦ください。
1日目
MITI4の英語版と日本語版
https://casaa.unm.edu/download/MITI4_2.pdf
治療のフェデリティ(忠実性)を測るために開発された。
コーディング・ツール一覧
10.MICA
3版から4版へ、コンセプトが変わった。トレーニング寄り。
CBTとMIの関係。CBTは問題解決に焦点。MIと組み合わせることで、多様性が生まれる。そこを評価するのがMITIだが、単純にMITIの点数が高い方がいいということではない。CBTの評価は、MITIには表れない。
1セッションの1コーディングは、コーディーの実践の全体についてほとんど何も示さない。そのセッションのその部分のことでしかない。
全体評価
引き出す過程の評価に使われる。他の過程ではない。変化に向けて動き出した最初の15分間を評価する。
ビルは1~7を維持しようとしたが、1~5になった。区別ができなかったため。
Technical Globals 技術的全体評価
第4版から登場。研究に基づく。チェンジトークの促進が重要。維持トークが出てきたら、何か対処をしないといけない。
Cultivating Change Talk チェンジトーク促進
カウンセラーの応答の評価であり、クライアントの変化の度合いの評価ではない。クライアントの変化という重要な点は点数には表れない。
Softening Sustain Talk 維持トーク減弱
維持トークが無いと点数が下がるという問題がある。
Q:チェンジトークについて話すために、維持トークの情報を集めるのは?
議論があるところだが、基本的にはやらない。以前は変化と変化しないことのメリット・デメリットを挙げたりしたが、MI第3版からはやらない。クライアントの決意は変化しやすい。変化したい理由を聞いた方がいい。客観的な分析や観察は、問題や維持トークに偏りがち。
チェンジトークの重要性に関する研究(メタ解析)
関係性の全体評価
カール・ロジャーズの開発した尺度を発展させて開発されている。
パートナーシップ:クライアントを専門家とみる
共感
コーディング練習
専門家が一方的に喫煙の危険性を伝える面接。
維持トークが少なかった。なぜなら、治療者が強引に維持トークを出させなかったので。これは大きな問題。
共感的な面接だが、ほぼ維持トーク。
一番の問題は、維持トークの減弱をしていないこと。維持トークを聞いて、深堀している。どうして1じゃないか、それは、大きな問題ではない。1でもいい。
共感的で、パートナーシップを維持しながらチェンジトークに焦点を当てた面接。
Q:3人のコーダーのコードはどう違った?
忘れたけど、良く起こるのは、同じ人がコードしても、その時々で変わる。
MITIの目的は、良い面接や悪い面接を判別することではない。あくまで、MIに標準的な面接の判定。
Q:権威性とパートナーシップの関係は?
権力の差は、必ずしも評価の対象ではない。大事なのは、協同。MITIは、ニュートラルなカウンセラーの評価には向かない。MIは、積極的な技法である。
Q:パートナーシップが5だったが、許可なしの情報提供をしていたように見える
行動カウントと全体評価は、それぞれ違う部分を見ている。全体評価は、あくまで、全体評価。それとは別の視点として、行動カウントがある。
Q:主体性のサポートによってパートナーシップが上がると思うが
主体性のサポートは、行動カウントに移った。確かに、パートナーシップを表すが、そこだけではない。目標設定など、全体をどう協同的に進めているか。多くの側面がある。
2日目
行動カウント
情報提供:ニュートラル Giving Information: Relatively Neutral
一般的な心理教育やフィードバックは基本情報提供
情報提供は必ずしも説得にはならない
ここがMITIの難しい所。面接者の頭の中は見えない。
Q: クライアントの質問に答える場合は?
A: 情報提供であり、基本的には説得ではない。しかし、説得になることは可能。聞かれたこと以上のことを答えるような場合。
Q: 情報提供は基本的にクライアントの問題に関わると思うが
A: 「あなたの検査結果は基準を上回っています」は、改善しろということなので「説得」。「一般的な基準についてお伝えしましょうか?実は、基準は、XXで、あなたの結果は基準を上回っています」は、許可を得た説得。
説得:バイアスがかかっている Persuation: Relatively Biased
情報提供だけでなく、面接者のクライアントを変化させようという意図が含まれている
MI一致の文脈では、情報自体が勝手に働く。面接者が情報を使用する必要はない。情報を使って何かをしようとしたら、説得の文脈になりやすい。
Q: 情報提供の後にあなたの選択ですと言ったら?
A: 情報提供と協同の探索。もしくは、情報提供と自律性の尊重もありうる
特に習いたての大きな間違いは、コードには正と否があり、私はどちらかを知らないといけないということ。コーディングは人間の行動、特に、言語についてのこと。不明確な部分もある。
MITIは、MIの理論に沿っているかどうかを判断するために使えるツールであり、そのためだけに十分なツールである。
すべてのコーディングに100%の確信を持つ必要はない。
例えば、単純な聞き返しと複雑な聞き返しの区別は、理論として作られたもの。その間にはグレーな部分がある。3秒考えて判断がつかなければ単純でいい。コーディングシステムとしてあいまいさに対処できるようになっている。
コーチングの学習の初期にはフラストレーションを感じるもの。新しい言語の習得だと思って。
質問 Questions
1回の発言に対して1つのQしか与えない
単純な聞き返し Simple Reflections
複雑な聞き返し Complex Reflections
行動カウント演習
SRが途中からQになるとコードはQ。ただし、Qが形式だけのもので、基本的には聞き返しや直面化だったら
発話の形式が特定の反応の
Q: 説得と直面化は1回の発話で両方出ることもある?
A: 理論的にはありうるが、経験はない
この道具は、学部生向け。シンプルで、信頼性の高い方法を目指している。考えすぎない方がいい
直面化のようなものでも、主な機能が聞き返しであれば、直面化とはコードしない
説得と聞き返しは同時にコードしない
「私は専門家ではないが…」は、説得に対する許可として不十分
直面化はMI不一致
説得はMI不一致だが、「説得的」なのが必ずしもMI不一致とは限らない
単純と複雑で迷うなら大体単純
是認 Affirmations 【AF】
ただのチアリーディングではない。チアリーディングは、高いMI一致にはならない
連携関係の探索 Seeking Collaboration【Seek】
クライアントの知識をたずねたり、喚起的な質問は、Seekにはコードされない
自律性の協調 Emphasizing Autonomy【Emphasize】
MITIでは出にくい
3日目
Q: 過度なアファメーションをどのようにコードするか
いずれにもなりうる。聞き返しの場合もあれば、AFで評価する場合もある。
Q: 複雑なAFとシンプルなAF
シンプルなAFはシリアルの砂糖のようなもので、悪くはない。しかし、AFは過剰になると効力を失いがち。研究レベルではAFの定義が幅広く、シンプルなものでも効果があるという報告もある。コーディングでは区別することに意味がある。AFの定義は初期と今とでは違っている。初期はpreize も含めてAFとしている。
Q: 聞き返しで、I seeやI mean, I know を入れても聞き返し?
A: コーディングではそう。ただし、MIとしてはよくない。MITIは良い聞き返しと悪い聞き返しを区別できない。
NO 5 のコーディング
※NO 5 がどれに該当するかわかりませんが、基本的には、公開された音声とコードを使っているようです。
SEEK
・許可を得る
・どこから始めるか聞く
・何を知っているか聞く
・どう思っているか聞く→微妙、文脈による
・もともとは許可を伴う説得だったものそれが拡大された
PER
・説得的な言葉がいる
PER with
・私ならこうする
Emphasize Autonomy
・明確な言葉がいる
Giving Invormation
・情報提供に限らない
・構造化の発言も含む
NO 8 のコーディング
Q: ビデオは使う?
MITI自体はビデオに対応していない。音声だけで拾うのは難しいかもしれないけれど、練習することができる。ツールのデザインです。
EA
・We でなくても、You でもいい
・CRはEAに当たればEA
・control, decide, up to you
Q: EAやAFはCRにカウントされる?
されない。EAやAFが多いときは、CR/SR比, R/Q は気にしない。
Q: 質問のもとになる聞き返し
質問に含まれる内容以外に聞き返しに意味があれば、両方とる。単純な聞き返しは質問に含まれやすい。
Day 4
Q: ストラクチャーとSEEKの違い、SEEKになるバーは?
ストラクチャーはコードしない。単に「話そう」ではなく、あなたの話を聞きたいと思っているというような、協同を求める追加の情報がある場合にSEEKが入る。
レコーディング練習の説明
2人組で10分~15分レコーディングし、自分でコーディングする。MI不一致でもいいのがコーディング練習の楽しい所。
サマリースコア
1つのスコアでMIかどうかを判断するものはない。様々なスコアの組み合わせで評価する。
いずれの指標でも、エクセレントな実践を評価することはできない。悪いか、ほどほどか、いいか。
テクニカルな全体評価は、チェンジトークと維持トークの評価であり、MIの評価ではない。
% CR の割合の重要性を示すエビデンスは少ないが、長年エキスパートに支持されている指標。
R:Q は、クライアントや文脈による。エキスパートがやっても、1:1になることがある。しかし、コーチングで最も多い指摘はRを増やして、Qを減らすこと。
Q: ライブコーディングの時は、どうコーチングしますか?
ライブインタラクション用のブリーフMITIがある。
コーチング
点数を与えることを怖がらない。大事なのは、点数を説明すること。例えば、情報提供が多いために、協同の点数が下がってますね…
フィードバック・サンドイッチ
とてもいい所をサンドイッチのパンにする。いい部分で挟んで、ネガティブなフィードバックをする。ネガティブなフィードバックは1つだけ。強みに耳を傾ける。
MI一致か不一致かどうかのフィードバックが重要。優先。
Q: ネガティブなフィードバックをたくさん聞きたい人もいるようだけど、どうする?
もちろん、たくさんネガティブなフィードバックをすることもできる。また、基本的には、どのようにトレーニングを受けたいかを、トレイニーに聞くのは良いこと。しかし、脳はネガティブな情報に気づきやすくできている。ネガティブな情報を求めたらきりがない。ネガティブを集めて、自責の波に埋もれる手助けをしたくはないと思う。また、たくさんネガティブなフィードバックを受けても、それらすべてに取り組むことはできない。トレーニングで大事なのは、強みを育てること。このような話を、協同的に行っていくといい。
グローバルの合意の基準は、目的により異なる。SRとCRの区別はあいまい。ディスカッションに時間をかけすぎない。
グループワーク
15分程度の音声を聞いて、サマリーシートを完成させる。
"Maybe he’ll take my kids"
音声:https://casaa.unm.edu/download/Maybe%20he'll%20take%20my%20kids.mp3
コード付きスクリプト(英語)
https://casaa.unm.edu/download/Maybe%20he'll%20take%20my%20kids%20coded%20transcript.pdf
※ちなみに私のグローバルはCCT: 2, SST: 1, PAR: 2, EMP: 1。ネイティブ2人がオール4で合意していて、めちゃ恥ずかしい気持ちだったが、終わってみれば、私のが近いやんけ!1と5はめったにないという基準を恥ずかしがり損だった。
2回は聞かない。ただ正しい答えがないだけ。このツールは、1回の印象で評価するようにできている。
グローバルで1の違いは重要ではない。
You won’t be wrong! You won’t be wrong!
間違いということはない!間違いということはありません!
Q: コーダー間で結果が違ったら?
そういうことは普通にあります。そういうものです。違いについてディスカッションすればいいだけで、何か1つの明確な答えを出すものではありません。
Q: 大学院では?
5日間の研修で、1日MITIを教える。セルフ・コーディングもするが、正式なコードというよりは、振り返り。コーディングの研修の時間が少ないのは、単に時間がないだけ。
Day 5
Q: マニュアルを読み会しましたが、マニュアルは常に手元に必要なようです。
その通り。私もそうしています。
Q: SST が難しい。維持トークが無いこともあり、たいてい4をつけています。
それが、この指標の問題です。維持トークが無くても評価しないといけない。
Q: メタファーはどうコードする?聞き返しか、情報提供か…
いずれにもなりうる。聞き返しになることが多いかもしれない。
全般的なこととして、正しい答えはなく、迷ったら、低めのコードにする。ウェブサイトに掲載されているコードを使って練習することもできる。
※日本語のも作らないとな
実はMIはマインドフルネスのトレーニングになると思っていて、中でもコーディングは、とてもマインドフルネスを必要とする。
20分以上を使ってしまうと、妥当性はない。短い時間でも可能かもしれないが、研究がない。研究の目的では、1回の面接から、無作為に20分間を抽出する。しかし、コーチングでは、コーチ―に選んでもらうことができる。いい所を示してもらえば、ベストなスコアを見ることができるでしょう。
短い説明(論文より)
前回の録音はあなたのものです。相手の方に断れば、色々な目的に使えます。私たちが標準クライアントを使うのは、録音を自由に色々な目的に使えるようにです。
デモカウンセリングのコーディング
Q: コーチとしてチェンジトークに気づいてしまい、コーディングのために聞くのが難しい。
そうですね。カウントとコーチングのためのノートテイクを同時に行わないといけない。そのずれを確認するためにも、グループで比較するのは良いと思います。
グループ・ディスカッション
Q: 全体評価で、グループがハイとローで2つに分かれた。
コーチングの時に言うのは、客観的よりも、高く評価するようにしている。公式なコードではないので、よりポジティブに取るようにしている。
フィードバックサンドイッチは?
グループより:
自己評価
個人的な経験でいうと、自己評価のスキルはとても重要。客観的に見る練習になるし、それができれば、自分でMIの能力を高めることができる。
重要なのは、コンパッションを持つこと。目的はおしりをたたくことではない。ストレングスに目を向ける。自分にコンプリメントするのは、簡単なことではないかもしれないけれど、自分の友達になることは重要。特に今回は、失敗するようにインストラクションされた。
30分間で、自己評価をする。
振り返り:
・いい聞き返しがあったのだけど、最後に、isn't it? と、質問になっていて、おしかった
・維持トークを聞きすぎていて、チェンジトークにフォーカスできていないことが分かった。
大事なのはチェンジトークだけじゃない。価値やストレングスについて言及することに意味がある。共感的に、クライアントのこの部分について、深めるのが重要。
・AFについて、クライアントの強みは理解できていたし、その点を指摘してはいたが、聞き返しどまりだった。「条件によっては、~できることはあるんですね。そういった能力はすでにお持ちということですね」ぐらい言えば、AFになったか。
・PAR/EMPとCCT/SSTでは、後者の方がグローバルの点数が高かった。丁寧な聞き返しを心がけ、自律性の尊重を暗に前提とするだけでなく、明言することで、よりMIらしい面接になるし、共感も伝わる気がする。
・聞き返しをあまり意識しなかったこともあり、質問が多い。相手の発言に対して、相づちからすぐに質問に行く。それほど悪いとは思わないが、共感的でない感じはする。また、聞き返しが「~なんですね」で終わるので、質問のように聞こえる。「~だと」、「~した」、「~な感じ」、「~と思う」など、語尾を意識すると、聞き返しらしい応答になるだろう。
6日目:ライブコーチング
正式なコーダーになるには、一定のトレーニングが必要。また、正式なコーディングでは、事前にダブルコードで10回程度行い、信頼性の根拠を準備する。その際、ランダムサンプリングを行うことが重要。
MITI自体の信頼性や妥当性の科学的検証は済んでいる。
ペアになって、信頼性を検証することが、効果的なコーディングの練習方法。
グローバル評価の Inter class coreration が低い場合(例えば、0.4)、合意のパーセント も一緒に示す。低い行動評価が低いときもICCは低くなりがち。
SRとCRの信頼性が低くなりがち。
練習以外で、トランスクリプトを使うことは推奨されない。なぜなら、MITIは音声に基づいて行われるものなので。しかし、行動カウントの特定の部分について議論する際にトランスクリプトを使うことはありうる。トランスクリプトは間違っていることもあるし、雰囲気がつかめない。
Q: MIのコーチングの効果についての研究はある?
実践家の行動を変えるのは、クライアントの行動を変えるよりも難しい。コーチングはクライアントに対する実践と同じで、継続していく必要がある。コーディングとコーチングを一緒に行うことで、コーチングに構造を与える。これらを一緒に行うことで、スキルを高めることができるという研究がある。
Q: フィードバックを与えすぎるのは害になりうる?
なるかもしれない。トレイニーを圧倒することになる。やる気を失わせてしまう可能性があって、それは良いことではない。
MITIを用いたコーチング
※毎月MIの練習会やってます!こちらのメーリスにご登録ください。
個人的な振り返り
6回終わったー!自主練習会には参加できませんでしたが、6回はちゃんと全部出ました。
今後やること:
・MITI4を再度読み込む
・ゴールドスタンダードのあるコードで練習する
・コーディングの学習グループを作る
・日本語のゴールドスタンダードを作る
さっそくMITI練習用のSlack作ったぜ!MITIの勉強仲間を探すためにご活用ください。
私は次のような練習グループを企画します。
公開されている英語の音声、スクリプト、コードを使います。
(下の方の12本)
2週間くらいの期間を決めて、英語の音声(10分程度)を聞いて、自分なりのコーディングをする。
次の1週間でディスカッション。ゴールドスタンダードと違うところをすり合わせる。
1週間休憩。
1~3を12回繰り返す。
最終的には、これらを日本語に翻訳して、日本語版のゴールドスタンダードコードを作りたいという願望もあります。
(同)実践サイコロジー研究所は、心理学サービスの国内での普及を目指しています! 『適切な支援をそれを求めるすべての人へ』