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デザイン思考と職人イズムを詰め込んだスペシャリテを作れるくらいに、誰よりも好きであれ

緊急事態宣言が1ヶ月延長された。テイクアウトやデリバリーへの移行が余儀なくされる中、シェフはsioが持つテイクアウトのロジックを詰め込んだnoteを公開した。

鳥羽は、考えられうるすべてを詰め込み、テイクアウトやデリバリー向けに”冷めても美味しい”を目指して設計を続けた。そして、設計図の精妙さが生きたメニューができあがった。チキントーバーライスやHEY!バインミーはまさにそう。

僕らがレストランであり続けるためにブラッシュアップしていく必要がある。
自分たちが作っている料理に対して、考えをまとめていきたいと思い、整理していくとApple丸亀製麺にヒントがあった。

Appleの思想を取り入れたレストランを目指す

AppleのスペシャリテであるiPhoneは、細かなアップデートを繰り返す。

3D touchが手に馴染まず、イヤホンジャックの廃止に苛立ったものの、Face IDに驚き、カメラの性能はもはやデジカメいらずである。賛否両論あるだろうが今もなお歩みを止めず走り続けるデザイン思考、生活の豊かさを彩る最高のコンピュータを作るための飽くなき探究心。学ぶべきところばかりである。

自分たちも料理に対してこれだけのこだわりを持ち続けていかなければならない。

さらに、言わずと知れたAppleの創業者スティーブ・ジョブズは、こう言っている。

偉大な大工は、誰も見ないからといって、床裏にひどい木材を使ったりはしない。

僕たちの仕事でも同じことが言える。
にんにくのみじん切り、サラダの葉物やマイクロハーブの掃除、パスタの長さを揃えたり必ずトングではなくパスタ箸で麺を傷つけないように優しく扱ったり。

気づかないであろう、は自分の物差しだ。そんな仕事に感動は生まれない。

昨年、sioを通じて感動の仕事と出会った。広島が誇る老舗メーカーのマルニ木工のお話を手短にさせていただきたい。(本当に大好きすぎるので詳しくはまた今度書かせていただく)

マルニの代名詞である『HIROSHIMA』はネジ穴が一つもない。パーツのつなぎがわからないほど精巧な磨きによって手にストレスがまったくかからない。ずっと触っていられる、どんな体制でも包み込まれる。思わず、あぁ…と声が出る。浴槽の中に入ったかのような体験が、たしかにそこにあった。感動を生む仕事は細部へのこだわりの連続だ、と僕たちは知っている。

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参考:マルニ木工 Instagram https://www.instagram.com/maruni_official/

美味しいを越えた感動を生むには、とにかく細部にこだわることが重要だ。僕たちもサラダのカット一つ一つに、こだわりを持っている。

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口を大きく開けて食べる必要がないサイズか?フォークで刺せるか?スプーンですくった時にいくつかのパーツが乗るか?

サラダは、水分が弾け方や食感のリズム、口の中での味わいの重なりを作れるかどうかが重要である。サラダを始め料理のすべては、カットから始まる。


『職人を育てる』丸亀製麺のこだわりは、僕らにこそ

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ここのうどんは、生きている。

これが丸亀製麺のブランドコピーだ。丸亀製麺のホームページには、このコピーを裏付けるこだわりを因数分解しながら説明している。

①″国産小麦″にこだわる。
②″打ち立て・生″にこだわる。
③″確かな腕前″にこだわる。
④″おいしいだし″にこだわる。
⑤″茹でたて″にこだわる。

このこだわりが丸亀製麺のうどんを安定しながらも抜群に美味しい裏付けである。特に僕らが感銘を受けている部分はこちらである。

国内外で1,000店舗以上を構える丸亀製麺には、
ただひとり「麺匠」と呼ばれる達人がいます。
麺匠・藤本智美は、店舗を巡回し、麺の打ち方、茹で方、提供する麺の鮮度などを確認。
スタッフへの技術指導を行い、丸亀製麺の味を支えています。
シンプルなだけに確かな腕前が求められるうどん。
製麺を担当する職人は、
藤本からうどんとの向き合い方を学び、
日々、腕に磨きをかけています。

麺匠の存在が、1000店舗以上の丸亀製麺にいる一人一人の職人たちにイズムを継承し目指すべき美味しさについて指し示している。イズムをどうやって継承していくか、はこれから店舗が増える中で取り組むべき大きな課題であるが、僕らなら出来ると信じてやっていきたい。

デザイン思考と職人イズムを持ったレストランに

僕らは、Appleと丸亀製麺を掛け合わせたようなファミリーレストランを目指している。イズムを理解した料理人を育て上げ、デザイン思考と職人魂を持った料理人が全国、いや全世界に飛び立ち、料理やサービスの一つ一つに僕らのイズムを詰め込み、届けきる。

sioは、僕らのイズムを体現する場所。
o/sioは、僕らのイズムで一緒に遊ぶ場所。
パーラー大箸は、イズムとお客様の接点となる場所。

各店舗のあり方を考える中で、僕たちは今なぜ料理を作り美味しいを届けているか、常に考える必要がある。

すべては、幸せの総和を増やすために、であることを忘れてはいけない。

iPhoneと同じように、丸亀製麺のうどんと同じように、o/sioやパーラー大箸のサラダは自分たちのイズムを詰め込んだ謂わばスペシャリテだ。そんな僕らが愛するテイクアウトにおける究極のスペシャリテが、ベトナムのサンドイッチを進化させた『HEY!バインミー』である昨年の緊急事態宣言下において開発され1本で手軽にレストランの味わいを楽しめる、とたくさんの反響をいただいた。僕らを知って体感いただく最高の名刺となった。

そして、僕らは料理をさらにアップデートし続ける。

今年発売を開始した新作テイクアウト・デリバリー向け商品が #ドッグバインミー である。

ドッグバインミーだが、HEY!バインミーのさらに上に行く。

メインは、ソーセージ。しかも2本だ。弾ける食べ応えを考えた時、1本では物足りなかった。

全体に燻製香とシャープな酸が特徴だ。ホットドッグに欠かせないマスタードは、プチプチした食感が特徴のタスマニア産。異なる酸の気持ち良さとして機能するスイートレリッシュ。

時折口の中に入ってくるりんごジャムの甘さやレバーペーストの風味、ル・ルソールさんのソフトフランスパン、なますの酸味、トレビスの苦味、パクチーの香りは受け継いだままだ。

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食べ進めるたびに味わいが変わるのは頬張る中で、それぞれの具材における含有量の変化や味と香りの感じ方に時間差があるからであろう。

1本を食べるとまるでレストランで食事をしたような未開の味わいとの出会いが生む、食べる楽しさがある。

こんなに美味しいホットドッグは今まで食べたことがない、サンドイッチの概念を崩す一皿になっている。

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ドッグバインミーは、僕らが大事にしている”気持ち良さ”が詰まっている。気持ち良さは、細部へのこだわりと精巧な設計図が作る。

さらにそれだけではなく、人は抜群の気持ちよさに触れると高揚し、楽しいという感情すら作り上げる。

美味しいの先にある感動を生み出す。すると、それに付随して様々な感情を作り出し、より人の心に残りやすいのではないだろうか。そんな体験こそがブランドを作り上げるのではないかと思う。

美味しさの中にある”気持ち良さ”を作るために

美味しさにおいて、さまざまな気持ち良さがある。

iPhoneのストイックでシャープなデザインの触り心地の気持ちよさ。

丸亀製麺のこだわり製法によるのどごしの気持ちよさ。

ドッグバインミーの複雑な味わいながらも異なる酸による気持ちよさ。

気持ち良さを感じると人は高揚し、楽しさを覚える。僕らが与えたいのは幸福感であるが、それのフックとなるのは、気持ち良さかもしれない。
気持ち良さは、細部へのこだわりから生まれる。なぜなら、少しでも違和感があればそこに人は引っ掛かりを覚えてしまう。

全てをなめらかにするのか?
大きなストレスに対してスパッと切るのか?
抜群のバランスの中で点で切るのか?
色んな気持ち良さが考えられるがそこにはこだわり抜くことが大事で、そのためには精巧な設計図が重要であり、それを作れるデザイン思考と職人イズムが必要である。レストランの現場でやり続けることは、とても難しいことだ。それは分かっている。

だけど、だからこそ、やめられない。


スティーブ・ジョブズはこう言った。

偉大な製品は、情熱的な人々からしか生まれない。

僕らも、そういうチームでありたい。

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