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「美しさ」の科学③

個人の性格特性によって何を美しいと感じるのかは変わりますが、

多くの人が美しいと感じる形態の要素があります。

①対称性・黄金比

Di Dio, C. et al.(2007)の研究では、美術批評の知識が全くない人たちに、古代ギリシャやローマ時代の彫刻画像を変化させて、身体像を自然な状態から崩したときに脳がどのように反応するかを調べました。

古代彫刻の面白いところは、様々な部分に黄金比(1:1.618)が隠されているところです。

この黄金比が微妙に崩れた画像と、黄金比が保たれた画像を見てもらいました。

その結果、写真を見た人は画像の違いを区別できなかったようですが、

黄金比を保たれた画像を見た時は、黄金比が微妙に崩れた画像を見ている時よりも、

脳の「島皮質(とうひしつ)」という部位の活動が高まることが分かったようです。


そのため川畑(2011)は、黄金比には、誰しもが美しいとされる客観的な美的価値があり、誰しもが美しいとする生物学的な信号となっている可能性があると述べています。

②まとまりのよさ

人はバランスの良いもの、まとまりのあるものに対して、
無意識に目を向ける性質があります。

この有名な理論として、ゲシュタルトの法則というものがあります。

ゲシュタルト(Gestalt)というのは、「全体性を持ったまとまりのある構造」を意味するドイツ語の言葉です。

例えば、互いの距離が近い色・形・向きが同じ同じ方向に動く左右対称のものなど、そういうものは「1つのグループ」として認識されやすいというものです。

日本の神社仏閣などに訪れても、灯籠、狛犬、本堂、拝殿・本殿など、左右対称に配置・デザインされているものがたくさんあり、そこには調和があり、美しさを感じられます。

そういう「まとまり」を意識しながら、神社仏閣を巡ってみるのも面白いでしょう。

③「美」の脳内メカニズム

Kawabata & Zeki(2004)は美しさの評価に関わる脳内のメカニズムを検討しました。fMRI(機能的磁気共鳴画像法)という技術を用いて、様々な絵画を観察して美しさを判断している時の脳の活動を調べました。

その結果、「美しい」という判断と「眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)」中央部の活動が関連し、「醜い」という判断と左脳の感覚運動野の活動が関連するという結果を示しました。

別の研究ですが、Kim H et al.(2007)では、2つの顔画像からより好きな顔を選ぶという課題を用いて脳の活動を検討しました。

その結果、「側坐核(そくざかく)」が活動し、引き続いて「眼窩前頭皮質」が活動することが、好みを選ぶことと関連していると報告しています。

この「側坐核」「眼窩前頭皮質」は報酬系(reward system)(※)という脳の神経回路の一部として位置づけられており、快の情動体験と密接に関わっていることが知られています。

※報酬系という脳のメカニズムについては、我々がパワースポットに惹きつけられる要因として重要なものだと考えられるので、別の記事で詳しく書かせていただきます。

「美しい」と感じることは脳の中では快感につながっているため、人はそれを求めるようになります。

ヒトに「美しい」と感じささせることが出来れば、ヒトをそこに惹きつけ、繋ぎ止めることができるのです。

写真:龍安寺 京都

引用文献)
・Di Dio, C., Macaluso, E., and Rizzolatti, G.(2007).
The golden beauty : brain response to classical and
renaissance sculptures. PLoS ONE 2, e1201.
・川畑秀明(2011)美の認知, 認知神経科学(Vol.13, No.1, pp84-88)
・Kawabata H, Zeki S.(2004)Neural correlates of
beauty. Journal of Neurophysiology 91, 1699-1705.
・Kim H, Adolphs R, O’Doherty JP, Shimojo S.(2007) Temporal isolation of neural processes underlying face preference decisions. PNAS, 104, 18253-18258.

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