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生成AIを使った医療向けサービスやYouTube発信で世の中を効率化~pipon北爪聖也さんインタビュー~

生成AI活用の開発パートナーpiponのCEOであり、「づめさん」としてYouTubeでも活躍する北爪さん。開発時にみえてくる生成AIの課題やpiponの医療従事者向け生成AIサービスについてお聞きしました。


ミッションは「テクノロジーで世の中を効率化する」こと。高齢化社会を救う!

――piponについて教えてください。どのようなビジネスを展開されていますか?

2019年に創業して、その時はいわゆるビッグデータの黎明期だったのでデータ分析を中心にしていました。タブローやクリックセンスといったBIツールを使ってダッシュボート開発をしていました。チャットGPTが出てくる前だったので、古典的な機械学習のアルゴリズムを使ってデータの可視化などです。
今では生成AIにシフトして受託開発がメインです。 

――現在、生成AIを用いてどんなソリューションを展開されていますか?

まず、社内の問い合わせを対応するTeamsチャットボットを開発しました。RAG(※1)を活用して社内文書検索ができるものです。
生成AIを使えば、今までの「決まったことしか答えられないボット」ではなく、ユーザーの意図を汲んだ回答を出すボットが作れます。

最近では物流の2024年問題がありますよね。ドライバーの残業が制限されて人手が不足するというものです。
この問題に対応したい物流会社さんから「ドライバーさんの報告書をAIでつくれないか」と相談がありました。
ドライバーさんがAIとやりとりしながら報告書をつくるようなイメージを考えています。

――生成AIで業務の効率化だけでなく標準化もできますね。

そうですね。いま一番力を入れているのは病院向けのサービスで、カルテを自動作成する「ボイスチャート」というサービスです。
医師と患者さんの会話を録音し、診察後に「完了」ボタンを押すとカルテができあがります。

――キーボードを打てない(打ちたくない)医師もいると聞くので、需要が高そうです。

医師もそうですが、大きい病院になると「医療クラーク」と呼ばれる医療の補助業務を行う方がいます。彼らの業務を「ボイスチャート」で請け負うことで効率化につなげられます。

たとえば1日に40人の患者さんを診ていたとして、カルテ作成に3~5分の時間を割いていたとします。「ボイスチャート」を使ってもらえたら120~200分の時間を削減できて医療関係者の残業を減らすことができます。

――会社のミッションとして、生成AIを使った効率化にフォーカスしていきたい、と。

元々piponを起ち上げたのは、新卒で入った広告代理店のテレビ運用業務で非効率な業務に押し潰されたのがきっかけです。自分が4営業日使ってきた作業をAIはたったの0.1秒で終えた。そんなテクノロジーによる効率化に大きな衝撃を受けました。

これって、今後の高齢化社会へのインパクトにもなると思うんです。「テクノロジーで世の中を効率化する」を実現するため日々事業を進めています。

生成AIソリューションの2つの課題

①オンプレミス型への対応

――生成AIを使ってサービスを開発するうえで課題になっていることを教えてください。

「ボイスチャート」を医療従事者向けに展開しようとしたときに、大きな病院だと施設内でインターネットが使えないことがあります。なので、オンプレミス(※2)型のサービスも検討中です。
その場合、小さなLLM(※3)をつくって対応していこうかと考えていますが、現状では個人でやられているようなクリニックから始めていく予定です。

――オンプレミス型を要望される企業は一定数いますよね。

クラウド環境が主流になりつつあるものの、病院などはまだ難しい面がありそうです。

②システムのように完璧に「A→B」にならないことがある

――ほかに生成AIに特徴的な課題はありますか?

去年の話になりますが、ある自治体でゴミ収集についての問い合わせの窓口を生成AIで担当させたいという案件があったそうです。
チャットGPTを使って実証実験が行われたところ、チャットGPTの正答率は94%という結果だったそうです。
この数字に対して自治体側は本格導入を見送りました。

――「94%」をどう考えるか? ですね。

私からすると94%の業務が生成AIによって効率化できる、それって人件費の削減という点ではインパクトが大きいと思います。

つまり生成AIについて、数%の不確実性があると考えるのか、大部分が効率化されると考えるのか。

ここが生成AIの抱えるもう一つの課題だと思っています。

生成AIは柔軟性がある分、システムのように「Aをやったら必ずBが起こる」っていうものではない。だからある程度の「許容」といいますか、100%を求められるのは苦手です。 ハルシネーションという言葉もよく耳にされていると思います。

そういった点で、piponのチャットボットサービスではRAGを用いていますし、その方がファインチューニングするよりも開発工数が安くて挙動も安定します。

piponのチャットボットの作り方を全て公開(Kindle版

生成AIの魅力とYouTuberになった理由

――生成AIの魅力とは?

人間と同じことができるというのがすごく魅力だと思います。
人間の代わりになれるから、自分が働かなくてもAIが働いてくれる。
ある程度自動化ができる、と言いましょうか。

たとえば、現状では「ボイスチャート」でカルテを作成できますが、今後は

・紹介状を書けるようになる
・会話から病名を診断できる
・Web問診ができる

など、これらが可能になって、診断の責任の所在を問うような未来は近いと思っています。 

――そうしたAIの魅力をYouTubeで伝えていきたいですか?

生成AIやデータサイエンスに関する解説動画はもちろんですが、生成AIを使うとクラウドソーシングの記事をつくれる、SNSの、Instagramの企画や投稿ができる……そういった便利さとこれからの「稼ぐチャンス」を伝えていけたらと思っています。

興味を持った方々にはどんどん生成AIについて教えていきたいですし、今後、生成AIの教育ビジネスも視野に入れています。

――づめさんの動画、とてもわかりやすくて親しみやすいです。ところで、なぜ「づめさん」に?

インパクト残そうかなと(笑)。

キャラクター化しないとなかなか見てもらえないよと友人からのアドバイスがあったんです。

生成AIを使ってビジネスを考えるときのアドバイス

――空前の大ブームの生成AIですが、これからビジネスを始めたい方へのアドバイスをお願いします。

月並みな答えですけど、やっぱり作るしかない。
だからまず「作ってみる」ことをお勧めします。
作ってみると、いろんな挙動を示したりとか、うまくいかないパターンがあるとかがわかってきます。
試しながら作ってみないとわからないこともたくさんあります。

今は開発のハードルもかなり下がってるので、ひたすらAIに聞いていけば未経験者でも1人で作れたりします。
ハードル高いと思われるかもしれないですけど、できないことはないと思うので「こういうものを作りたい」とAIに聞いて、AIと一緒に作ってみるのがいいのかなと思います。

北爪さん、ありがとうございました!


※1: RAG(Retrieval-Augmented Generation)…大規模な言語モデルの出力を最適化するプロセス。トレーニングのデータソース以外の外部のデータ源を参照してハルシネーションを防ぐ方法

※2: オンプレミス(on-premises)…サーバやソフトウェアなどを自社で保有・設置・運用する形態

※3: LLM(Large Language Models、LLM)…膨大なテキストデータとディープラーニング技術を用いて高度な言語理解を実現するコンピュータ言語モデル

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