RPAでDX推進を成功させるために知っておきたいこと
共同研究パートナーであるパワーソリューションズで実施されている社内大学(ネクスト大学)で、RPA入門講座を受けました。
RPAはDX推進に大きく役立つ一方で、必ず知っておきたいRPAならではの注意点もありました!
日常的なExcel作業をRPAで自動化→DX推進
RPAとはRobotic Process Automationの略で、
PC上で行われる日常的な繰り返し作業を自動化すること。
Mac ユーザではおなじみの、作業プロセスを自動化するショートカット機能に該当するものです。
ヒトの作業を自動化できるRPAはDX推進のためのソリューションとして、多くの企業で活用されています。
特によくみられる事例が
業務帳票の転記に関する業務の自動化
(Excelで作られた帳票間の転記の自動化。売掛金や在庫関連の帳票から他データへの落とし込み転記など)
です。
具体的な例としては、
「全国各地の気温を店舗別売上データと日別で比較する」ために
「気象庁HPからデータをダウンロード→所定の売上データ(Excel)に書き込む」
というタスクを、「ヒト」ではなくRPA(ロボット/デジタルレイバー)で代替します。
単純な、大量かつ繰り返しの転記作業などに加えて、作業結果をメールやチャットなどOAツールに転送する業務や、転記・統合したエクセルデータに分析の1ステップを加えてBI的なレポーティングを行うといった
結果報告や定型的な分析の省力化なども事例として挙げられます。
上記、2つの例にみられるようにRPAには、Excelを活用した業務との関連性・親和性が極めて強いようです。おそらく多くの職場環境において、
●業務ツールとしてExcelを使っていること(レポート作成、マクロを使った分析等)
●帳票がExcelベースでできていること
が理由として考えられます。
最近では不動産業界での利用も進んでいるようです。
町中にある不動産屋だけでなく、そこにデータを提供する不動産情報業界でも
「新しい物件情報を取得~成約~物件データの更新」
という一連業務は、定期的なルーティンです。
これらをRPAによって自動化させることで
大きな人的リソースの省力化とデジタルレイバーを使った増力化効果
が発揮される余地があります。
RPAのメリット:デジタルレイバーによる増力化
ヒトの作業をRPA(ロボット)によって自動化するため
●業務時間を減らせる
*人手不足解消
*業務効率化/生産性向上
*人件費削減
●ミスを防げる
●24時間365日の稼働が可能
これらがユーザ側のRPA導入の大きなメリットです。
開発面のメリットとしてはなんといっても開発工数を減らせること。
システムのスクラッチ開発にはない
●スピード感
●コストカット
●現場レベルでのカスタマイズがしやすい点
RPAは高度なプログラミング技術がなくても扱えるため、内製化しやすい面があります。これはメリットでもありデメリット(後述)ともなりえます。
注意しておくべきこと:RPA独特の弱み
RPAはDX推進のための強力な助っ人ですが、以下の点に注意する必要があります。
①専用端末の用意が必要
RPAを動かすためには、専用の端末が必要です。
RPAの導入は社員を増やすようなものともいわれます。
企業で社員全員に1台のPCが付与されるように、ロボット専用のマシンにもそれぞれPC(実行環境)が必要になります。
個人のPC上で動作させることも可能ですが、高いパフォーマンスを得るためには別にPCを用意することが好ましいとされています。
②マルチスレッドで同時実行できない
複数のタスクを1つのCPUで同時に実行できないため、1つのジョブが終わってから次のジョブが始まるようにスケジュールを組む必要があります。
実際に、万が一、3つのジョブがほぼ同時刻に設定された場合、
1つ目が走り出した直後に
2つ目がスタートするけれども1つ目が終わるのを待機し
3つ目は始まらない
ということになるそうです。
そのため、複数のRPAを扱う場合は特にスケジュールがかみ合わないように交通整理が必須です。
③意外に融通がきかない
RPAは日常のルーティン業務の自動化を対象とするため、
社員が日常的にアクセスするファイル(売上や在庫データなど)を使うケースが多くあります。
RPAでは人間のように、気を利かせるということができません。
RPAのプログラム上で
ファイルを開いてコピペ処理を実行するという手順だとすると、
「社員がファイルを開きっぱなし」
ということには対応できない(実行できない)という事象が発生することが起こります。
そのため、RPAについて、必要となる情報リソースの使い方も含め社内周知は欠かせません。
④変化に弱い
前述のような人間なら「ファイルを閉じて」と声をかければ済むことがデジタルレイバーであるRPAは苦手です。これはRPAが決まったルーティンプロセスを対象とすることに起因します。
業務の中でも、頻繁に仕様変更が起きるような業務プロセスへの適用には向いていません。
仕様変更のたびにRPAを再設定する必要があると
逆に修正工数が必要になり、生産性低下・業務非効率になってしまいます。
同様に処理対象となっているファイル等のID/パスワードなどの変更も留意しなければいけません。
たとえばファイル側でパスワードが更新された場合はRPA側でも更新する必要があり、多くのエラーは、この作業を忘れてしまうトラブルのようです。
⑤野良(神?)RPAによるブラックボックス化
RPAは通常のシステム開発と違って、高度なプログラミングの技術がなくても扱えるように設計されています。それゆえに現場レベルのスタッフでも、ある程度のITリテラシーがあれば、操作しやすいのが特徴です。
これはメリットにもなりうるのですが、
担当者が異動や退職になった場合に
後任者がRPAを扱えない、または理解できない
というリスクがあり、業務がブラックボックス化する可能性があります。
Excel業務で問題視されている「野良エクセル」と同様に、「野良RPA」には気をつけなければいけないということです。
⑥作者不明問題
「野良RPA」を防ぐためには、設計書、つまりプログラムの可視化が必要です。
しかし実際には、手軽にいじれるRPAだからこそ設計書の作成がないがしろになるようなケースも多々あるようです。
RPA導入がうまくいかない最大の理由は、ここにあるともされています。
簡単な処理であればRPAの画面上のコマンドを追っていけば
皆が「ほぼ」理解できることも少なくないことや、
クライアント側から提出された「ここを改善してほしい」という業務フローに少し追記する程度で「設計書」とすることもしばしばあるそうです。
ある意味、究極のアジャイル開発なのですが、どこを、どういう理由で変更したのかも含めて、設計記録を残しておかないと、作者不明で、最初から一から作ることになってしまいます。
アジャイル開発としてのRPAにおける「設計書」の概念は、通常の設計書とは異なるため、どのような形がベストとなるのか、議論の余地があるとのことでした。
以上、RPAを導入する際の参考になれば幸いです!