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ある日の散歩
「まじかよ、この雨で練習あんのかよクソ。」
小生意気な弟が、ぶつくさ部活の文句を言っている。
たしかにものすごい雨だ、まだ弟は部活をやってるだけマシだが、
僕は部活もなけりゃ、今日はバイトもない、友達と遊ぶ予定もない、
そんな暇な日は僕みたいなニートにとって地獄と化す。
あ、そういえば昨日見た映画で主人公が楽しそうに雨の中を散歩していたのを思い出した。じゃあ俺も散歩しよ、こんなノリでYoutubeにくぎ付けなアホな弟を差し置いて、家を出た。
歩いて数分後、ものすごく不思議な外観のカフェを見つけた。
地元なのに、まだまだ知らない店ばっかだな、毎回ホントに驚かされる。
「カランコロン」
あれ?誰もおらんな。
「いらっしゃいませ~~テイクアウトですか?」
いや、そんなとこにいるんかい!!
というとこから店員さんが出てきた。
まあ、それはさておき内観を楽しみたかったので、奥の座席に座らせていただくことにした。
「いらっしゃいませ~~、テイクアウトですか?」
奥のテーブル席にも店員さんがいた、てか俺をそんなに帰らせたいのか?
と笑いそうになってしまったが、こういうご時世だから仕方ないだろう。
アイスカフェラテをズズっとすすりながら、店内にある人形や雑貨、アートを眺めていると、あることに気づいた。
そう、全部可愛いのである。本当に素敵な作品が多いぞ。
うん、これはちょっと話しかけずにはいられない。
と思い、話を聞くとすべて手作りで雑貨や人形、陶芸作品を作ったり、イラストまで幅広くやられていて、定期的に個展も開かれているオーナーさんだった。
オーナーさんによると、布を見ると人形のアイデアが勝手に湧き出てくると言っていた。
なんだそれ、俺なんか布見ても何とも思わないぞ。すげえな。
ホントに世の中には面白い人がたくさんいるもんだ。
と簡潔にまとめさせていただく。
お客さんが次々に入ってきたので、あまり長話するわけにもいかなかったのだが、
「近くにアトリエがあるから、君を連れて行くよ。」
と言われ、営業中にも関わらず、わざわざ連れて行ってくれた。
「きみ、名前はなんて言うの?」
「Genです!」
「そうか、覚えとくよ。またおいで。」
最後に自己紹介をして別れるという、ちょっと粋なことをしてから、
僕はアトリエへ入った。
「いらっしゃいませ~~」
よかった、さっきより歓迎されてる気がする。
まあ、手作りで財布とか洋服をその場で作ってるっぽいから、
そりゃテイクアウトですか?みたいなこと言ってくるはずはないんだけど。
って、少々余計なことを書きすぎたかな。あはは。面白くないか。
え?!その場で手作りで財布と洋服を作ってる?
なんやこれ、こんなとこあったのかよ、まじか。
まるで、何回か来たことがあるかのように振舞ったが、
さすがに無理があったみたいで、
「最近、引っ越してこられたんですか?」
とまで、言われてしまった。
いやクソ地元やねんな!!舐めんなボケナス!
とは言えるわけはなく、話始めた。
二階建てのアトリエで、まず一階で財布を作られてる方とお話をした。
店員さん「この場所はほんとになぜか分からないんだけど、イラストを描いたり、写真を撮られたりする方が多いわよね。さては、君も作家さん?」
「はい、そうです。イラストも描けるし、文章も書ける、写真もやらせたら右に出る者はいない、とにかくマルチに活躍させてもらってますね、はい。」
「そういうことは自分で言うと価値が下がるわよ。まあ、勢いがあって良いわね。」
なんだか、しょっぱなから飛ばしすぎてしまったみたいだ。まあいい。
この方は美大出身でガラス作品に関する事全般を学んでいたらしい。友人の多くはもちろんイラストを描かれていて、友人の名刺をたくさんくれた。
ありがてえ。全員に会いに行くしかねえこれは。
就活の悩みも話すと、いろいろアドバイスをくれた。
「バイトだけだと、資金も足りないし。かといってお金のためだけに仕事に就くと良いことなんて何一つ無いからねえ。芸術活動につながる職が良いんじゃないかしら。」
初めて会った俺にこんな親身になってくれるなんて、本当に感激しました。
さて、ブログを始めて書いたかのような安っぽい感想は無視して、
僕はそそくさと2階に上がった。
二階には、はちみつと洋服が売られていて、最初に出た言葉は、
「ん?どういうことですか?」
店員さんからしたら、いやお前うざいな?って感じだろうけど
外国人に日本語を教えているような、ものすごく優しいトーンではちみつがある理由を僕に教えてくれた。
どうやら、伊豆出身で養蜂場をやられていたらしい。大学で服飾を学んでいたため、洋服も生地の状態から作れるし、いまは独立して、はちみつもそのまま販売しているとのこと。なあるほど、おもしれえええじゃん。
自由な生き方マジでしてえけど、この方たちみたいにやりたいことで忙しくなるには、どのくらい時間がかかるのかは分からない。ただ、自分もなれるとは思うし、なんだかものすごくモチベーションが上がった。
この方ともしばらくお話をさせていただき、最後にアドバイスをいただいた。
「こんな面白いタッチでイラストが描けて、この街で動き回ってる限り君はなんとかなると思うよ(笑) アーティストが不思議と応援される街なんだ。話した感じ、君なら就活に囚われなくても勝手に売れてくと私は思うけどね。まあ君が決めることだよ。」
いやあ、ほんとに優しいなあ、なんなんだろう。
俺は将来、こんな余裕がある大人になれるのだろうか、
地元の余裕のある先輩方と話すと、ただただ畏敬の念を覚えるほかない。
お店を出る前に、次の展示会の日程と、僕がやるべき新しい作品へのヒントまで教えていただいた。
感謝しかない。なんて俺は恵まれているんだろうか、、。
よくよく考えたら、先週もイラストレーターの方に10人くらい出会ったな。
畑で出会った方も僕に紹介してくれたし、友達の母親もイラストレーターだったことを最近知った。バイト先には3人いることが発覚して話が盛り上がった。
毎日を愉快に楽しんでいると不思議と出会いが広がるもんなのかな?
まあ、これは科学では証明できそうにはないな。
うん、俺がラッキーすぎるのかもしれない。
さてそろそろ帰ろう。
「また来ます!」と、ありきたりな別れ挨拶をして店を出た。
最高な気分で店を出ると、雨はやんでいて綺麗に晴れていた。
「ただいま~~~」
家に帰ると、弟が口をパッカーンと開けて寝ていた。
なんだか、もごもご寝言を言っている。
「サイコー」と。
Gen
これでまた珈琲豆が買えます。ありがとうございます。