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詩『返報性』
少女の指先から狂いが滴り落ち、
背中が犬のようにせがむ。
助けて、と言われて、
僕は黙るしかなかった。
踏み潰された善意は凄惨に砕け、
首を振ってすがる手を振り解く。
救済に滑稽なほど裏切れてきた。
少女の垂れ流す血を養分にする、
豚のようだった。
ワレとナンジ、ワレとナンジ、ワレとナンジ。
細い声で唱える公理は虚しい。
脳髄に充満した言葉のせいで眼球が疼く。
差し出した手のひらに与えられた絶望。
灰になった殉教者は何を叫んだのか。
親子、夫婦、恋人、友人、同僚。
空疎なパッケージを求めて並ぶ人々。
僕は代償に課せられた孤独を握りしめる。
もはやこの両手は無用だった。
誘蛾灯に群がる蟲たちにしろ。
中心を探って周り続ける者たちにしろ。
天に放った矢は戻らなかった。
それが現実というものだ。
ここにあるのは永遠とひび割れた大地。
返報性に希望を抱く奴隷たちの世界。
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