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詩『ウロボロス』

殴打されてできた青痣。
皮膚の表面に浮き上がる赤い線。
テーブルに溢れた錠剤。
レイプされたとつぶやく少女。
タイムラインに流れる言葉と写真。

苦しみも悲しみも無い。
あるのは闇に浮かぶディスプレイの光と静寂。
数百キロ離れたアパートの一室では、
タバコの火を押し当てられた幼な子が、
断末魔に近い悲鳴をあげる。
でも、ここに届くのは1と0の数字の羅列。

悲しみや痛みを伝達するための発明が必要
だった。
タイムラインに悲痛な言葉が流れるたび、
俺は読経のようにつぶやいて、腕にその言葉を
刻み込む。
腕が真っ赤な肉の塊に変われば、膝、腹、胸 
へ領域を広げていった。
やがて刻む場所が無くなれば、ピーラーで
肉を削いでタイムラインに流した。

俺は俺の身体を切り刻む。
つまらぬ自我や自尊を解体する。
切り刻んだ断片を記号に変換する。
実存を抹消して、消費されよう。
俺もまた読まれる存在になろう。

その傷口から流れ出す血を舐めさせておくれ。
俺の傷口から流れ出す血を舐めておくれ。
今夜もタイムラインの一部となって。
今夜もウロボロスの蛇となって。

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