詩『失言』
アナウンサーの男が、おぉはぁ、よぉう、ござぃ、まぁすと言葉を噛みちぎる凄惨な映像。間も無く麻袋を手にした目抜き帽の男たちがお別れの挨拶もさせず連れ去っていった。失言とはさもありなんと言ったのは誰だったか。彼には彼の言い分があったのではないかと思う。
向かいに座った三白眼の女は胡乱な表情で脳髄のソテーにケチャップをかけていた。鉄錆びた臭いが鼻をついて、腋の下から奇妙な液体がつーっと流れ落ちる。イラつきと言うべきか、魔が差したというべきか、この三白眼死ね、と紙に書いてファックスで送るのが精一杯の供養だった。そう、あと数日すれば私が死んで四十九日を迎える。
リストの最終行に自分の名前が追加されたのは知っていた。到着した検閲官に向かって私は自ら喉笛を突き出しておねだりをする。問題はない。脳髄の残りは私が食べるから。失言とはまさしくさもありなんだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?