見出し画像

詩『ホムンクルス』

私という器にあなたの虫を注ぎ込む。白濁液に蠢く無数の虫をスポイトで吸い上げては、挿入口へ流し入れる。それを数ヶ月繰り返す。やがて錬金術は成功の兆しを示す。私という器は内側から膨張を始める。

腐った果実のように、肉の塊がぼとりと落ちる。肉の塊は不気味なほどあなたに似ていた。それは、捩れ、喚き、排泄し、時に熱を出して痙攣する。私たちはそれを実存と名付けた。この世界に産み落とされた剥き出しの生として。

実存は私たちをパパ、ママと呼んだ。私たちはそれを正さず呼ばれるがままにしていた。不純な物を口にしないよう食事には気を遣った。運動もさせた。その甲斐があり、実存は大病も患わず健康体として育った。

誕生から換算で12年と一日に、私たちは実存を浴室で処理した。手筈の通りに。あなたから渡された心臓はまだ温かかった。実存は肉の塊へ回帰し、私たちは非物語への回帰を試されていた。しかし、賽は投げられた。もう後戻りはできない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?