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詩『音楽機械』

音階をステップして駆け上がると毛穴から流れ出す汗ではない《何か》。脳髄で発火する神経細胞はチッチッと鮮やかにビートを刻み、世界は白から灰色へとグラデーションする。口から漏れるあーあーと喃語、柔らかい唇をなぞる俯きがちな二頭身の少女がそっとつぶやく。消えたい、消したい、消えない。セッションをさかしまに再生すれば聴こえてくるはずの革命とどす黒い太陽が照り返し、もはや折れた針とともに無音の永劫回帰となる。狂ったような静寂。私は、私は、私は、の自己言及の大合唱が幕を引き、後腐れなく吹き出す不協和音が背後から迫って隠し持った鍵盤を叩く。滴り落ちた憂鬱、もはやメトロノームの原型は無い。ステージの上で、私は引き攣り、もつれ、叫ぶ。

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