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詩『必然』

あなたが別の誰かであった時、振り返ると、ありがとうと言って立っていたのはあなただった。あなたは誰ですかと問うと、私は誰でも無い、何処にでもいる私ですとあなたは答えた。でも、あなたはあなたであってそれは揺るぎの無いことで、私もあなたも、現にここに存在している。あなたはきっと忘れているかもしれないけど、私たちが出会う前に真っ赤に染まった壁紙を貼り替えない方が良いと言ったのはあなただった。言い訳をするなら、この右手にある包丁であなたの軀の何処でもいいから刺したなら、あなたがあなたであるって感触を、あなたの存在が偶然ではなく必然だという実感を、私はきっと理解できると思っていた。だから今、肉の塊になってもあなたが確かにここにいると信じている。あと、壁紙はあなたが望む通り真っ赤にしておきました。

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