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詩『予定調和』

あの人が死んだ。
昨日近所の人から聞いた。
あの人が誰だか詳しくは知らない。
でも、きっとあの人だろう。

あの人も、その別のあの人も死んだ。
時の経過とともに数えが増える。
死んでも死んでもあの人は死んでいく。
あの人の死に終わりは無いのだろうか。

あの人が通りの向こうからこちらを見ていた。
仲の良かったあの人。
私は戯れに喉に手を当て、首吊る仕草をした。
その数ヶ月後、あの人は死んだ。

鏡の中に拭えぬ死相が顕れる。
それから何か月経っただろうか。
生まれた時から死相はあった気がする。
あと何日、あと何日と指折り数える。

その瞬間は一向に訪れなかった。
あと何日したらあの人は死ぬだろうか。
それは自明だった。
あの人はもう死んでいる。

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