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詩のようなもの

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小説の合間に。
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#文学

詩『秋刀魚』

スーパーで二尾350円の秋刀魚を買う。 帰宅して塩をまぶし、しばらく置いてから 胴に切り込み…

詩『鬼隠れ』

もういいかい? まあだだよ。 望遠鏡を覗き込んで探した。 月の裏側に書かれた答えを。 そん…

詩『箱』

死にたい、ではない。 消えていなくなりたい、ではない。 受け皿無く情動が零れ落ちていく。 …

詩『類語練習帳』

努力を重ねる。 ピアスの穴を数える。 勉強をする。 タイルの表面に血だまりを作る。 仕事を…

詩『それ』

「それ」は夜明けに生まれる。 生まれて早々に絶叫する。 地面を這い回り、私の後を追ってく…

詩『返報性』

少女の指先から狂いが滴り落ち、 背中が犬のようにせがむ。 助けて、と言われて、 僕は黙るし…

詩『予定調和』

あの人が死んだ。 昨日近所の人から聞いた。 あの人が誰だか詳しくは知らない。 でも、きっとあの人だろう。 あの人も、その別のあの人も死んだ。 時の経過とともに数えが増える。 死んでも死んでもあの人は死んでいく。 あの人の死に終わりは無いのだろうか。 あの人が通りの向こうからこちらを見ていた。 仲の良かったあの人。 私は戯れに喉に手を当て、首吊る仕草をした。 その数ヶ月後、あの人は死んだ。 鏡の中に拭えぬ死相が顕れる。 それから何か月経っただろうか。 生まれた時から死相は

詩『ジッパー』

着ぐるみになった夢を見た。着ぐるみに入った夢ではない。着ぐるみそのものになった夢だった。…

詩『音楽機械』

音階をステップして駆け上がると毛穴から流れ出す汗ではない《何か》。脳髄で発火する神経細胞…

詩『必然』

あなたが別の誰かであった時、振り返ると、ありがとうと言って立っていたのはあなただった。あ…

詩『サクリファイス』

あなたが冷蔵庫に入ってる。 見開いた眼差し。 腫れぼったい唇。 憎ったらしい鼻。 毎日見ると…

詩『7つの鉢』

3月27日。映し出された足の薬指と小指は奇妙に短い。幼い頃に歳の離れた兄に潰された痕跡だと…

詩『原理主義』

白色のビニール袋がふわりと浮かんで線路に落ちる。そう、大人は穢れや堕落、欺瞞の象徴である…

詩『日常』

日常からの逃走。少女はそう言って飛んだ。もっともらしいことを言った大人は全員有罪だった。生きているだけで疲弊する。ため息をつくたびに涙が溢れる。涙腺がバグる。 訳知り顔で近づく自称友達。陣取り合戦で〈私〉が奪われていく。おまえらと一緒にするな。日常の外側にある日常。無限の入れ子構造。何処まで行っても日常。 好きだと言った彼の顔は干物みたいでのっぺりして寂しい。餞別に言葉の詰め合わせを送るがお返しはバイバイ。前に座るやつの顔がアジの開きなら隣に座るやつの顔は日常。日常が連な