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詩『鬼隠れ』

もういいかい?
まあだだよ。

望遠鏡を覗き込んで探した。
月の裏側に書かれた答えを。
そんなものは必要無いから。
月に背中を預けたあなたは、
私の知りたいことを教えてくれた。

もういいかい?
まあだだよ。

手のひらを交互に積み重ねる。
先に抜いたら殺すから。
あなたは笑って手を抜く。
殺す、殺す、殺す。
殺意のない呟きを大きな掌が包み込む。

もういいかい?
まあだだよ。

≪永遠≫の質量を測りたくて。
約束の言葉を唱える。
浮かび上がる身体。
見上げるとあなたがいた。
遥かに高いところで手を振る顔は無邪気だった。

もういいかい?
まあだだよ。

あなたと私の血が混じり合って。
凝固していきやがて人になる。
私とあなたは家族みたいな家族になって。
子供みたいな子供を作って。
枝分かれした先の、その先の、その先で。

もういいかい?
まあだだよ。

俺が先に隠れるから。
見渡せばだだっ広い広場だった。
何処にも隠れるところはないわ。
あるさ一つだけ。
あなたは自分の心臓を指さす。

もういいかい?
まあだだよ。

道に小石を並べてきた。
ポケットに手を入れたあなたは困惑する。
石が残り少ないんだ。
そう言ってあなたは悲しそうな顔をした。
二人何も話さず歩いた。

もういいかい?
まあだだよ。 

探さなくていいから。
そう言ってあなたは隠れた。
10年、20年かけてあなたを探した。
ある日、鏡を見て気づく。
私も鬼になっていた。

もういいよ。

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