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短編小説

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#純文学

短編小説『広島 騎乗位』(2/2)

私たちはジュースを手に持ち、ロータリーのベンチに並んで座った。 「あなたはいまいくつで…

短編小説『広島 騎乗位』(1/2)

 発展場という言葉がある。  ある種の人々にとってそれは集合場所を示す隠語であり、秘密の…

短編小説『未来は続く』(5/5)

(五) 「おかえり」 戻ってくると、彩子と奈帆がランの小屋の前でしゃがみこんで小屋の中を…

短編小説『未来は続く』(4/5)

(四) 途中立ち寄ったコープで、女たちがずいぶん時間をかけて買い物をしたため、家に着いた…

短編小説『未来は続く』(3/5)

(三) 「美味そうだな」 喜一郎は大皿に並んだ巻きずしの一つを摘まむと、小皿の醤油にべっ…

短編小説『未来は続く』(2/5)

(ニ) 車庫に車を止めるや否や、待ち構えていたように、益美が玄関から飛び出してきた。 駅…

短編小説『未来は続く』(1/5)

「青春というものを知らなかった私が、幕切れも間近にせまった今になって、かつてないほど若い自分を感じているのだ。そうなのだ、だからこそ未来は長く続くのである 」               ルイ・アルチュセール『未来は長く続く』 (一) 横山喜一郎は、駅舎から少し離れたところに車を止めて出口を見つめていた。 次の列車が到着するまで10分ほどあった。 ラジオからは高校野球の試合中継が流れている。 実況のアナウンサーがやや上ずった声で白球が二遊間を抜けたと伝えた。 駐車場を取

短編小説『その前日』

(一) 退去通知書 ◯◯◯市 あなたは再三の催促にも関わらず、長期にわたり家賃を滞納し、…