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中編小説『二人』

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2023年1月の記事一覧

中編小説『二人』(4-1)

中編小説『二人』(4-1)

 激しい抗議を覚悟していた。顔を張られても仕方がない、と思っていた。あるいは私の存在を消して、例の固い沈黙の内側に籠る、と思っていた。そうはならなかった。話しかければ、薄いながらも応える。ものを出せば残さず食べる。事実を消化していない。嚥下さえしていない、と思う。弁明の機会は与えられず、膠着したまま償いの言葉は宙に浮かぶ。
 ノゾミは、夜、啜り泣くようになった。私の疲弊した体は眠りを欲しているが、

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